番外編 ギャグな叔父を持つ甥っ子
俺は、どこにでもいる天然な叔父を持つ甥っ子。
俺の叔父の問題なところは、
根は穏やかで、人助けを頑張るけど、
独自解釈をしては、誰もが予想しない方向に動くし、
勝手に異世界転移しては、異世界の住人たちを自覚なしに困らせる行動をとるし。
話は最後まで聞いてくれるけど、勘違いした上で聞いている。
人のことを簡単に信用してしまう純粋な性格だけど、明らかに怪しい人のことも信用しては、ついて行ってしまう。
根は真面目だけど、周囲からふざけていると誤解されるような話し方をする。
そして、緑の髪を腰まで伸ばしていた。
俺が、学ランを着てから、合成皮革で作られたスクールバックを持って、学校に行こうとすると
「甥君、これからどこに行くの?
誰かのお見舞いかな?」
出た、叔父さんの無自覚な天然発言。
「これから、学校だって。
見てわからないの?」
「この格好だと、これから戦争に行くんだって感じがして、かっこいいね」
「何をどう見たら、そんな解釈になるんだ?」
「現代社会で、陸軍は学ランを着て、戦争に行くって、教わったよ。
ちなみに、海軍はセーラー服で」
「それは、歴史の授業でやることだ!」
こいつ、学校で何を習ってきたんだ?
一応、叔父さんも学生だけど、ちゃんと授業を理解できているかどうか、不安になってくるなあ。
「行ってきまーす」
「うん、行ってらっしゃい」
「甥くーん、ネクタイの巻き方、教えてー」
という声が、聞こえて、
「何で、ネクタイ巻けないんだ!」
叔父さんの学校は、ブレザーにネクタイの学校だ。
「いまだに、ネクタイを巻くことに慣れなくて・・・・」
「慣れないって、君は3年生だろーが!」
仕方ないから、俺が叔父さんのために、ネクタイを巻いてあげた。
「これで、よし」
「甥君、それから、僕ね、荷物重くて持てそうにないんだ」
と、カバンを見てみたら・・・。
「カバン多っ!」
スクールバックが、いくつも置いてあった。
「そんなにいらないでしょ?
スクールバックは、ひとつあればいいでしょ。
何を入れてるの?」
「うーん、忘れ物が多くてね、忘れ物しないいようにって、とにかくいーっぱい入れたの」
「例えば、どんな?」
「木刀とか・・・・」
「授業に必要ないだろ!」
「いつでも、どこでも寝られるように、布団も入れてあるんだあ」
「お泊りでもするの!?」
これは、天然という話ではない。
確実に、馬鹿だ。
「後ね、最近、俺は学校もよく遅刻するの」
「え?
寝坊したとか?」
「ううん、学校に行く道とかよくわからなくて・・・・」
「君は、そんなんでどうやってやってきた!?」
「お腹すいたなあ」
「さっき、朝ごはん食べたよね?」
「あれ、朝ごはんって言うの?
早朝ごはんだと思ってた」
「早朝ごはんなんて、あるの!?」
こいつ、普通じゃねえ。
どこまでたわけなのか?
「今日は、三者面談の日でしょ?
甥君が、一緒に行ってくれるんじゃないの?」
どうだった。
今日は、祖父がどうしても用事を外せなくて、代わりに行くことになっていた。
三者面談が終われば、そのまま帰るからいっか。
こうして、二人で、叔父さんの行く学校に向かった。
「重大な話をこれから、していく」
担任の先生と、俺と、叔父さんの三者面談だ。
緊張するなあ。
「君は、卒業後進路を、どうしたいのですか?」
先生に質問されたら、
「はい、異世界に行きたいです」
「そんな進路があるか!?」
「なるほど、異世界に行きたいねえ」
先生がメモ帳に書くものだから、
「真剣にとるんかい!?」
「漢字の小テストの成績、すごくよかったよ」
「ありがとうございます」
叔父さんが、笑顔で言うから、俺は安心した。
よかった。
叔父さんも、ちゃんと勉強できているんだって。
「その代わり、ひらがなやカタカナが、書けないみたいだけど、これは一体、どういうことかな?」
「ひらがなやカタカナ、できなかったの!?」
漢字は書けて、ひらがなやカタカナができないって、どうしたらこうなるんだろう?
「生徒会に立候補してくれてるね。
確か、議長で」
「はい」
俺と、叔父さんが同時に言った。
「生徒会長と、副会長が、君のペースに疲れ切っているという報告が来てね・・・」
「え?
憑かれてる?
何にですか?」
「そっちの意味じゃないわ!」
三者面談でも、天然発言がでてくるのか・・・。
「君は、高校に行く気あるんですか?」
「はい、大学に行きたいです」
「答え方、間違えてる!?」
「後ね、忘れ物が多くてね、制服をよく忘れていたね」
「それ、忘れようのない物!?」
「そんなんで、高校に行けるの?」
「親孝行できます」
「進路の話を聞かれているんだ!
