第8話 小学生の姉と幼稚園の妹

 俺は研究所にいた頃に、なにかしろの属性があるとは聞かされたけれど、何の魔法かは知らない。

 正直に言うと、死に寄せ以外何も持っているようには思えない。


「適正魔法か?


コレーラマジョーレもそれでわかったのか?」


 コレーラマジョーレは、考え込みながら答えた。


「うちの場合は、そうなのですね・・・」


「そしたら、ソレーラミノーレもやってもらえば、わかるんじゃないか?


適正魔法」


 ソレーラミノーレとコレーラマジョーレは、なぜかお互いに顔を合わせた。


 俺、何かまずいことでも言ったかな?

 理由もわからず、ヒヤヒヤした。


「実は・・・」


 ソレーラミノーレが口を開いた。


「入園前に受けたのですよ。


属性診断。


だけど、何も出なかったのです」


 属性診断をして、適正魔法がわからないなんてことあるのか?

 その前に、俺は属性診断がどういったものか知らない。


「ということは、魔法は使えないってこと?


魔力がないのか?」


「そんなことはないと思うのですが・・・」


 コレーラマジョーレが話し始めた。


「まだ年齢的に、覚醒していないのかと思われるのですよ」


「覚醒って?」


「ソレーラミノーレは、まだ幼稚園児なのですよ。


この時期は早い子は覚醒しているのですが、

もしかしたら、

ソレーラミノーレはまだ才能を開花できてないのかもしれません」


「この学園にいるってことは、何かしらの魔法が持ってないとおかしいのか?」


「ここは、魔法学園ですからね。


うちのように小学生は魔法の勉強を始めるので、魔力を発動させなくては話にならないのですよ。


ですが、幼稚園となると話は変わるのです。


この時期はまだ授業なんてものがないから、魔法が使えなくても入園はできるのですが、

小学入学前までに覚醒できなければ、入学は望めないですし、入れたとしても小学校では落ちこぼれ扱いになってしまうのです」


 知らなかった。

 俺はコンディジオーネさんに入園させられたところがあるから、魔法を使うための学園だということを今ここで始めてわかることになる。


 覚醒できていないために、属性診断で判定できないとしたら、どうして俺が研究所で何の魔法の持ち主がわからなかったことに辻褄が合う。

 つまり、まだ俺の中で魔法は目覚めていなかったということになる。

 それよりも、先に死に寄せの呪いが発動して追い出されたということ、か。


 しかも、コレーラマジョーレは俺と同じくらいかと思っていたのに、小学生だとは思わなかった。

 今更だけど、どんなに近くても3歳は年上だし、敬語で話さなくても大丈夫だったのだろうか?


「ということで、今から自己紹介なのです。


うちは魔法学園の小学部1年生のコレーラマジョーレなのです。


魔法属性は、炎だということがわかっていて、今は練習中なのですよ。


うちは早生まれなので、6歳みたいなのです。

研究員に聞いたところは、2歳の頃に研究所に入ったみたいなのですが、その時の記憶はないのですね」


「うちは、ソレーラミノーレなのです。


魔法学園の幼稚園部の年少さんなのですよ。


魔法属性は、今のところわかってないのですね。


うちは4歳で、赤ちゃんの頃に親元を離れることになったのです」


 まず、ここでなぜ自己紹介を始める?

 俺も一応、した方がいいのかな?


「俺は、フェブール。


赤ちゃんの頃から研究所で育ったみたいで、

ソレーラミノーレとは同い年だ」


 何をどう自己紹介をすればいいのかわからないので、思いつく限りのことを話してみた。


「ここで、うちと妹で探さなくてはならない人物がいるのですね。


それは、ラックという姉なのです」


「ラック?」


 聞いたことない名前に、俺は眉をひそめていた。


「そうです。


うちと、ソレーラミノーレの姉にあたり、

彼女は岩属性の魔法を使えるみたいなのですね」


 ここで、ソレーラミノーレが口を開いた。


「コレーラマジョーレが火の魔法で、

ラックが岩の魔法を使えるとしたら、

ここで推測が来るのです。


うちは小学校に入る前に、

岩の魔法か、火の魔法か、

どちらかが使えるようになると思われるのです。


なぜなら、魔法は高確率で遺伝が関係しているのですから」


 そんなことはいいから、ラックの説明には入れと思ってしまった。

 この姉妹は顔も似ている上に、やっていることも同じだ。

 もしかしたら、嘘偽りなく本当に姉妹なのかもしれないな、と感じている。

 

 姉妹同時に語り始めた。


「ラック。


うちは、聞いた話でしか知りようがないのです。


パートナーがスクイアットロというリスであったことや、水色の髪を持つことなど」


 スクイアットロ?

 もしかして・・・。


「それって、俺のパートナー?」


「スクイアットロをご存知なのですか?」


 コレーラマジョーレが身を乗り出した。


「それは、俺の相棒だからな」


 俺は腰に手を当てて、自慢げに答えた。


「そしたら、ラックを探す手助けになれそうなのですか?」


 なぜか、コレーラマジョーレが目を輝かせていた。

 

 目的がわからないけれど、ラックという人を見つけることに何か意味があるんだろうな。


「スクイアットロは、どちらにしてもこの学園に来ることはないだろうし、

それに、ラックさんを確実に見つけれるとかは限らない。


生きているかどうかも、わからない。


それでもいいの?」


 真実はいつも綺麗とは限らない。

 時には知りたくもない残酷なこともある。

 それを受け入れられるかどうかは、また別の話しなんだ。


 俺が壊れた時みたいに、彼女達も追い詰められるような出来事でなければいいのだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る