憑依転生

チュンチュンと言う雀の鳴き声が微かに聞こえ、意識が徐々に鮮明になっていく。


そして目を開くとカーテンから差し込む眩しい光、目の前には天井があった。


「あ、あれ?と、トラックは?」


あれ、俺こんな声してたか?

まぁ、いいとりあえず起きるか


身体を起こしてみるとそこには異様な光景が広がっていた。


自分の部屋にはないはずのタバコの箱と吸殻、ライターの他に酒、三十キロもあるダンベル


そして家具も家具の配置も違う。


「ここは、どこだ……?」


すると机の上にある鏡を見ると、そこには長い金髪に青い目の男の人がベットの上に座っていた。


「いやいや、待て待て待て…」


あの鏡になんで俺の姿が映ってないんだ?しかもイケメンな外国人が映ってるし、


「まさか……」


俺はすぐさま勢い良くベットから飛び降りた。


「痛ってぇぇぇえ!!」


恥ずかしながら俺は慌て過ぎてベットから落ちて、頭を打ってしまった


取り敢えず頭を押えながら立ち上がり


机の上にある鏡の元まで歩き、鏡を顔の前に持つ。


そこには俺では無い男の人が映っていた。

目を擦っても変わらず知らない男の顔が映っていた


「ははは…いやいや、もしかしたら夢かもしれない……」


俺はほっぺを指で摘み、思いっきり引っ張​──


「痛っ!?」


痛みを感じるだと!?夢ではなくこれは現実……まさかこれは……!!


「転生!?」


すると俺は目の前に鏡を近ずけ、顔を触る


「まさか、本当にあるなんて!!しかもイケメンじゃん!!何この顔立ちの良さ!!うわ、二重だし、目の色めっちゃ綺麗!!」


そして今の自分の顔を堪能すること数分。

俺はある事を思い出す。


「そういえば……あのタバコと酒は一体……」


床に転がるタバコと酒を見たその瞬間​────


「うぐっ!?」


頭が痛てぇ……!!


あまりの痛さに頭を抑えながら、俺は床に蹲る。


その瞬間、脳内に映像のような物が流れ込んでくる。


その映像には今の俺の姿の奴が殴り合いの喧嘩をしている。そして教室らしき場所でスーツ姿中年男性と口喧嘩をしていた、おそらく教師だろう。


そして次に、路地裏ではピアスを開け、髪を明るくした連中と飲酒、喫煙そして、気弱そうな男性をターゲットにカツアゲまでしていた。


「まさかこれは……この体の男の記憶?」


だとしたら俺……


不良ヤンキーに転生してしまったのか!?」


その瞬間俺の体からは力が抜け、手から鏡は落ちてパリンと音を立てながら割れると共に俺は膝から崩れ落ち、四つん這いとなった。


「嘘だろ…この男イケメンの癖に不良なのかよ……学校でも同じような事をしてるし……それに女子からめっちゃ嫌われてそうだし…」


終わった……入学式初日に死んで、転生してイケメンに生まれ変わったと思ったら不良で……これじゃあ青春ラブコメのような学園生活を送れないじゃないか……


「いいや、待てよ…」


なら、今の体は俺が憑依していて、不良の人格はおそらくもう消滅している。なら改心した振りをすれば行けるのかも?だが、どうする。

それじゃ情報が足りないじゃないか。


そうだ、学生証かスマホを見れば!!


それからの俺の行動は早かった。


まずベットからその不良の男のスマホを発見した。次に肩に背負う学校指定のショルダーバックを発見し、中を漁ると、学生証を発見した。


名前は『白波瀬しらはせ 龍斗りゅうと』と言うらしい。


「かっこいい名前だなぁ。俺の名前とは大違いだ」


と、思いながら、学生証を見ていくと、とんでもない事が書かれていた。


「おいおいおい、待て待て待て……こいつの通う学校……」


そこには『白銀学園』という学校名が書かれていた。


それは俺が受験し合格した学校だった。


「は!?」


思わず変な声が出た。まさか転生先の男の通う学校が天条学校なんて……

という事はこいつ、頭良かったのか?


そして生年月日は俺の1つ年上の2006年生まれ、つまり高校2年生だ。


そんな事実を知った瞬間、再び俺は膝から崩れ落ちた


「くそぉ……人生で1度きりの高校の入学式がぁ……転生したから1度きりではないけどぉ…」


俺は人生における1つのイベントに参加出来なくて酷くショックを受けた。


「そういえば、俺が死んでから何日立ってるんだ?」


そう思い、俺はスマホを手に取る。

そこには四月六日(金)九時二十三分と記載されていた。


「死んでからまだ、一時間も経っていないだと!?」


いくらなんでも早すぎる転生にすごく驚いた


という事はなんだ?こいつ入学式の登校サボったのか……は?


「やばい初日遅刻はやばいって!!」


俺は急いで龍斗のカバンを漁り、春休み明けの日程を確認する。


紙を見ると、どうやら生徒会と風紀委員と一部の生徒以外は登校しないでいいらしい。


「良かったぁ……危うく人生初の遅刻をする所だった……いいや、この体じゃ既にめっちゃ遅刻してそうだな…今の俺不良だし…」


絶対遅刻どころか学校もサボってるだろうな……内申とかどうしよう……


「どうしよう……掃除でもするか。」


とりあえず俺は龍斗の部屋を掃除することにした。


だが、幸いにも部屋は結構綺麗で整っていたので、タバコの吸殻と酒だけを片付けられた。


とりあえず余ってるタバコは後でちゃんと処理するとして……


今日1日中暇だし、下の階にでも行くか。

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