わかっているのか!?」
「このままだと、不良高校に進学することになるんだが、それでいいの?」
「不漁高校?
漁師じゃない学校のことですか?
行きたいです」
「底辺高校に行くことになるって、話をされているんだ!」
「君は、これからどうしていきたいとかっていうのは、あるのかい?」
「これから・・・・」
叔父さんは、考え込んでいた。
「できることなら、過去に戻りたいです」
「未来のことを聞かれてるんんだ!」
「人間関係の話になるんだが、生徒会長と、副会長が君に気を使いすぎてしまうみたいで」
「気を使う?
気を放てるということですか?」
「一般人に、そんなことができるか!?」
「君は、議長に向いていないという話も出ていたんだ
「僕は、議長を剥けません。
皮むき器を、持ってきてませんから」
「そっちじゃねえ!?」
何で、先生が何か言うたびに、ボケをかましてくるんだ?
「それと、一部の生徒が、君は非常に面白いという話もあった」
「面白いですか?
堅苦しい話しか、してませんが」
「君の天然が、そうしているんだ」
「体育の授業だけど、短距離走を1秒、中距離層を2秒、長距離走を3秒で走りきって、陸上部も驚いていたよ」
「もはや、人間でもない」
「ということは、俺はサッカー部で足が鍛えられたということですね?」
「サッカー部やっていても、そんなふうにはならん」
叔父さん、これだと、周囲に人間ではないことを証明しているようなものだ。
「サッカー部の顧問の先生から、君はボールを、ゴールと違う方向に飛ばすという報告もあってね」
「サッカー部に入った意味すらない!」
「君は、陸上部の方が合っているんじゃないかって、話もでていたんだ」
「僕は、陸で生活しています」
「ただ、ひたすら走る方がいいって、言われてるんだ!」
こんな、疲れる三者面談があるか。
「今の学力だと、いい高校に行くことは難しいね」
「はい、それなら、いい高校行けるように頑張ります」
「今からじゃ、遅いのっ!」
「学校見学は、行ったのかね?」
「行ってません・・・・」
俺が答えたところに、叔父さんが
「異世界で、学校見学しました」
「おい!」
異世界のことなんて、話すな!
誰も、その話なんて、信じるわけないだろう。
「異世界だが、なんだか知らないけど、君の空想に付き合っている暇はないんだよ」
「空想なんかじゃありません。
本当に行きました。
でしたら、証拠を見せましょうか?」
「いいから、先生の質問を答える!」
「クラスのみんなにも、異世界転移とかの話をしているみたいだけど、本当に空想が好きみたいだね」
「はい、すいません。
家でも、きちんと言っておきます。
皆さんには、ご迷惑をかけてしまったみたいで」
俺は、謝ったけれど、どう謝罪すればいいのか・・・。
「先生、空想が好きなことのどこがいけないのですか?」
「え?」
「人の個性ですよ」
「君、何様なの!?」
「後さ、学校の校則を守ってないね」
「学校に拘束?
誰か、縄で縛られているんですか?」
「ルールを守れないって、話をされているんだ!」
「男子は、髪が肩につくようなら、切るようにって言っているのに、どうしたらいいかな?」
「肩に神様がついていたら、切らなくちゃいけないって、ことですか?
先生、そんなことしたら、罰が当たります」
「髪をショートカットにしろって話だ!」
「ショートカット?
神様を傷つけちゃいけませんよ」
「神様じゃねえ、髪の毛!」
「後さ、廊下は走らないって注意されても、走るし・・・・」
「廊下を走っている人が、いるんですか?」
「間違いなく、叔父さんのことを言われていると思うよ・・・・」
「君は、身長が、低身長症じゃないかって、保健の先生も心配しててね・・・・」
「俺が、慎重派ってことですか?」
「違う、違う。
身長が低いということだ」
「僕、150センチ代ありますし、普通ですよ」
「この年齢で、身長150センチ代って、考えもので・・・・」
「保健の先生も、副担任の先生も、150センチ代ですが・・・・」
「男子でって話をされているんだ!」
「先生から言いたいことは、言い切ったつもりだから、ご家庭でも、どうするのかしっかり話し合うように」
「はい、先生、お褒めの言葉、ありがとうございます」
「今の話に、褒め要素あった!?」
これで、三者面談は終わった。
叔父さんと、高校の見学に行ったけれど、叔父さんはトイレにこもって、出てこない。
「叔父さん、学校見学に来たのなら、いろいろ見て回ろうよ」
「見て、回る・・・・?
甥君、目が回っているけど、大丈夫なの?」
「そんなんじゃないわ!」
叔父さん、本当にこんなんで高校行けるの?
叔父さんがトイレから出てきて、学校見学に行くけれど・・・。
「甥君、ここは陸軍と海軍の学校なの?
みんな、セーラー服と学ランだし」
「ここが、この学校の制服なの!
