第16話 終


 高校に復学したときはニュースの影響でよく噂をされていたけれど、少し経つと興味から話しかけてくれる奴もできて、一年も経つとその話をする人もいなくなっていた。


 去年よりも少し肌寒さを感じながら、塾からの帰り道、秋葉原ダンジョンに塾仲間と行くことになった。

 もちろん隠しエリアには行かないし、そもそも行く方法もない。

 適当にアトラクション的に遊園地みたいに程よく遊んで、手軽なストレス解消方法としてダンジョンは消費されていった。

 テレビでは相変わらずシンザンが未踏破ダンジョンを攻略しているし、父親は相変わらず毎朝仕事でダンジョンへ仕事で行っている。

 俺はと言えば、あれから付き合い以外でダンジョンに行くことはなくなっていた。学力を取り戻すのに必死だったし、興味も薄れていたからだ。


 藤沢さんとは連絡が取れていない。あれから一度だけメッセージを送ったけれど、既読すら付かずその関係性は終わりを告げた。

 嫌われたから切られたというよりは、満期終了といった感があるのかもしれない。知らないけど。


 ダンジョンを出て、ファストフード店でハンバーガーを食べて、どこの大学に行きたいだとか、どの女の子が好きだとか語って、日が陰ってくるとカラオケにも行く。

 コンビニの有線で流れているような聞き飽きた曲を歌って、帰り際、のどが痛いから飲み物が欲しくなって、コンビニに一人で寄ることにした。


 秋葉原の道行く人はオタクみたいな人は意外にも少なくて、オタクグッズ目当てなのかダンジョン目当てなのか外国人もそれなりにいて、俺みたいな学生服を着ている人も多くいた。


 その中に。


 あのファッションをしている人がいた。地雷系ファッションの女の子だ。

 向こう側から歩いてくるその女の子は藤沢さんに似ていた。


 目が合って、俺は立ち止まる。

 でも女の子はそのまま俺の横を通り過ぎて雑踏に消えていく。


 俺はコンビニでエナジードリンクを買う。

 一度も飲んだことがなかったエナジードリンクは、酸っぱくて、炭酸が喉を刺激して、やがて消えていった。



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地雷系女子と推しダンジョン活動 猫が洞 @nekogahoradoori

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