第10話 桜守の名刺
大原へローイングを50回を促し丁寧に挨拶をして、二人は施設通用出入り口から東の大木、所謂老齢の櫻の木へと出て行く背中を見送り、「篠山先生はここまで仕事に来るのか・・・。」と感心していた。
「櫻の病気は黒岡にまで及んでいますね。古市(ふるいち)や県守(あがたもり)に広がっていましたからまさかとは思ったんですがねえ・・・。」マサに溜息交じりだったが、「そうですか原因は何ですか?」
強張った表情は、脳血管障害との櫻の病気の関連性を薄々感じてはいたが、エビデンスが欲しかっただけに篠山の次の言葉を待っていた。
「後遺症ですよ。」野際の顔をマジマジと眺め次の言葉を言おうとしたとき「野際先生、金田一部長がお呼びです。」医療事務スタッフが声を掛けてそれに促される様に篠山と一緒に部長室へ向かった。部長室はスピーチセラピスト(言語聴覚療法士)のリハビリ室の隣室にある。 約50m無人に近い広いリハビリ会場を縦断する形で野際と、篠山は横に並んで歩いて入室した。、
「四方八方に広がっている櫻の枝葉にも糸状の菌が着いていますね。」
篠山らしく粗方の所見を述べ、前置きとした。
「スギ花粉の飛散によって櫻の被害は留まる所を知りません。他に何か関連性のある障害について、お気付きの点がおありでしたら連絡を下さい。」と言って、桜守の名刺を渡した。
頭を掻き掻き、後先にな
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