第1話 死神の悲劇
俺の死に寄せは、日に日に強くなっていくのは、二日に一回のペースで、誰かが死んでいった。
大きな児童養護施設だったけれど、職員や、子供たちが次々と亡くなっていった。
児童養護施設にいる人たちが生きている日もあるけれど、その時は大体、幼稚園の先生や園児たちが死んでいったりした。
ここで、リスの姿をしたスクイアットロが俺の前に現れた。
「やあ」
「のんきだな」
俺は、怒る気にもなれなかった。
「どうだい?
この、死に寄せと呼ばれる力は?」
「最低でも、二日に一人は、死んでいく。
俺のせいだって、自分を責めたくなるけど、自分ではどうしようもできない。
今すぐ、どこかに消えてしまいたいんだ」
「消えるって、どんなふうに?
残念ながら、お主が死ぬっていう選択肢はないぞ。
なぜなら、お主はパラレルワールドへ転生して、また同じことを繰り返すだけだからな
俺は死んだことがないからわからないけど、死ぬことでパラレルワールドに行けるらしい。
本当かどうかはわからない。
「自身が死ぬことが許されないなら、俺は無関係な人を巻き込みたくない。
だから、犯罪者のところに向かわしてくれないか?」
「犯罪者のところに、向かってどうするつもりだい?
根本的な解決にはならないはずだけど」
「俺の死に寄せがあれば、犯罪者も何かしろによって、死んでいくと思うから、どうせ生きていけないっていうなら、そいつらが巻き込まれた方がいい」
「幼稚園はどうするんだい?」
「行かない。
行けないって、言う方が正しいかもしれない。
児童養護施設の誰かが生きている時は、大体は、幼稚園の誰かが死んでいる。
なら、俺はそんなところは行くべきじゃないかもしれない。
そして、俺はひとつだけ疑問を抱えていることがある」
「疑問とは?」
「スクイアットロは、俺といて大丈夫なのか?」
「いい質問だな。
死に寄せは、人間には間違いなく、適用される。
だけど、魔女と同じ能力を持つ者が一緒にいれば、呪いと同化するだけなのさ」
「よくわからないけど、スクイアットロは大丈夫ということでいいのかな?」
「そういうこと。
さ、お主は使命を果たす時が来たんだ。
ここは、落ち着いて最後まで聞いてほしいな」
スクイアットロは、静かにゆっくりと俺に問いかけた。
「もしもの話だけど、どんな方法で、誰かを助けたいかい?
もう一回死んで、平行世界へ向かい、全く別人である人に会いに行くか、
それでも、お主の死に寄せの能力で死んでいくがな。
子供を授かり、自身の子に同じ名前をつけさせるか。
転生先を捜して、生まれ変わりを愛するか。
おいらのような種族のペットを飼い、動物に同じ名前をつけるか。
氷の美少女と、岩の戦闘美少女が封印をされているから、一人だけを助けて、同じ名前にするか。
もちろん、その美少女の間に子供を授かるという選択肢もあるぞ。
ここの選択肢で、運命が大きく左右されるのだぞ。
さあ、どうする?
どうしたい?」
「生き返らせるという選択肢はないのか?」
「それは、ありえないね。
その選択肢をお主が選んだとしても、一度死んだ生物が生き返ることなんてない。
それができる世の中だったら、どんな極悪犯も生きられるっていうことになるから、死刑も存在意義がなくなるし、戦闘美少女がやってきた功績もすべて無駄になる。
これは、変えようがない事実だ。
一度、死んだ生物は例外はない。
このまま、天に召されるか、地の果てまで落ちていくか、このまま現世で幽霊と呼ばれて時を過ごすか、この三択しかない。
生き返らせる選択肢を探すやつは、どんな手段であっても、理由が論理的でも、必ず失敗で終わる。
あとは、人間の誰もが一度は憧れる不老不死という目標も無駄な行為でしかないさ。
不老不死になれた者は、一度もない。
例外があるとしたら、意識がない状態で封印されることだけど、これは幸せと呼べるかい?
だから、おいらの選択肢以外を探そうとするんじゃなくて、おいらの提案した中から選んだ方が適切だと思うのは、おいらだけかい?」
「それは・・・・。
他にも可能性があるかもって探したかったから。
パラレルループとかじゃなくて、ただの時間を巻き戻す能力だったらよかったなって思っているから」
「時間を巻き戻す能力かあ。
すごーくいいね。
だけど、この能力をおいらはおすすめはできない。
なぜなら、これは何回でも使おうって思えてしまうからさ」
「何の根拠があるのさ?」
「根拠も、証拠も出るわ、出るわの状態だ。
時を巻き戻す能力を持てば、誰でも都合の悪い時にループする。
よく、ループ物の作品とかは、主人公が何回もループしていたりしないかい?」
スクイアットロの言うことは、何も間違っていない。
だけど、おいらは何か騙されている気がするんだ。
何なのかわからないけど、大事なことを見逃している気がしてならない。
「時間をループする能力がもし、俺にあったら、間違いなく、その人を救うためだけに使っていたかもしれない。
過去に戻れば、あいつが戻ってくるって、未来に進めなくなっていたような気がしてきた。
スクイアットロ、君は正論ばかり言う」
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