ベンチに戻ってきた富樫を生田と若林は迎えた。

準決勝前日、監督から準決勝と決勝は投手を2人以上使うとみんなに言った。

準決勝王海大菅斗。ここ数年強くなって全国にも出ている。選手はスカウトで全国から有望な選手を集めているらしい。

準決勝の舞台は神宮球場で多くのメディアでも扱われていた。応援も大きかった。

生田が崩れない限り7回まで投げさせるつもりと監督から言われていたので、初回から力を込めて投げた。捕手のリードも完璧だった。

しかし、遊撃手がエラーした。１人目の打者が引っ掛けて平凡なゴロを打ってしまったが、足が尋常じゃなく、速かった。それを見た遊撃手が焦って投げてしまった。ノーアウトで次の打者その初球盗塁を決められた。そして、１塁方向に打たれ打者は抑えたが、進塁を許し、１アウト３塁になった。そして、次の打者はバットを振り回していた。絶対ヒットなんか打たせるか！２ボール２ストライクそして、５球目急にバット持ち替え地面に平行に持ちボールにバットをあてた。打ったのではなく、当てた。その瞬間３塁の走者がホーム目掛けて走ってきた。スクイズだった。ノーヒットで１点取られた。その１点が重くのしかかった。３－４生田が崩れることはなかったが、１点リードされたまま後半戦を迎えた。

---彼奴ら技術も高いけど、何より野球がうまい。

富樫はうねった。ここまで3併殺。ヒットが出ないわけではないが、連打が生まれなかった。前半の5回終了時点で3併殺は少なくなかった。良い当たりを打ったが、取られてしまいアウトになった。

7回先頭の藤原がフォアボールで塁を埋めた。次は４番富樫。ホームランで逆転したかった。しかし、1ボール1ストライクの3球目富樫は腰を下げ、バットを地面と平行に持ちボールに当てた。公式戦いや、練習もしてなかった送りバントを決めた。監督の指示と思い生田は監督を見た。しかし、変わった様子も無くこの展開に驚いてる感じだった。どうしても甲子園へ行きたい執念が産んだバントだった。１アウト2塁ここで吉田を迎えた。2塁手、遊撃手を抜ける安打を放った。この打球に反応し、2塁走者の藤原が一気にホームまで走った。それと同時にボールも戻ってきた。一瞬ボールの方が早かったか。ベンチから見たらそう見えた。でも、ほぼ同時だ。

---セーフ！

主審の声が響いた。外野から好返球があったのに。捕手は球を取り損ねていた。すかさず、吉田は次の塁を狙ったが、アウトになった。そして、6番もアウトになり、生田の投球になった。ヒットを打たれたものの無失点に抑え交代となった。その後お互いに無得点になり延長13回。先に２点取り菅斗の攻撃１・２番をアウトに取り３番に長打を打たれた。続く４番のヒットで１人帰ってきた。これで１点差。死んだと思われた菅斗が息を吹き返した。続く５番もヒットで２アウト１・３塁になった。６番は四球で２アウト満塁になった。７番はフルカウントになった。耳の良い打球音が響いた。富樫はすぐさまマスクを外し立上がり打球を見送った。打球はセンター方向に伸びた。ホームラン・ヒットでも負けてしまう。万事休すか。と、思われたとき吉田がキャッチしていた。