第12話 12

 あ、あれ? 考えているうちに、お母さんと響くんの姿が消えてる。というか、玄関のドアが閉まってる……。どういうこと?

 一人取り残された私は慌ててドアを開けた。そこにはたぶん響くんだと思われる靴があった。もしかしなくても、私は放置なんですか? お母さん、娘よりもそんな訳の分からない人の方が良いんですか? そりゃ……、顔は良いしけど……。

 考えても分かんないし、なんかもう疲れのせいかどうでも良くなっちゃったし、とりあえず自分の部屋へ行こう……。響くんとお母さんには、後で聞けばいいか……。

 自分の部屋の前にたどり着き、ドアを開けたとたん、思わずそのドアを閉めてしまった。えーっと、なんで響くんが私の部屋にいるんですか? しかも、ベッドの上に座ってくつろいでいたんですが、何かの見間違いですか?

 そうだよね。ほら! 私、今日はとっても疲れているから幻覚だよね!

 そう思い、深呼吸をしてから、もう一度ゆっくりとドアを開けてみた。

 ……やっぱりいるよ……。幻覚じゃなかったよ……。

 とりあえず、そっと部屋に入ると隅っこに座り込んだ。なんで自分の部屋なのに、こんな隅っこに座りこまなきゃいけないの? 変じゃない?

 響くんは、ジュースを飲みながら、楽しそうにこっちを見てる。お母さん、虫歯になるからとかなんとか言って、私には飲ませてくれないのに……。

 気まずい雰囲気を破るかのようにいきなり部屋のドアが開くと、隙間からお母さんが顔を出した。

「おばさん、お買い物に行ってくるわね」

 え? 今なんて?

「二時間ぐらい帰ってこないから、響くん宜しくね!」

「ちょっ、お母さん! 私も行く!」

 急いでそう訴えたけど、無情にもドアが閉められてしまった。なんで? お母さん、こんな訳の分からない人と二人っきりだなんて、あなたは娘がかわいくないんですか? 

 閉じられたドアに向かって、ガックリと肩を落としていると、ベッドの方から音が聞こえた。見てみると、響くんが立ち上がって制服の上着を脱ぎだしていた。なんで脱ぐんですかー!? 春とはいえ、まだ寒いんだから、脱ぐ必要なんてないはずでしょー!? 

「さて」

 脱いだ上着を放り投げると、響くんはそう言って、ゆっくりと近づいてくる。そんなに広い部屋じゃないんだから、わざわざ近づかなくてもいいのに、何でこっちに来るんですか?

 思わず後退るんだけど、そういえば私、隅っこに座ってた。私のバカバカバカ! なんでこんな逃げ場のない所に座るのよ!

「続きをするか」

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