第7話 助けてくれた少女の正体
アシーロ先生は一人一人に、紙を配っていく。
きっと名前の書かれた紙だ。
「げ、おらはこんな名前か」
「何、この名前?
ちょー、かわいい~」
様々な感想があった。
俺は、そんな声を聞くたびに、
どんな名前になるのかワクワクする気持ちと、
変な名前にならないかという不安が同時に襲った。
そして、俺にも配られた名前は、フェブール。
最初はその書かれている内容は、見間違えかと疑い、
俺は何度も読み返した。
だけど、何度目を通しても同じだ。
「先生、これはどういうことですか?」
フェブールは、フェブル。
つまり、フランス語で弱いという意味だと思う。
「そのままの意味です。
それが、君の名前となるのです。
異論はありますか?」
異論はあるかないかと聞かれたら、ある方だ。
こんな名前に納得するわけがない。
名前がないことも嫌だけど、
変な名前をつけらるくらいなら、ない方がいい。
「変な名前をつけられる方の気持ちとか、考えたことあるんですか?」
俺の声に、周りが静まった。
みんなの目線が、俺の方に向いたとしても構うものか。
今こそ、アシーロ先生の言う異論ってやつをぶつけてやるんだ!
「ありますわよ。
ですが、これも平等な権利なのですのよ。
名前は自分で決めることができず、
どんな形であれ、受け入れるしかない。
キラキラネームもそうです。
改名してほしくても、すぐにはできないんです。
改名に成功しても、どこかには残ります。
納得できなくても、受け入れることも必要だったりします」
アシーロ先生と俺のにらみ合いが始まったところに、緑髪の女の子が仲裁に入った。
「意味がないのですよ。
今すぐに、身を引くべきなのです」
俺は沈黙を続けていると、アシーロ先生は何も言わなくなった。
「うちは、ソレーラミノーレなのですよ」
緑髪の女の子が、俺に報告した。
「この学園の中にいる、ソレーラマジョーレを紹介するのです。
うちと顔は似てるみたいですが、紫髪なのですよ。
確か、昨日は不良グループから、男の子を救出したという話があるのですね」
不良グループ?
昨日?
男の子?
「助けてくれたのは、君じゃないの?」
俺は、ソレーラミノーレを指さした。
「何の話ですか?
うちは、不良と出くわしていないのです」
顔は、俺を不良から助けてくれた紫髪の女の子に似ている。
紫髪?
俺は、その子の髪をまじまじと見た。
緑髪だ。
「ごめん、人違いだった」
ソレーラミノーレは「いいのですよ」と苦笑いだった。
俺とソレーラミノーレは初対面だったということになる。
俺を助けてくれたのは、話をまとめると、
ソレーラミノーレと顔が似ている紫髪の女の子の方か。
「君の姉という人に合わせてくれないか?」
「いいのですよ」
「その子は、自分の名前がわからないって言っていたし、人違いかもしれないけど」
「昨日までは姉の方も名前がなかったのですが、
たった今になって、名前が決まったと授業中だけど連絡が来たのです」
「今、連絡してないだろ?」
「天然でも入っているのですか?
先生にばれないように、内緒でやるテクニックをやるに決まっているじゃないですか?」
それは、初めて聞いた。
隣にいる俺にも、わからないようにやるコツがあるとか。
「ちなみに、どうやってやるんだ?」
「そんなことは、内緒なのですよ」
ソレーラミノーレは、にかっと歯を見せて笑った。
こうして、休み時間になった。
俺は、ソレーラミノーレに別の所に連れて行かれた。
「さ、姉に会いに行こうなのです」
こうして、紫髪の女の子がいる所までついた。
しかも、ここは廊下だった。
「待ち合わせ?」
「そうじゃないけど、姉妹の勘というものなのですよ。
いつ、どこにいるのか正確に把握できてしまうのです」
「どういうこと?」
「そういうことなのですよ」
ソレーラミノーレが笑顔で言う中、紫髪の女の子が静かに話し始めた。
「もしかして、不良から助けた子なのですか?
うちが、火を使って脅したという」
やっぱりだ。
あの時の女の子は、その子だったのか。
「お互いが姉妹っていうことがわかるということは、本当に出自不明とかあるの?」
紫髪の女の子が答えた。
「研究所の資料を元に、研究員からやっと教えてもらったのです。
どうやら、うちは2歳の頃に親元を引き離されたみたいなのです。
ちなみに、妹は生まれてすぐだったみたいなのですが・・・」
ここで、俺は自己紹介がまだだったことに気づいた。
「俺は、一応フェブールという名前なんだけど、君は?」
「うちは、コレーラマジョーレなのです。
うちの母親は、火の魔法を扱える魔女だったみたいなのですよ」
「ということは、妹であるコレーラミノーレも魔女の娘ということか?」
「多分、そうだと思うのです。
異母姉妹だということなら、話は変わりますが、そうでなければそうだと思うのですが・・・。
思うのですが、ソレーラミノーレは火の魔法を持っていないのです。
これに、疑問を持っていて」
「姉妹で、同じ属性の魔法を扱えないとおかしいの?」
「そういうわけではないのですが、どうしてなのか気になっただけですよ。
ちなみに、フェブールは属性診断とかやってもらったのですか?」
属性診断って、何だろう?
こんなものあったけ?
初めて聞いた。
「やってもらってないけど、必要だったりする?」
「絶対やらなくちゃいけないということはないのですが、
適正魔法は知っておいた方がいいか、と」
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