第10話 10
学校が遠ざかり生徒の姿が見えなくなると、響くんは私に向かって鞄を突き出した。なんでか鞄が二つなんですよ。これって、響くんのも持てってこと?
響くんが手を離してくれないので、片手で鞄を二つも持つ事になり大変なんだけど……。
あぁ、でもそんなことよりも重大な問題が目の前にあるんだった。私は、いつまで響くんと一緒にいればいいのでしょうか? 気のせいでなかったら、なんだか私の自宅に近づいてるんだけど、どういうこと?
これからどうするのか聞きたいんだけど、響くんの雰囲気が魔王様に変わっちゃってるから、聞きにくいよぅ……。
うぅ、どうしよう……。もうすぐ家に着いちゃうよ? それともあれですか? 私の家に連れてけってことなの? いやー、そんなの絶対にいやー!
だってだって、いきなりキスしちゃう人ですよ? 身体が凄いとか自慢しちゃう人ですよ? そういえば、放課後がどうとか言ってたー! もしかして私、何かされちゃうの?
悩んでる私を横目に、響くんが見覚えのありすぎるマンションの前で足を止めた。えぇー! 何で私の家を知ってるんですかー?
ダメ! ダメよ! 私……。オートロックを絶対に開けちゃダメなのよ! そう自分に言い聞かせた直後、マンションから人が出てきて、あっさりとオートロックのドアが開いてしまった。
すぐさま、私の手を引いて響くんは歩き出した。ま、まぁ、これは仕方がないよね。部屋さえ教えなきゃ大丈夫!
あぁ……。なのになんで響くんは迷いもせずにエレベータに向かうんですか? 普通は、家どこ? とか聞かないですか? あー、でも……、王子様スマイルで聞かれたりしたら喜んで案内してしまいそうなので、それはそれで聞かないで欲しいかも……。
そんな事を考えていると響くんの王子様スマイルを思い出してしまい、思わず顔がにやけてしまった……。んっ? なんだか視線を感じるんだけど? と、ふと響くんを見てみたら意地悪そうな笑みを浮かべて私を見てた。えー! もしかして、今の見られてたの?
うわーん1 超! 恥ずかしいですよ! と一人恥ずかしさに身もだえていると、いきなり手を引かれて到着したエレベーターの中に引きずり込まれてしまった。響くんは、何の迷いもなく十一階のボタンを押す。
だから、なんでー? なんで私の家の階数を知ってるんですか? もしかして、響くんはエスパーとかいうやつですか? 私の事は全部バレバレとかなんですか?
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