第2話 カツカレー

「あら~、またやってるん。かんにんえ」


 エレベーターから降りたナオは、お昼ご飯をワゴンに載せて運んで来た。


「ルナ、じきにお昼やから手を洗って」

「は~い」


 ルナは右手を高く上げた。


「おっ、ルナ姫は3日間で賢くなって、、幼稚園で学ぶべきことをみんな吸収したんだな」

「賢いんだか何だか、自己主張が激しいなって」

「自己主張、いいことです。自分の気持ちをはっきり伝えられるって素晴らしい」


 これも伯父バカと言うのだろうか。


「カレーのいい匂い」

「さすがガクさん、鼻が利く。じゃあ、これは?」


 レイはガクの鼻先にお皿を持って行った。


「あっ、カツだ。カツカレーですね」

「ピンポーン」

「カツカレー?」


 スタッフまでが身を乗り出した。


「すぐに用意するから。レイちゃん、サラダをよそって」

「よっしゃ」


 レイは腕まくりして、手を洗い、ダスターでテーブルを拭いた。

 

 サラダボウルからトングで野菜を摘まみ入れる。


「ルナも、ルナも」

「ルナちゃん、お手伝いしてくれるの」


 レタスはうまく入れられたが、トマトが潰れてしまっている。

 力加減が難しいようだ。

 風呂用の小さな椅子を持ち込んでいて、これは洗面所で手を洗うのにも大活躍。


「ルナは下でママと食べようね。お姫様のカレーで作ったから辛いことあらへんよ」

「いや~、ここでたべう、ママもここ」

「大勢で食べたいのよね」

「うん」

 

 レイのフォローに、ルナは大きく頷いた。


「ええ~、しょうがないなあ。じゃあ、ちょっと待っててね」




 

日曜日の玄関前の芝生では遼平と一之介が木刀で素振りを始めた。


「ママ、あまり口を利いてくれないんだ」

「おまえたちがそれだけのことをしたんだからな。あんなナオさん見たことない。おれにもフォローのしようがないよ」

「え~、パパ、助けてよ」

「とにかく、毎日素振り100回、そのうち剣道場に通わせる」

「はい~」


 ナオさんに、遼平と一之介にはしっかりとお灸を据えておくと言ったけど、こんな感じかな。まったくえらいことをしてくれたものだ。

 一平の父親、哲之介の顔がちらつく。

 親父は厳めしい顔を終始していて、そこにいるだけで存在感があった。



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