一応、な?

「――めでたしめでたし。終わりだ」


 俺は適当に物語を簡単に弄って、かぐや姫を聞かせてみた。

 最初はパッと思い浮かんだ桃太郎とか聞かせようと思ったんだけど、あれ、鬼出てくるだろ。鬼ってこの世界にもいるんだよ。よくあるファンタジー定番のオーガなんだけどさ。あいつらって人とか食べるからさ、一応、な?

 

「すごい! 面白かった!」


 そして、目を輝かせて俺の話を聞いていたマテスはそう言ってくれた。まぁ、そりゃ俺の考えた話じゃねぇし、面白いだろうなって感じだけど、こんな感じで子供を楽しませるのは面白いな。

 

「そりゃ良かった」

「もっと! もっと何か面白いお話、無いの?」

「あるにはあるけど、もう帰る時間なんじゃないか?」


 話をねだってくるマテスを横目に、俺は窓を見ながら、そう言った。

 一昨日、ラナー伯爵がマテスを連れて帰ったのが、このくらいの暗さの時間だったから。

 

「えぇー、まだ大丈夫だよー」


 そして、マテスがそんなことを言った瞬間、俺の部屋がノックされた。

 

「リオン様、入ってもよろしいでしょうか?」

「あぁ」


 知らない女の人の声だ。多分、ラナー伯爵の家のメイドだろ。

 そう思っていると、案の定、知らないメイド、ラナー伯爵の家のメイドが入ってきた。

 

「失礼します。マテス様、ラナー伯爵様がそろそろお帰りになると」

「えー、やーだー。まだりおんくんのお話聞きたいー」


 ……これは、貴族の娘としてどうなんだ? いや、三歳児だし、今から直してけば、別にいいのか。

 

「また話してやるから、今日は大人しく帰ろうな?」

「……ほんとに?」

「ああ」

「……分かった。……じゃあ、今日は帰る」


 俺がそう言うと、マテスは渋々そう言って、メイドの方へ向かっていった。

 そして俺も、それに着いて行った。もちろん、見送りの為だ。

 




「またね、りおんくん」

「あぁ、また。……ラナー伯爵様もお気をつけて」


 俺はマテスに軽く手を振って、父さんと話が終わって、マテスの方に寄って行ったラナー伯爵にそう言った。

 

「見送りありがとう。またくるよ、エルド。リオンくんもね」


 ラナー伯爵にそう言われた俺は、黙って頭を下げた。

 こういう時、なんて返したらいいのか分からんし、頭下げとけばなんとかなるだろ理論で。

 すると、実際なんとかなったみたいで、そのままメイドや騎士を引き連れて、馬車で帰っていった


 さて、俺は明日こそ、父さんにボコボコにされないように、作戦でも考えようかな。

 もちろん、魔力操作の練度を上げながらな。

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