普通の高校だから!」
「それに、セーラー服って、海軍はスカーフのはずなのに、どうしてリボンなの?」
「だから、陸軍とか海軍とかじゃなくて、高校の制服って、何度言えばわかるんだ!」
「甥君、僕は海軍と陸軍の制服が着られるなら、海軍の制服であるセーラー服がいい」
「女子はセーラー服で、男子が学ランって、もう決まってるの!」
「甥君、僕はどの高校に行くか決まってないけど、この高校でいいの?」
「君の偏差値的に行ける高校が、そこしかないんだわ!」
叔父さんといるだけで、ツッコミだけの毎日となる。
学校見学から帰ってくると、どういうわけだが、すごく疲れた。
学校見学なんか行かなくても、三者面談でも、家でも、叔父さんといるだけで、いつもこんな感じな気がしてくる。
「甥君、僕、異世界行きたい。
学校見学の行き抜きに」
いやな予感しかしない。
「今日は、やめときな。
門限が決められてるし」
こういうやりとりが、いつまで続くんだ?
何か飲もうかと、俺が冷蔵庫の中を開けたら、見知らぬものがたくさん入っていた。
「叔父さん、これなあに?」
「卵味のタピオカミルクティーと、納豆味のタピオカミルクティー、あとは納豆味のアイスと・・・・」
「何で、変わった味しかないの?」
「甥君は、何なら飲めそう?」
「りんごジュースとか、オレンジジュースかな」
「わかった、キウイジュースね」
「そんなこと、言ってない!」
「果物系がいいかと思っていた。
水道水の水が、いいかな?」
「それは、俺に冷蔵庫の飲み物を飲むな、と言いたいのか?」
「冷蔵庫の中は、僕がたくさん補充しておいたから、これでしばらくは大丈夫そうだね。
納豆が入ったたこ焼きと、
バナナお好み焼きと、
カスタード味のソフトクリーム、
マスタード味のから揚げと、それから・・・・」
「俺の食べれるものが、ひとつもない!」
叔父さんは、高校受験に挑むことになるけど、大丈夫かなと心配になる自分がいた。
あそこは、掛け算さえできれば、合格できる高校だ。
さすがに、叔父さんも、そのくらいならできるはず。
「合格発表来たよー」
「叔父さん、どうだったの?」
叔父さんは、笑顔で答えた。
「高校に落ちたよ」
「君、そこまで学力なかったの!?」
こうして、高校は異世界の高校に行くことになった。
「叔父さん、魔法なんて使えるの?」
「まほちゃんは、使えないよ」
「魔法だよ!?
しかも、まほちゃんって、誰!?」
「魔法高校で仲良くなった同級生」
「叔父さんに、友達なんてできるんだ」
「今度、家に呼んでくるね」
別の日に、まほさんという人に家に来てもらったら、とてもきれいな人だった。
まほさんは、水色とも呼べるような青髪のショートヘアーに、抜群のスタイル。
叔父さんの通う魔法高校は、女子は確かブレザーに、ネクタイだったね。
多分、まほさんは、魔法高校の制服を着ているんだと思う。
「初めまして、まほさん」
「初めまして」
まほさんは、にっこりと挨拶を返してくれた。
すごく、いい人・・・・。
そのように感じた矢先
「まほちゃん、ジュース、とってきてくれない?」
「お客さんに、頼むな!」
せっかくの雰囲気が台無しだ、この空気が読めない叔父のせいで。
「ジュースって、どんな飲み物がいいのですか?」
「まほさん、そんなことは気にしなくていいんです。
このボケナス叔父さんの気まぐれですから」
「ぼく、誰かになすにされるの?」
「空気読んでくれない?」
「空気って、読めるの?」
「叔父さんってば、いつもこうなんだからあ」
ここで、まほさんは、クスリと笑った。
「甥さんと仲がよろしいのですわね」
「仲がいいって?」
俺が不思議そうにしていると
「よし、気に入った。
僕の彼女になってくれないか?」
「上から目線だ!」
「まほと付き合うのですか?」
「付き合いたい。
付き合わなきゃだめだ。
運命の人は、まほちゃんしかいないから」
「叔父さん!」
「とっても、嬉しいですわ・・・・。
まほを好きになってくれる人が現れるなんて、嬉しいことこの上ないです」
こうして、叔父さんは彼女持ちになった。
「はああ、結婚したいなあ」
まほさんが帰ってから、呟く叔父さんだけど
「まずは、高校卒業することを考えようよ」
「何を言っている?
18歳の誕生日に、結婚すればいい」
「法律的には、結婚できるかもしれないけど・・・・」
「子供も、18歳になってから作ればいい」
あれから、数年の月日が流れた。
叔父さんは、高校を卒業して、18歳の若さで、まほさんと結婚して、子供が一人できた。
緑髪の1歳の娘もいる。
そう、叔父さんとまほさんは今年で、21歳を迎える。
「甥君、学ランはもういいの?」
「俺、もう小学校卒業したけど・・・・」
こんな天然で、空気の読めない叔父さんに奥さんができて、子供もいるとか。
俺の制服は、ブレザーにネクタイはつけなくていいという学校。
だから、ワイシャツを着て、ブレザーを羽織る。
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