第12話過去

試合終了薄氷の勝利だった。決勝は翌日だった。相手は道大三。2年前を繰り返さないため前日とは言え、徹底的に分析した。道大三は準決勝以外全試合5回コールドという荒業をやっていた。

道大三でも、徹底的に分析した。特に近藤は真剣だった。春に出場したとはいえ、ベスト4止まり昨夏は甲子園にもいけてない。昨夏も4番で3年生を押しのけて4番にいすわった。そのため、徹底的にマークを受けた。その為、本塁打はおろかヒットすらでなかった。夏以降は打撃フォームの改造に着手した。一時は打順を下げたが、打撃は確実性を増してきた。どうしても甲子園で優勝したかった。

近藤は、ドラフト1位でプロから指名を受け多額の契約金を手に入れたかった。近藤はシングルマザーだった。小5の時、父親を事故で亡くした。突然の出来事で整理がつかなかった。そんな父が好きなのが野球だった。野球を始めたとき、一番喜んでくれたのが父だった。それを見て、嬉しかった。野球がうまくなる度、父は褒めてくれた。そんな父が家族を残して亡くなった。その時の母は、泣き崩れていて見ていられなかった。中学に入るタイミングのころ母が昼夜問わず働いた。野球だけは続けさせてくれた。働いた分で新しいユニフォームとかを買ってくれた。父が亡くなった後も野球は続けた。野球がうまくなると父が褒めてくれるような気がした。中学は弱小のシニアに入った。そこで同じ地域の名門シニアとの練習試合が組まれた。30点を15点に抑えよう。これがチームの目標だった。結果は3-10で敗れた。その試合で一番活躍したのは名門シニアのメンバーでなく、近藤だった。名門シニアを見に来たスカウトがすぐさま近藤に声をかけた。近藤はスカウトが教えてくれたセレクションを受けた。そのセレクションで近藤は圧倒的な記録を残した。後日、監督から道大三から授業料免除でうちに来てくれないかと打診があったと報告を受けた。母に相談したら心よく送り出してくれた。それから近藤は、コツコツと練習と勉強を重ねる。そして、定期テストでは学年1位をとった。野球では主将を務めスランプに陥っている友達や後輩を放っておけなかった。故に信頼も厚かった。特に後輩たちからの支持が凄かった。

決勝の舞台は生田にとってやっとの思いでたどり着いた場所だった。守備練習でグラウンドに立った時は震えた。すると、スタンドから聞き慣れた声が聞こえてきた。父と母と祖父母と兄それに鈴木さんまで応援にかけつけてくれた。兄は人混みが苦手だけど鈴木さんがいてくれた事で座っていた。初めて家族で来てくれた。それを見てからか、持つボールがいつも以上に手に馴染んだ。主審から試合開始の合図を受けた。

初回、最初の打者を打ち取り2番目の打者に打ち取った当たりだったがヒットになり、走者をだし一塁を埋めた。そして、3番がバントし、初回から近藤を迎えた。

初球は外角高めのフォークでストライクを取った。2球目は内側にストレートボールとなった。3球目も内角のストレートでボール4球目も内角のストレートでボール。5球目は外側に投げた。ストレートなら見逃せばボールとなるが、内側に曲がってきた。カットボールだった。近藤はそれを見た為、急いで振った。しかし、会心のあたりにはならず。アウトとなった。

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