第3話
母にリスカがバレたあの夜、母は私のことを冷たい目で見ていた。氷のような視線。氷を当てられた傷口はきゅうっと皮膚が縮こまり、どうにかして傷を隠そうとしていた。母は私の手に握られていたカッターを取り上げて言った。
「もっとストレス発散にも、やり方があるんじゃないかしら。」
私の、傷口はぽかんと口を開けてしまった。たらりとどす黒い血が流れる。
「私は貴方を心配しているの。こんなやり方じゃなくても、例えば紙に嫌なことを書き出してビリビリに破いて捨ててみたり。どう?こんなやり方よりもずっといいと思うのだけど。」
返せ、私の桃源郷を。
「学校の先生に、ご連絡しておくわ。」
私の居場所を、奪うな。
声にならない血の塊が、私の中で叫んでいた。部屋の電気を消して、母はドアを閉めて行ってしまった。
真っ暗な部屋に1人、ポツリと取り残されてしまった。もう、月明かりも、それに照らされる美しい宝石も暗くて見えなくなってしまった。
私の桃源郷は、母によって懲罰房になってしまった。私の宝石は、罪になってしまった。
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