第30話 対岸の火事

全部知った様な国民が騒ぐ! 

ネットの憶測に過ぎなかったが、国民の約三分の一が国産しらたまを拒否していた。

 勅使下向内閣総理大臣への断崖はまだまだ続いていた。

「篠山副会長はご自分の作られたワクチンに没作があると仰有るのですかね?」眉を寄せて縦皺を作り珍しくも篠山の攻撃を鉄板の如く跳ね返していた。

「いいえ、そうではなく!」一呼吸置いて反撃の機会を伺っていた。

「ワクチンの全てはハイブリッドだと言ってます。」会場内はザワついていた。

 ヒソヒソと学術会議の関連メンバーは、目の当たりにした光景を予測すら大外れだった。

まるで対岸の火事を見ている心持の関連会員は命を削ってはいなかった。

「そもそもあなたが作ったワクチンは人体にある白血球の内の好中球を強化し、侵入したウィルスを迎撃するものだった訳です。しかし人の血液を例え白血球でも注入すれば凝固反応が起きてしまう! 既にあなたはそれを見越してあなたが検体になり、臨床実験を実施して、凝固反応は無いものと照明出来た。

 その事について私は篠山教授、いや副会長を敬っております。愛のしらちたま(白血球)は地球に愛を齎しパンデミックの恐怖から開放されて久しい・・・。」

 篠山教授を見据え勅使下向は、何時になく心の篭った答弁を振り撒いていた。

「1000万分の1の可能性で凝固反応が出た訳なんです。その時は篠山さん、運が良かったかもしれない・・・。それから厚労省に入った報告では、・・・。」混沌とした後の祭りは前進せず、後退をも余儀なくしようとしていた。厚労省に入った情報では兵庫県のクロマメ病院にスギ花粉が人の鼻粘膜に粘着し、やがて血中に溶け込み血管内に滞留した花粉が脳梗塞を引き起こす事案を理学療法士の野際夭逝(のぎわようせい)が発見し、医局部長の金田一を介して厚労省に報告された事案をを取り上げ、「この事案を承認しなければ政府に上がって来ない旨を問い質された篠山は、言葉に詰まっていた。タイムラグがあったのは確かだった。

 合衆国のナサ保険局のニトロ局長に接見していたそのインターバルに執り行われた報告書承認を報告事案を斜め読みしてサインをした事実は確かにあった。忙しいから?世界に功績を残したから? だから斜め読みしても良いと?自分自身の瑕疵、過信! ラップでも歌

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