第143話 秋霖

こんな夜ふけの桟橋に

ひとりの女が立っている


長雨続きなのに傘も持たずに


さっきから馬鹿みたいに

ライターでタバコに火をつけようと

ジッポーをジャジャと回すけど

つきゃしないだろうに


それより、その化粧ひどいもんだよ

マスカラが落ちて真っ黒な雫を垂らしてる

つけまつげがずり落ちて頬のところに

鎮座マシマシてる


薄っぺらいワンピースはびしょ濡れで

黒いブラジャーが丸分かり


惨めだよ、まったく


いい加減に待つのはおよしよ

あんたの待ち人はとっくに

汽車でこの港町を出て行ったさ


季節が変わるとね

気持ちも変わるってもんさ



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