裏ボス様はレベル1の状態でもエンカウントする
「リオ、マテスちゃんとは仲良く出来そうかな?」
マテスが父親と一緒に帰って行く所を主人公の父親……エルド・パレスと一緒に見送ったあと、俺はそう聞かれた。
リオっていうのは主人公の……いや、俺の愛称だ。
「普通かな」
「そうなのかい? 随分、懐かれていたようだけど。今からでも、婚約でも結んどくかい?」
いや、この父親は三歳児に何を望んでるんだよ。
そんな感情、三歳児にあるわけないだろ。……俺は中身三歳児じゃないから分からないけど。
まぁ、とりあえず、無視でいいだろ。
「父さん」
「ん? なんだい」
「五歳になったら、護衛付きでいいから、森に行っちゃダメかな?」
この世界はゲームの世界だ。それにただのゲームじゃなくて、クソゲー。……正直、外に出るのはめちゃくちゃ怖い。
いや、護衛がいるのなら安全。そう思うかもしれない。でもな、何度も言うがここはクソゲー世界なんだよ。
エンカウントするんだよ。……俺の最推しである裏ボス様はどこでも、それこそ、チュートリアル中であっても、エンカウントするんだよ! 頭おかしいだろ!? チュートリアルだぞ、チュートリアル!
おかしいだろ? 裏ボスだぞ? 運が悪かったら、レベル1の状態でエンカウントして、ボコボコにされるってことだぞ? 意味がわからない。まぁ、確率はその分さすがに低かったんだけどさ。
ちなみに裏ボスに負けると、レベルが強制的に10ダウンする。……レベル10未満の時にエンカウントしたらどうなるのかだって? ははっ、そんなの、決まってるだろ。……ゲームオーバーだよ。……あのクソ長い無駄なチュートリアルをまたやらされるんだよ。
俺の生きてきた中で、一番無駄な時間だっただろうな。本当に。
そんなクソみたいな世界なんだけど、レベルを上げないことには始まらないんだ。……だって、推しがいる世界だぞ? めちゃくちゃ強くて、殺されるかもしれないとはいえ、推しだぞ? 会いたいに決まってるだろ。……いや、会うだけじゃなくて、話がしたい。……まぁ、それを叶えるには、俺が強くなるまで裏ボス様にエンカウントしないっていう幸運が必要になってくるんだけど、大丈夫だろ。……多分。
一応ここ現実世界だし、エンカウントしたとしても、いきなり戦闘にはならないと思うんだよ。猶予があるはずだ。だから、本当に残念だけど、もし裏ボス様を見かけるようなことがあったら、直ぐに逃げよう。わざわざ追ってきたりはしないはずだ。
「ダメだよ。森は危険だからね」
色々と考えていると、父さんは俺を諭すように、そう言ってきた。
まぁ、そりゃそうだよな。五歳で森なんて、普通に考えて、行かせるわけが無い。こんな魔物がいるような世界じゃ、尚更だ。
でも、俺は裏ボス様と仲良くなるために、強くなりたいんだ。……仲良くなれるか分からないけど、最低条件として、強さは必須だ。
ただ、なんて言えば許可をくれるかな。
……バカ正直に強くなりたいから、なんて言ったって許してくれるとは思えない。
「勉強、頑張るからさ」
俺は苦し紛れにそう言った。
いや、こういう交渉って苦手なんだよ。
それでも、魔物を倒して、レベルを上げないと、話にならないから、何とかして許可を貰うしかない。
ちなみにだがこっそりと抜け出して、なんて選択肢は無い。……だって、この世界はクソゲーだから。護衛がいないと俺は確実に死ぬ。
「……基本的に毎日、僕としている稽古を更に厳しくする。それで、僕が行ってもいいと判断したら、許すよ」
俺の思いが伝わったのか、父さんは仕方がないといった様子で、そう言ってくれた。
……可能性が出てきたのは嬉しい。……でもさ、あの稽古が今より厳しくなるって何?
俺は三歳児だ。中身はともかく、三歳児だ。そんな俺に、ただでさえきつかった稽古がもっと厳しくなる? ……流石はイカれたクソゲーの世界だ。……父親もイカれてた。
……まぁ、やってやるよ。裏ボス様と仲良くなる第一歩だと思えば、そんなの苦でもねぇよ。
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