第8話 8
とびっきりの王子様スマイルで見つめられると、もう何もかも好きにしてください状態になっちゃいますよ。
「はい。放課後ですね」
と思わず返事しちゃったけど……。あれ? 私、なんかまずいんじゃなかったっけ?
「じゃあ、後でね」
あぁ、その笑顔でそんなこと言われた日には、もうどこまでも付いて行きます。好きにしてください。
思いっきり王子様な響くんに見蕩れていると、極上の笑みを返してくれた。やっぱり王子様はいいよね~。
さりげなく床に落ちているコロッケパンを拾い上げた響くんは、それを私に手渡してくれた。こんなところもやっぱり王子様だ。とか響くんの王子様に浸っていると、爽やかな微笑みを残し、軽く振られた手と共に目の前から去っていってしまった……。あぁ、もっと王子様を堪能したかった……。
響くんが拾ってくれたコロッケパンを名残惜しそうに見つめていると、ふと思い出したことがあって、私はドアに向かってダッシュした。図書委員さん? の注意が聞こえた時には既に廊下に出ていたというぐらい、思いっきり走ってます。
今すぐ行かなきゃ、ものすごく後悔することになる! そう思い、私はひたすら走った。早く行かないと、空腹のまま放課後まで過ごさないとならなくなっちゃう! 私は手の中のコロッケパンを握り締めると、再び売店へと向かって走り続けた。
お腹減ったよぉ。
結局、売店には『納豆クリームきな粉パン』とかいうのしか残っていなかった……。誰ですか、そんな怪しいパンを作ったのは……。
さすがにそれを食べる勇気はなかったので、お昼ご飯抜きという聞くも涙、語るも涙だったわけですよ。
早く帰って、冷蔵庫でも漁ろう……。
ホームルームが終わり、色々と鞄に突っ込んでいると目の前に誰かが立った。見上げると、素敵な王子様スマイルを浮かべた響くんが立っていた。
「鈴、帰ろうか」
「え?」
帰る? そりゃ、お腹すいてるから言われなくてもさっさと帰るよ。そう心の中で呟きながら、黙々と鞄への詰め込み作業を続けた。だって、なんか喋ると酷いことになりそうなんだもん。
鞄への詰め込みが終わった途端、響くんがいきなり私の手を掴んだ。えぇー! 何々? いきなり何なの? なんか周りが騒がしいんだけど、なんで? って、そりゃ王子様と手なんか繋いでたら、騒がれるに決まってるじゃん……。
響くんが、女子たちに詰め寄られてる。私との関係を聞かれてるみたいだけど、どんすんだろ?
「僕たち、付き合ってます」
これ以上ないくらい素敵な笑顔で、響くんが爽やかに答えた。
「ええー?」
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