主人公は才能の塊

「ふぅ」


 お風呂に入って、アイナに紅茶を入れてもらって、自分の部屋で一息ついた。


「アイナ、ラナー伯爵様っていつ来るか聞いてる?」


 お昼とは言われたけど、お昼のいつ頃来るかは知らされてないから、一応、俺はそう聞いた。

 メイドだったら、客人をもてなすために、そういうのを聞いてると思ったから。


「もうしばらくしたら、お着きになるかと」

「そう。助かるよ」


 俺がおお礼を言うと、アイナは黙って、頭を下げた。

 はぁ……今は、この一時を楽しむか。

 

 そう思って、俺は紅茶を飲みながら、水の玉や炎の玉、闇の玉を俺の周りにプカプカと浮かせた。

 魔力操作の練習のためだ。

 ちなみになんだが、主人公には火と水と闇の魔法の適正があった。……主人公なのに闇の魔法の適性があるのは、あれだ。なんか、作者の趣味らしい。普通、光とかだと思うんだけど、そこだけはクソゲーの中でも俺の好きなところの一つだ。……光より闇の方がかっこいいよね。

 もう一つちなんでおくと、魔法はなんか使おうと思ったら普通に使えた。魔法の種類は俺はゲーム知識で知ってるし、ちょうど良かった。

 魔力の練り方とかも、最低限ではあるが、何故か最初からできた。

 まぁ、ゲームの世界で、俺が主人公なんだからだと思う。

 設定でも、最初から魔法が使えた天才とか、才能の塊、とか書いてたしな。





 そして、俺がちょうど紅茶を飲み終わったところで、伯爵が来たみたいで、出迎えの声が聞こえてきた。

 俺は思わずため息をつきそうなのを我慢して、魔法を消しながら、立ち上がった。

 この前はお忍び……というか、俺をびっくりしたさせるために、父さんがこっそり連れてきてたみたいで、出迎えとかは出来なかったけど、今日はこっそりじゃないんだから、出迎えをしない訳にはいかない。……まぁ、ほんとはもっと前に待機しておくべきなんだけど、父さんが俺とした稽古を説明してくれるみたいで、後で来ても大丈夫だと言っていたから、俺はこんな悠長にしている。

 ……そう言われた時に俺が思ったのは、あの稽古を人に話すのか? という驚きだった。

 だって、普通に虐待だと思うもん。……日本にいた頃とは、世界観が違うのは分かってるけど、あれは酷いと思う。

 ……明日もやるんだよな。あれ。……せめて魔法が禁止じゃなければ、何かしらはできる思うのに!


「あ! りおんくん!」


 俺はそんなことを思いながら、玄関に向かうと、俺の事を呼びながら、マテスが近づいてきた。

 

「昨日ぶり、だね」


 俺は笑みを浮かべて、そう言った。

 ……ぎこちない笑みになってないよな? という不安はあるけど、父さんの顔をチラッと見るに、大丈夫っぽい。


「初めましてだね、リオンくん」

「はい、初めまして。この間は、ご挨拶も出来ずに、申し訳ありません」

「いやいや、大丈夫だよ。この前は、こっちがこっそり来たからね」


 ……まぁ、これでそうだよな。これでキレられてたら、俺だってキレてだと思う。……心の中でだけど。

 そう思いながら、俺は感謝するように、頭を下げた。

 

「それじゃあリオ、マテス嬢をよろしくね」


 そう言って、父さんは伯爵様を連れて、客間に向かっていった。

 マテス嬢、ねぇ。……俺と二人の時はちゃん付けだったくせに! いや、別にいいけど。むしろ当然だと思うし。


「りおんくん、行こ?」


 俺が色々考えていると、可愛らしく首を傾げながら、俺の手を引っ張てくる、マテスがいた。

 気のせいじゃなければ、マテス、俺の部屋に向かおうとしてるよな。……まぁ、アイナが傍付きで着いてきてくれてるし、別にいいか。……そもそも、三歳児だし。

 俺は軽い考えで、引っ張られるままに、部屋に向かった。

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