番外編 結氷の魔女

 私は、ギアッチョ。

 氷の魔法を使い、事件の謎を探している、個人で活動している名探偵のようなもの。


 私は、インドでスクイアットロと一緒に生活をしている。


 ある時、家の前にフードを被った人が現れた。


「そなたが、結氷なのですね?」


「結氷の魔女?


それは否定も肯定もできません。


私は何もやってませんから」


「質問の答えになっとらん」


「そなたには、結氷の魔女と名乗る権利があります」


「え?


私が名乗っていいの?」


「許します。


そなたに、権利を与えます。


ただし、それは選べません。


そなたが魔女として、歴史に受け継ぐのです。


スクイアットロから報告を受けました。


ですので、そなたは今日から、魔女です」


 スクイアットロは、どうしてそんなことをしたんだろう?


「私が、結氷の魔女・・・?」


 私は、いまいち実感がなかった。

 ただ、氷の魔法を使えるだけで、どうして結氷の魔女になるのか理解できなかった。


「そうです。


受け入れられないかもしれませんが、納得してください。


英雄は、自分の使命を選べません。


それと同じです」


 ここから、私は事件の首謀者を見つけるための冒険が始まった。

 どの事件にも必ず犯人というものがあって、そいつが裏で操っていることがお決まりだから。


 最強の敵なら、今の魔法ではきっと勝てない。

 下級だったら、私の力で倒せそうだった。

 少しずつ、強くなっていけばいいと、そんな気楽に考えていた。

 

 何もこわくない。

 あとは、もうひとつの強大と言われる力を目覚めさせるだけだった。


 

 冒険をしていたところに私は、怪物と出会う。


「ほほう・・・。


下級しか倒せない、魔女か?」


 私は、見下されたような気がして、むっときてしまった。


「失礼な。


これでもくらえ」


 怪物に氷を浴びせてもだめだった。 

 諦めるしかないかもしれないけど、諦めたくないのが私。


「敵を倒すことが正義だと思うか?」


「それって、どういうこと?」


 スクイアットロは今、私の近くにはいないので、わからないことを質問できない。

 なぜかいつも姿を消すけれど、一体どこに行っているのだろう?

 

「怪物がすべての悪行をこなしていたと思うのか?


大部分は、人間が行っている。


この世界に人間がいる限り、何度でも事件は起こる。


それがわからないか?」


「わかる・・・ような、わからないような」


「自身のやっていることが、無駄だと気付かないのか。


なら、世界を滅ぼす以外に、人間を滅亡させる方法はない」


「世界を滅亡・・・?」


 言われてみると、そんな気がした。

 世界を守り切れないし、敵を倒しても、人間がいる限りは平和にならない。


 ここで、私は呟く。


「そうだよね。


人間がいる、この世界なんてなくなってしまえばいいかも」


 こうして、私は世界を、地球を魔法を使い、一瞬で氷漬けにした。


 寒い、寒い。

 冷たい、冷たい。


 私は、今、氷の中にいる。

 どうして、この中にいるのかわからない。

 事の経緯を憶えていないから。


 動けないし、話すこともできない。

 私は、自分が誰なのか知らない。


 目の前で空飛ぶリスが現れたかと思うと、氷がとけた。


「あれ?


君は、誰?」


「おいらは、スクイアットロ。


上司からの命令で、いやいや助けることになった」


「私のこと、知ってるの?」


「もちろんだ。


結氷の魔女。


たった今、氷の卵から生まれたばかりで」

 

「氷の卵?」


「そうだ。


お主は転生を果たし、氷の卵から生まれた赤ちゃんだ」


 私は生まれてすぐに話せる、歩ける幼い赤ちゃんとして生まれた。

 年齢は0歳で、名前はまだない。


「あのさ、私は君と前に出会ったことある?」


 スクイアットロに問いかけた。


「そこまで、教えられん」


「どうして、私には過去の記憶がないの?」


「転生も果たしたからだろ?」


「転生?」


「何回も、同じ説明をさせるな。


自分で答えを導き出すことはしないのか?」


「そんなこと、私はできない。


君の言う、私ってなんなの?」


「さあな。


どうせ教えても、また忘れる」


「忘れるって、私はそんなに忘れん坊?」


「そうゆうわけではないんだが、お主の魔力は計り知れない。


世界を、地球を、全平行世界を、氷にしてしまったからな」


 私には、何のことだかさっぱりわからなかった。

 何の話をされているのだろうか?


 転生だの、氷漬けになっている理由など、過去の記憶がない以上、何もわかりやしない。


「氷じゃない世界ってあるの?」


「異世界転移したり、宇宙に飛びだったりしない限りないな。


この地球そのものが氷の世界だからな。


宇宙人も来て、驚いていたぞ」


「宇宙人なんて、いるの?」


「話せば質問ばかりだな。


とにかく、お主が要注意人物だということは、会議でも証明されておる。


これから、お主を牢にぶちこむ。


それなりの罰を受けてもらうぞ」


 いきなり、何を言っているのか頭がついていかなかった。


「罰なんて、私、何のことだかわからないよ。


それに私は過去の記憶がないのだから、自分が何の罪を犯したとかわかんないよ」


 どういうことだ・・・?

 なぜ、こうなっている?

 何がどうなっている?


 私は、裁判にかけられていた。

 

 こんなの、どう考えても常識外れだ。

 何の裁判を行っているのかわからないし、私はこれからどうなるのだろうか?


 有罪?

 無罪?


 どちらにしても、私は何かしたということになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る