第5話 ヤバい職場ヤバい同僚ヤバい任務
目が覚めたら車の中にいた。
「お、やっと起きた。おはよー」
隣で車を運転している柊さんが僕に手を振って来た。
「あ…あれ? 僕は…」
「昨日ベッドにダイブしてすぐに寝ちゃったから…。その後も全然起きてこないから、私が担いで連れてきたんだ」
「あ、ありがとうございます」
この世界の朝はとても色鮮やかだ。柊さんによると、この町は横浜と言うらしい。朝の横浜は広大な青い空に浮かぶ太陽の光を受け、それを反射してきらびやかに輝いていた。
「ところで、今はどこに向かっているんですか?」
「決まってるだろ? 私たちの会社だよ」
そう言うと柊さんは僕の方を向いて、
「今から会社について説明するから、よく聞いててね」
と言った。
「はっ、はい!」
「私たちの会社は、横浜を中心として、この日本という国を守る仕事をしているんだ。内容はすごく簡単な物もあれば、最悪命を落としかねない危険な仕事もある。だから、こっちとしてもある程度の『資質』が無いと社に入れられないんだ。だから、今日はまず社に入るためのテスト—入社試験を受けてもらう」
「入社試験、ですか…」
入社試験、何だか難しそうだ。僕は少し不安になったが、
「まあ、そこまで厳しい試験じゃないから大丈夫だよ」
と柊さんは優しく言ってくれた。
「あ、そうだもう一つ。さっきも言った通り、命に関わる危険な仕事をすることもあるから、ウチは基本的にバディ—二人一組での行動をしているんだ。だから、君にも一人相棒が付くことになる」
「それで、僕のバディっていうのは…?」
「それが…中々ね…」
「えっ、ちょっと何ですか!?」
僕は問いただそうとしたが、それより早く車は止まってしまった。
「さあ、着いたよ。ここが私たちの会社—『アマテラス』だ!」
僕の目の前にそびえ立つのは、ここに来るまで何度も見たビルだった。でも、やっぱり慣れることはない。
「さあさあ、どうぞ中へ」
柊さんが僕を会社の中へと手招きする。ビルの中に入るのは初めてなので少し緊張した。
中に入ると、そこには机を挟んで向こう側に女性が一人いた。
「社長! お帰りになられましたか。そちらの男は?」
「社員候補だ。通してやってくれ」
柊さんがそう言うと、僕は「どうぞ~」と言って中に迎え入れられた。
「さ、ここが私たちの会社だよー」
柊さんが一つのドアを開けると、その向こうには、薄い黒い板に向かって座る人たちが沢山いた。ざっと二、三十人くらいはいるだろうか。
「さあさあ、こっちこっち」
柊さんは沢山の机が置かれて迷路のようになっている部屋を、少しも迷わずに進んでいった。そして、ある一人の男の前で突然止まった。
「…どうしたんですか、社長」
その男の人は、若干茶色の混じった髪をしており、柊さんの隣に立つ僕を強く睨みつけてきた。その怖さに僕は少し萎縮してしまう。
「レイメイ君。彼が君のバディ(仮)の、
柊さんがそう言うと、黄昏君と呼ばれた男は突然激昂して立ち上がった。
「社長! 何回言えば分かるんすか! 俺にバディはいらないって—」
「まあまあ。バディ制は社の規則だし。君がそうなるのはよく分かるけど、そこを何とか!」
柊さんが男に頭を下げ、それで落ち着いたようで男は席に戻った。
「じゃあ、自己紹介してあげて」
「…俺は黄昏シュウ。よろしく」
黄昏さんは僕にぶっきらぼうに挨拶して、すぐにそっぽを向いてしまった。
「僕は東雲レイメイです! 今日からよろしくお願いします!」
初対面の人にはちゃんと相手に届く声量で挨拶しろ、と隊長から教わっていたので、僕は腹から声を出して自己紹介した。が、黄昏さんからの返事は無かった。
「……」
「ま、まあ彼は少し難しいところがあるから…。とにかく、入社試験頑張って!」
柊さんは僕を応援してくれたが、正直うまくいきそうな気がしない。
そしてまさか、入社試験があんな物だったとは…。僕はこの後思い知ることになる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
設定こぼれ話
アマテラス
レイメイが働くことになった会社。職員数は五十人程度。探偵業のような事も行っているが、その実態は…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます