31話 国連未承認のコロナ国
尚も食い下がる
「防空識別圏の侵害や領海侵犯など、コロナ国の犯行だと分かっているのに何故対策を講じないのですか?」
「嘗ては惑星コロナ星の方からわざわざ犯行声明を公開してますから、令和戦争が終わって、コロナ星人が国連未承認の国家を作り上げ、世界の覇権を狙う危険国となっています。」
「そんな国がコロナウイルスを撒き散らした事は事実であります!」
大きく頷いた勅使下向忠直内閣総理大臣は篠山の眼を見ず約45%俯き机上の書類に眼を通していた。
「それと総理、このコロナ禍に男性育児休暇を取得し難い社会通念になっておりますが・・・。コロナに乗じて男性の育児休暇取得を推奨しては如何かと存じますが、どうですかな総理?」改心のライナーだった!
刹那、顔を上げた総理がオオ!という表情を崩さず長々と篠山の顔面を見詰め、やがて切込泰一(きりこみたいいち)官房長官が代弁を取った。
「今会議のカテゴリーはご承知の筈ですが、学術会議のコンテンツを大きく逸脱致しておりここは国会でもないし国会議員でもないあなたが草案を提出するのは如何なものか?笹篠山氏在住の選挙区に衆院の事務所がありますからご意見・ご相談を受け付けてございますどうかご随意に・・・。」軽くあしらわれた。論外だった。
唇を噛んで垂直に議席へ腰を降ろした篠山は悔しさの余り作った握り拳を開いては掌の皺を見、拳を握っては開いたり、意味の無い所作を繰り返していた。
「願わくば花の下に春死なん如月の望月の頃・・・。」心の中で一句、読み上げた・・・。
篠山の心情は為らぬなら為るまで続ける蟻の一穴岩をも通す。
粘着性の性格だった故のコロナワクチン開発成功の一端だったに違いない。
ザワザワと思い思いのコメントを隣近所のメンバーと語り合う。時刻は正午を大幅に過ぎていた。
もはや学術会議の大型モニターには「コロナワクチンと国際政治を考える」と、タイトルが映し出されてはいるが本題には至らず閉会の模様さえ表れ出していた。
上手くいくと誰もが思っていた。スーパーしらたまの副反応は摘除できた筈だった。
ワクチンを製剤化する段階でのプロトコルが誰かの手によって書き換えられたに違いない! 今更それを言えば空疎な事をのたまう酩酊した老人とあしらわれてしまう。
どうしたものか・・・。会場の外では助手の大原輝(おおはらあきら)が、その妻の大原礼子(おおはられいこ)の位牌を持ち、専属ナースの上善寺直美(じょうぜんじなおみ)達が帰りを待っている状態。
しかし今ここでは総理の救援投手のような官房長官、切込泰一が総理の味方として饒舌を奮っている。いつになく孤独だった。
あの時は、成功が見えていた。四六時中誰彼となく横を向けば会話が出来た。同じ目標に向かって走っていた時、囲む人が頼もしかった。しかし、今では孤軍奮闘叩きのめされるかも知れない相手と渡り合っている。
ゴールを見失えばこの日本国の行方はどうなるものか計り知れない。
マサに国際政治だ! 日本国を欲する国に隙を見せては為らない。
コロナ国は強かで、かなりのハイスペックだ。
刹那、あろう事が過ぎった!「まさか・・・。」出来る筈がない!篠山は過ぎった事案をかぶりを降り、一心に取り消しに掛かっていた。
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