幕間:記録
関係者証言
あの、刑事課……の宮元さん、いま、あっ、おられますか。
あっ、あっはい。はい、はい、そうです。
いえ、いえ。そんな。俺も、あっ僕…僕も早く見つかってほしいんで。あっ、いいですか? すんません。あんま慣れてなくて。いえ。
じゃああの、今日はよろしくお願いします。
はい。
ありがとうございます、失礼します。あっいや大丈夫です、自分のペットボトル持ってますんで、おかまいなく。
いえいえ。じゃあ早速、えーとどこから話したらいいんだろ。
あの、
それが中学上がってからなんか、なんだろ。親とちょっとうまくいってなかったのかな。それでちょっと、尖った感じになっちゃって。っていっても、中坊なんてまあ、誰でも親とちょっと。アレな感じになるじゃないですか。俺もアレな感じになってたし。それで意気投合して、でまあ、幼なじみだし。ぶっちゃけ付き合ってたんですよ。まあなんか、いやあの、意外って言われんすけど、その頃はまだ可愛いもんでしたけど。
すんませんこんな話。関係ないですよね。すんませんほんと。ごめっ、あ、ありがとうございます。いいすか話しても。はい、はい。はい。誰かに話したくて。すんません。はい。大丈夫です。
それで、俺と結璃、高校上がってからも続いてて。なるべく一緒にいるようにしてたんですけど。
俺んちは全然、もうその頃にはさすがにまあ観念したっていうか。母親とも仲直りして。父親ともまあ、たまにサッカー観に行ったり、将来の話とかもできるようになって。兄貴は就職して家出てたから、逆にまあ。もう喧嘩してる場合じゃないっていうか。
だから俺はけっこう安定してたんですけど、結璃そうじゃなかったみたいで。
結璃、その頃になるとなんか、全部は話してくれなくなっちゃって。信頼してくれてる感じはずっとあったんですけど。でもなんか。ますますなんだろ、変な意味に取らないでほしいんですけど、ちょっと陰のあるエロい美人、みたいになっちゃってたんすよ。
だから男子にはモテてましたよ。結璃はあんま嬉しくなかったみたいだけど。俺は幼なじみだからそこまで抵抗感なかったみたいだけど、もしかしたら男子自体あんま好きじゃなかったのかも。表面上は愛想良くしてたけど、俺がカレシだからとかじゃなくて、もっと根本的なところでなんか、壁作ってる感じしてました。
……でもまあ、バカな男子ってそんなんお構いなしじゃないですか。部活の時とかヤバくて、プールの外に何人かわざわざ見物しに来てて、女子部員がそれにめっちゃ怒って、結璃の盾になったりしてたらしいっす。女子部員の子から聞きました。そりゃ穏やかじゃなかったっすよ。カレシ俺なのに。見んなよみたいな。
とにかく、なんか、一部で言われてるような。あんなん。誰でもとか男漁りとか、そんなん絶対絶対ないです。マジでありえないっす。
てか、ていうか俺は、そういうのより、なんていうか昔よく遊んだ結璃に戻ってほしくて。ほんとは結璃、もっとバカみたいに大口開けて笑うやつなんです。おばあちゃんっ子で、こういう小動物とかめっちゃ好きで、給食のカレーが一番好きで、八宝菜と怖い話が嫌いで、運動できて、けっこう口が悪くて。
結璃。
結璃、どこ行っちゃったんでしょうか。
ホントお願いします。俺っ……すんません。すんません俺、悔しぐって。まだ借りたマンガも返せてないし。映画化するから観に行こうって話してたのに、公開期間終わっ、もう終わっちゃっでっ、結璃いないのに、結璃見つかってないのに、世の中当たり前みたいにしてて、フツーに皆過ごして、意味わかんねえ。ふざけんなって俺。すみま、すんません。会いたいっす。すんません。
刑事さん、俺、何でも協力するんで。絶対結璃を見つけてください。お願いします。
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