番外編 岩に封印されし少女の過去

 おいらは、スクイアットロ。

 リスの姿をした異世界出身の精霊。


 氷漬けにされたのは、第一のパートナー。

 岩に封印されたのは、第二のパートナー。


 おいらは、大好きな彼女たちを守り切れないでいた。

 こうすることでしか守れなかった。


 おいらは、岩属性の魔法を使える、ラックに出会った。

 出会ったきっかは、ほんの些細なものでラックの叔母とやらと、交流があったから。


「君が、叔母様が話していたリスさんなのですか?」


 水色髪の少女に聞かれた。


「それに、おいらはリスという名前ではない。


おいらは、スクイアットロだ。


覚えておくんだな


「あたしは、ラックと呼ばれる者なのです。


よろしくなのです」


 ラックは、お淑やかだ。


 ある時、おいらはこんなことを言われた、


「スクイアットロ様、魔法を教えてほしいのです」


「魔法なんて、まだ早い。


使い方を間違えば、滅びの道を招くぞ」


「ですから、あたしは精一杯スクイアットロ様のためにできること、全部尽くしますのです。


だから、お許しただけませんなのですか?」


「本当だろうか?


信じていいのだろうか?


お主の話」


「信じるかどうかなんて、最初からわからないのですよ。


なら、信じることから始めようなのです。


あたしは、スクイアットロ様のパートナーになってみせるのです。


最高で、今までにないくらいに、あたしのことを大切な存在として認めてほしいのですよ」


 どうせ、子供の言うことだ。

 後で、きっと意見を変える。


 皮肉な発言をしていたら、話がややこしくなりそうだ。

 ここは、ひとまず、見守ることにしよう。


「この根拠、あるなら証明してみるのだ。


思いつきの言動や行動に、おいらは寛容できないのだぞ。


子供だから、なんでも許されると思うでない。


パートナーになるということは、これから乗り越えられないんじゃないかって思うくらいの辛い出来事も待っておる。



いつ、どこで命を落とすとかはわからないのだぞ?」


「あたしの使命は、命かけで世界を守ることなのです。


生半可な気持ちで、挑みませんなのです。


これから、共に戦わないのですか?」


「いいだろう。


これから向かうぞ」


「はいなのです」


 こうして、ラックと共に戦うようになり、彼女も少しずつ魔法を使いこなせるようになっていった。

 おいらは、数年の時をえて、ラックを少しずつ信用するようになっていた。

 

 ここで、暴食と呼ばれる敵が近いうちに、現れるとか誰も予想ができなかった。


 ラックと、おいらがいつも通りに平和を守るための戦いをしていたら、一人の人間がいた。


「お腹すいた・・・・。


お腹すいた・・・・」


 こうして、目の前で怪物も人間も食べていた。


「怪物は、食べられるのですか?」


「そんなはずはない。


あれは、暴食の魔法だ。


ラック、気をつけるんだぞ」


「はいなのです!」


 ラックは、暴食に岩を飛ばした。


「おいしい・・・・。


この岩、すごくおいしい・・・。


もっと、もっと、ちょうだい・・・・」


「これ、どういうことなのですか?」


「暴食は、能力も魔法も食べてしまうんだ。


満足するまで与え続けるか、物理攻撃のどちらかで勝つしかないということになるぞ」


 ラックはこうして、何度も岩を飛ばしてみても、暴食は「おいしい・・・」と全部、吸収していくだけだった。


「一体、どうすればいいと言うのですか?


あたしには、残る手段もありませんなのですよ」


「諦めるしかないな」


「諦めるなんて・・・・」


「こんな危機的状況は、立ち向かっても無駄なのだ。


今は、自身の身を守ることだけに専念するしかないだろう」


「待ってなのです。


人々のことはどうするのですか?」


「どうしようもできないと言うところが結論だ」


「そんな・・・・!


何か方法とかないのですか?」


「おいらが戦闘に赴くという手段もあるかもしれないが、そんなことしたら、暴食に目の敵にされるだけだ。


おいらは、ただのリスではないからな。


暴食は、おいらの正体を知っている」


「正体ってなんの話なのですか?


それに、スクイアットロは話すこともできますし、本当にただのリスではないみたいなのですが」


「今のお主に、おいらのことを語るほど強くないだろう?


