第19話 19

 どうしてよいのか分からずに、呆然と立ち尽くしていると、リビングのドアが開く音がした。お母さん、もう戻ってきたのか。そう思い、ドアへと視線を向けると、そこには私服姿の響くんが立っていた。

 ちょっと! ものすごくカッコいいですよ! 制服姿も良かったけど、私服姿も最高ですよ! 王子様スマイルを浮かべる響くんに向かって、私はふらふらと足を踏み出した。

「鈴、これよ」

 お母さんの声にハッと我に返り、慌てて響くんから離れる。

「あら、お邪魔しちゃった?」

 響くんと私を交互に見ながら、お母さんはアルバムを差し出した。私はそれを受け取り、ソファーに座った。すぐに響くんが私の横に座った。なんでそんなに身体をくっ付けるの?

 響くんが身体をくっ付けてくるから、少し横にずれたんだけど、響くんもずれてまたくっ付いてくる……。何度か繰り返していたら、ソファーの肘掛にぶつかってしまい、それ以上は動くことが出来なくなってしまった。

 響くんと肘掛に挟まれて狭いけど、どけてって言っても、絶対にどけてくれないよね。仕方がないので、諦めてアルバムを開いた。

 そこには、どの写真にも並んで写っている男の子と女の子の姿があった。仲良く手を繋いでるのに、女の子は泣いていて、男の子はいたずらっぽい笑顔を浮かべている。この女の子は、私だよね? なんでどの写真も泣いてるんだろ? それよりも、この男の子は誰? まったく記憶にないんだけど?

「懐かしい」

 ぴったりとくっ付いている響くんが、王子様スマイルでそう言った。

 えぇー? もしかしてこの男の子って響くんなの? 思わずじっくりと写真の男の子を見る。そういえば、似てる気がする。気がするんだけど、覚えてないから、響くんかどうか、やっぱり分かんない。本当に私、響くんと一緒にいたの?

「晩ご飯の支度してるから、それ見て思い出しなさい」

 お母さんはそう言うと、キッチンへと行ってしまった。響くんと二人だけど、すぐそこがキッチンだし、ま、いいか。

「鈴」

「うひゃ」

 耳元に、いきなり響くんの声が響いて、思わず変な声を出してしまった。すぐ目の前に、響くの顔があって、また声が出そうになった瞬間、響くんの唇で口を塞がれてしまい、声が出なかった。

 ちょっと! すぐそこにお母さんがいるのに、なんでこんなことするの! 響くんの唇から逃れようと抵抗してみるけど、押さえつけられていて動けない。

 響くんの唇が離れて、文句を言おうとしたら、今度は指で口を塞がれた。

「見られてもいいなら、声をだせ」

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