第4話 秘密

「お口がモジョモジョしちゃう」


 だいぶはっきりと喋れるようになってきたルナは、口元を両手で押さえた。


「ルナちゃん、レイちゃんとお約束したよね」

「ごめなしゃい。いいまちぇん、ひみつ」


 それでもルナは弾むように、いつまでも躰を動かしていた。

 もうしょうがないなあ。でも、絶対に秘密なんだからね。





「えっ、レイちゃんが運転するの?」

「じゃあ、誰が運転するの? 2人しかいないんだよ。そうか、事故のときのこと思い出しちゃう? でも、新幹線だと乗り換えが大変だよ」

「いや、大丈夫だ、ごめん、レイちゃんに命預けた」

「よっしゃ、預かった」



「ガクさん、道の駅着いた。トイレ行かなくていい?」


 ガクの耳のイヤホン抜きながら言った。


「ああ、行っといた方がいいね」


 ガクが白杖を持たない方の左腕に、レイは自分の腕を絡めた。


「「少し坂になっている」

「うん。ところで、レイちゃんも男性トイレに行くの?

「それしかなかったら行くけど、障害者用トイレがあるでしょ。ここを左」


 すれ違う人たちから、


「わあ」

「いやー、おめでとう」


とか言うのが聞こえた。


「どうしたの? 何かあった?」

「イベントか何かやってるみたい」

「フーン、そうなの」


「あった、障害者用トイレ」

「レイちゃんも入るの?」

「だって、中広いし、ガクさん1人だとレイ心配」


「便座を立てておくね」

「レイちゃん、見てない」

「見てないよ、ほら、声が遠いでしょ。ガクさん中学生みたい」


「結構出るんだ」

「あっ、聞いてる」

「見てないんだからいいでしょ」

「ほら、終わったら手を洗って。はい、ペーパータオル。レイもおしっこして行こう」


「結構出るんだ」

「あっ、聞いてる」

「おあいこだよ。ぼくだけ聞かれるのずるい」


「もう、中学生みたい」

「お互いにね」


 ハハハッ。


 ガクとレイは回りの人々の注目を浴びていた。


「あれ? いまルナちゃんの声が聞こえたような」

「空耳でしょ。子どもの声は似ているし、いつも纏わり付かれているから空耳、おお、怖」






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