なら、危機的状況を突破することだけに前進するのだ」


「諦めなくないのです・・・・」


「ラック?」


「あたしは、そんな簡単に諦められませんのです。


あたしは、何度でも、自身の身が尽きるまで戦い続けますのですよ」


「ラック?


勝ち目がないとわかっているのにか?」


「ここで逃げたら、次は誰が犠牲者になるのか、わからないのです。


だから、あたしは戦い続けますのです。


あたしの目的は、世界を守ることなのですよ。


だから、諦めませんのです」


「ラックがそこまで言うなら、いいだろう。


おいらも、最後まで付き合おう。


パートナーの言うことは、従うことになっているからな。


仕方なくだ」


 おいらは、ラックの意志を認めた。

 だけど、これはどんなに頑張っても勝てない相手なので、やっぱり、ラックはおいらから見たら、無謀そのものかもしれない。


「暴食よ、覚悟するのです。


君の狼藉は今日までといたしますのですよ」


「おいしいもの、くれるの?


おいしいもの、もっと食べたい・・・・。


今のじゃ、まだたりない・・・・」


 ラックがかまえたところに、ラックの叔母が現れた。


「一人で、勝てると思っているのかしら?


こんな相手」


「叔母様」


「ここは、叔母に任せて?」


 こうして、ラックの叔母が立ち向かったものの、暴食に「いただきまーす」と二人とも食べられてしまった。


「あ・・・・あ・・・・」


 ラックは、目の前で自分の叔母が食べられるところを見て、立ちすくんでいた。

 そう、暴食に殺されてしまったのだ。


「英雄がやられたら、後のことはどうしようもできない・・・・」


「何をのんきなことを言っているのですか?」


「ラック?」


「叔母様の仇を今、うつのです」


「考えが古いぞ!


憎しみから生まれるのは、憎しみだけだ!」


「あたしは、そう決めたのですよ・・・・。


滅べ、滅べなのです」


 こうして、ラックは次々と岩を発動させ、暴食に技を食らわせるだけだけど、その度に「おいしい・・・」とどんどん吸収していくだけだった。


「滅べ、滅べ・・・・。


滅んじまえ・・・・・」


「ラック!


ラック!」


 おいらは何度も、ラックに呼びかけていたけれど、ラックは聞こえていなかった。

 おいらは、ラックの足が岩になっていることに気づき、左肩に乗っていたけれど、すぐに浮いた。


「滅んじまえ・・・・・。


滅べ、滅べ。


消えろ、消えろ。


消えちまえ・・・・」


 暴食に魔法で攻撃していくけれど、その姿は無謀そのもので、本来のラックからは見られない人間性を失った復讐だけを誓ったような殺人鬼みたいな感じだった。


「ラック!


もういい!


ここまでにするんだ!」


 だけど、ラックにその声は聞こえていないみたいで、何度も岩を飛ばす。


「君なんて、君なんか・・・・・。


この世界から、消えればいいんだ!」


 ラックは普段は「なのです」口調だけど、それすらもなくなっていて、彼女じゃない別人のようだった。


「ラック!


このままだと、ラックが・・・・」


 ラックの岩化は、下半身まで進んでいた。

 だけど、ラックは気にする様子もなかった。


 暴食は最初は「おいしい・・・」と言っていたものの「もう、食べきれない・・・」に変わった。


「お腹いっぱい・・・・・。


苦しい・・・・・。


さっきの人も、食べたからかもしれない・・・・。


これ以上、いらない・・・・・」


「消えちゃえ!」


 この一言で、暴食は岩へと姿を変えた。

 だけど、それと同時にラックも岩になってしまった。

 

 おいらは、うまく避けていたから大丈夫だったけれど、このことは上司に報告しなくてはならないな。


「ラックよ。


お主は、よーく頑張った。


だけど、すごく無謀な戦い方をした。


これからは、誰かが封印を解いてくれるまで、眠るがよい。


その代わり、上司の方針により、お主は記憶を失うことになるかもしれないがな。


おいらは、また新しいパートナーを探すことになるだろう」


 おいらは上司に報告をした後に、岩化したラックを異空間に移動した。


 異空間には氷漬けになった美少女と岩に封印された美少女のラックが置かれることになった。

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