第3話 3
先生は私の声が聞こえていたのかいなかったのか、何事もなかったかのように教壇に立った。そしてすぐに出欠を取り始める。
次々と名前が呼ばれていく中、"西園寺"と先生が呼んだところで、王子様が返事をした。
そっか、西園寺っていうのか。名字まで王子様っぽいんだ。名前はなんていうんだろう? やっぱり、ルイとかアンリとか、王子様みたいな名前かなぁ。
そんなことを考えていると、また王子様と視線があっちゃった。なんだろう? 今度は指差してるんだけど、私を指してるのかな?
「よーしーの!」
耳元で先生の大きな声が響いた。なんなの、いったい……。横を見ると先生が仁王立ちで立っている。
「自分の名前も分からないのか?」
え? もしかして呼ばれてたの? そういえば出欠を取ってるところだった。
「は、はい、すみません」
なんか今日は変……。王子様に会ってから、頭の中は王子様のことでいっぱい……。
出欠を取り終わった先生は、授業を始めた。眠くなるぐらいに退屈なんだけど、四時間目の授業はお腹が空いてるから、眠れないよ。早く終わらないかな。
あれ? 王子様の後姿を眺めていたら、チャイムが鳴ってるよ。いつのまに授業が終わったんだろう? ま、考えていても仕方がないよね。とりあえず、お昼ごはんだー!
私は、チャイムが鳴り終わると同時に立ち上がり、教室の出入り口を目指してダッシュした。もちろん、ちょっとでも早く購買に行くため、コロッケパンをゲットするため!
購買は一階にあって、三階に教室がある一年生は超不利なんだよね。まあ、有り余る若さで乗り切れってことなのかもしれないけど。
とにかく力の限りダッシュ!
階段を駆け下り、周りのライバル達に負けじと走り続けて購買の前にたどり着くと、そこはもう戦場になっていた。ここで躊躇している暇なんか無い! 私は意を決して戦場に飛び込んだ。
「おばちゃん! コロッケパン一つ!」
人ごみの中、おばちゃんが差し出したコロッケパンとお金を交換出来た。今日もなんとか目当ての物をゲット出来て大満足。毎度の事ながら、私も良くやるよ。
さて次は、図書室だよね。本を読みながらコレを食べるのが、いいんだよね。本当は、飲食物の持ち込みは禁止なんだけど、内緒ね!
何度も迷いながら、なんとか図書室に到着……。なんか高校って中学と違って広いし大きいよね……。まぁ、まだ実質二日間しか登校していない私が覚えてないのは当たり前だよね。そう自分自身に言い聞かせながら、そーっと図書室の中に入り込む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます