第142話 鈴虫を買う男

結婚してるのに

わかっちゃいるんだ

なのに、彼女に惹かれてる


妻に不満なんかありぁしないんだ


夜店の鈴虫をねだられた

ふたつ買う

妻への後ろめたさがそうさせる


彼女が嫌な顔してるのはわかってるさ

気付かない振りをする



逢瀬のあとは必ずお風呂へ直行

女の嗅覚は鋭い

違うボディソープの匂いを消し去るんだ



出張だと泊まった翌日

帰ってみたら

鈴虫の籠はあるけど鈴虫はいなかった


妻は逃げちゃったと言った

違うよな


ごめん、だけど、どちらも選べないんだ


君たちから愛想をつかされるまでは

これが居心地がいいから


卑怯者だな、俺



鈴虫のメスは交尾したら、タンパク質欲しさにオスを食べちゃいます。

祖母が育ててたから、食べ残しのオスの足とか

落ちてました。

さてさて、このオスはどうなるのでしょうね。




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