第11話 伸展
野際は感づいていた。
糸状の菌って?その大きさは? 人の身体の粘膜から血管に進入し脳血管障害を引き起こしたかも・・・。エビデンスは無かった。強くは言えなかった。
「大原さんお待たせしました。」
関連性を逡巡していたにも関わらずリハビリを促す野際は悦に入っていた。
一人の患者に対して二通りの術を為す。千手観音の様に多重の所作wo施すセラピストに憧れ、リハビリマシンに向う患者をさておき別の患者の歩容を診ながらリハビリベッドで、患者のアプローチを施す。去年はマシンの故障と患者の転倒が同時に起きてアタフタしているものの咽喉もと過ぎれば熱さ忘れるで、己のエラーを棚上げして、そのリベンジをしようとしていた・・・。
破天荒は医療の世界に受け入れられなかったが・・・。
人体の粘膜から糸状の菌を採取したら、採取出来たらそれがエビデンスとなる。
「鼻からインフルエンザ検査? 良く考えましたね野際さん? 僕も協力させて下さいこれが立証されれば学会が大騒ぎだ。」
「脳卒中の予防や後遺症の改善に繋がるかも知れない!」顔面が艶々と輝く部長の金田一が、仰け反るくらいの驚きを隠さなかったのは、彼に多大なる期待を掛けていたからだった。
部長という強い見方を得た野際も胸がワクワクしていたが、今の優先事項は、リハビリ訓練の継続、歩ける人を導く事と言い聞かせていた。
「尻沢さん。」何よヘンタイ!と言う様な目付きで野際を顧みた。
いや、睨んだ!
「平行棒へ移りましょう。」
「今度は左足の片足立ちです。」出来る訳ないじゃない。
と、ブツブツ言い、平行棒を右手で持ち立った。
「尻沢さん。イチイチ文句言うのを止めてくれまんせんか?」繁々と尻沢エリカを睨み
真剣な眼差しで尻沢を診る野際は何時に無く蒼白の面持ちだつたが、「な、何よアナタ!」
たじろぐ尻沢。
「僕は理学療法士ですよ尻沢さん、もっと前向きになってくださいね?」
「あなたは歩けるんだから!」尖らせた唇は昨日の様に斟酌はしないと、決意が出来ていた証拠だった。
「車椅子から離れて立って下さい!」車椅子を尻沢から10m程度引き離した!
「僕は貴方の手助けをする為にここに居るんですよ?」容赦はしないと顔に書いていた。
「立ちたくないなら病室のベッドに寝てればいいです!」でもそれを貴方はしなかった!
「そうですよね尻沢さん?」
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