第18話 浪川 泰子の弁当③

スノードロップのみんなは、最後の弁当を食べ終わり、次の朝をむかえる。


龍は、朝から玄関の前にいる。

扉が開き、人が入る。

「おはよう!」

「おはようございます…」

「朝からの仕事…頼む!」

「かしこまりました」


みんなは、朝起きて食堂に集まり、驚く。

目の前には、ご飯、味噌汁、焼き魚、和食な形で用意されている。

「これは…いったい…」

「驚きました⁉️」

「これ!ゴンちゃんが作ったの?」

「んな訳ないだろ…誰がお前らの為に作るんだよ」

「今日の当番は、あんたって言ってたろ!」

「優香ちゃんとみんな落ち着いて!とりあえず座ろうか!」

そして、浪川 泰子がキッチンから食堂で現れる。

「紹介する……今まで!弁当屋として弁当を作ってもらった…浪川 泰子だ!」

「よろしくお願いします!」

「これからは、ここのスノードロップでの調理員、栄養士として、働いてもらう」

「藤田さん…知ってましたか?」

「はい!昨日の夜…龍くんから突然」

「ここまで!やったんだ!お前ら食べ物を残すなよ!」

「ふん!偉そうに!」

「残すかよ!」

「ゴンちゃん…やるじゃない!」

「美味しそう!」

「ビューティフル!」

みんなは、笑顔になり、声を揃えて…

「いただきまぁーーす!」



昨日の夕方、龍は、浪川 泰子の弁当屋に行っていた時。

「菱水さん!おつり!」

「いや!いらない!」

「けど!こんなには!」

「そのかわりに頼みがある!」

「えぇ⁉️」

「弁当屋を辞めて…うちの施設で料理をしてくれないか?」

「あなたって」

「いやか?」

「まーくんにそっくりね?」

「まーくん?」

「あなた!菱水っていったら政隆くんの息子さんでしょ?」

「親父の事を知っているのか⁉️」

「まぁ!幼馴染みたいなものかな?…トンガっているところや最後に頼み事をする時に左の拳が強く握る」

「あ!」

「あなたもそうかな?あまり人を信用しないところも!」

龍は、顔を逸らす。

「図星のようだね!……まーくんは、元気かい?」

「去年亡くなった」

「そうなんだ……」

「俺が殺したって言ったら?」

「何もしないよ」

「どうして!そう平然といられる?」

「まーくんは、まーくん!あなたは、龍くん!」

「っ⁉️」

「龍くんが殺したって言っても、何でここにいるの?」

「そ、それは…」

「これからの子に対して私みたいなおばさんに相手してくれた!……こんな嬉しい事は、何年もないよ!」

「ふん!大袈裟な!」

「まだ…龍くんは、これからある!その残り時間が私に出来る事を手伝えるなんて!滅多にないですもん!」

「こんだけ!美味しい物を作れるのは、もったいない…だからこそ!浪川……泰子……さん!よろしく…頼む!」

「うん!光栄だわ!」



その後の夜、龍と藤田で話す。

「藤田…当番制って言ってたが!あれは、嘘」

「えぇ!?じゃあ!弁当は!?」

「弁当は、やめる!」

「じゃあ!どうするのですか!?」

「弁当屋である!浪川 泰子をうちの調理師として雇う」

「えぇ!?本人は!?」

「了承済みだ!」

「随分と突然ですね!」

「明日の朝から作ってもらう、経費や人件費や材料費は、何とかなるだろ」

「何とかって!まぁ!龍くんのおかげで黒字ですけど」

「今は、お金を気にするよりかは、俺らの健康面の食事だ!優先的にそっちの方がいい!弁当以外にいろいろ工夫してもらうのが!泰子の力が必要だ!」

「分かりました!…龍くんいや!オーナー…かしこまりました」



泰子は、食器を片付ける。

「手伝うよ」

「あら!オーナーさん!」

「その呼び方やめろ!」

「あら!ダメ?」

「食事のチョイスは、任せる…あんたが作った弁当は、あの優香は、大切にもって行ってお昼の時間では、食べているだろう」

「そう!…これは、龍くんの計算?」

「さぁね!……俺は、大人も信用出来ないし、人とは、関わりたくないからね」


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