第73話:姫とドラゴン
「ところで、護衛がいないって大丈夫?」
シオンさんが姫様にタメ口で話してるけど大丈夫?
「問題ないの、私には姉が2人居るの」
シオンさんが頭を抱えてる。
「あちゃー。黙って出てきたの?」
姫様がこくりと頷く。
もしかして、王都では今姫様が行方不明?
大問題なんじゃないの?
そして姫様はここに居る。
姫様を誘拐した犯人候補の筆頭と言うことに?
まずい、早く姫様を王都に帰さないと。
そもそも、王都からここまで来るのに時間がかかるよね?
前に王都に行ったときは7日かかったんだし。
ってことは、すでに7日間も姫様は行方不明?
終わった。色々と・・・
私が絶望に包まれて膝から崩れていると、
リズが背中をさすってくれた。
「どうしたのじゃ?我が主よ?腹でも痛いのかや?」
あなたを見に姫様が抜け出してきたのです。
「黒いけど、ドラゴンじゃないの。本物はどこなの?」
どうやら姫様にはリズが普通のおばあさんに見えるらしい。
ドラゴンじゃなかったとしてもとんでもないおばあさんだと思うけど。
めんどくさいからダンジョンに行って龍の姿を見せてあげてよ。
満足したらおうちに帰ってくれるかもしれないし。
そういうわけで、久しぶりのダンジョンです。
封印の間というか、リズが閉じ込められていた部屋まで行かないで、
ダンジョンに入ってすぐの広間に来ました。
リズは服を脱ぐと同時に巨大な龍の姿に戻りました。
うん、姫様も納得してくれたみたいだし、これでおうちに帰ってくれるかな?
とてとて、ぺちぺち。
「おお、本物なの。幻術じゃないの」
姫様がリズをなで回していると、ジブリールさんがリズの前に跪く。
「偉大なる龍神の王にお目にかかれたこと光栄の極み!」
ジブリールさんはうっとりとした顔でリズを眺めている。
「偉大なる龍神の王エベレストよ、お側に仕えることをお許しください」
エベレストじゃなくて、エリザベートだよ?
名前間違っているよ?
ん?ジブリールさんがリズに仕えるの?
もしかして、ずっとうちにいる感じかな?
本当にメイドさんになるの?
「エベレスト?誰のことじゃ?妾はエリザベートなのじゃ」
リズがジブリールさんを睨み付ける。
「我が主にもらった大切な名前なのじゃ」
そう言いながら人の姿に変化する。
今となってはこっちの方が見慣れた姿だけど、
さっきのドラゴンが本当の姿なんだよね。
作戦会議のためにいったんダンジョンを出る。
普段は「肉と安らぎ亭」なんだけど、姫様が一緒で大丈夫かな?
ちなみに、メイド候補の3人もずっと一緒に居る。
ずっと3人でヒソヒソとしゃべってる。
-姫様も働くのかな?-
-天使様きれいだったね-
-さすが薬神の使徒様だよ-
-勇者様が隣にいるんですけど!?-
-導きの巫女様はやっぱりすごいんだね!-
-福音の聖女様って聞いたよ?-
-白くて小さくてかわいいよね-
なんか聞いたことがない単語が混じってたけど、
ベリーさんが小さくガッツポーズをしてたから、犯人に違いない。
とりあえず、各自のメニューを注文して会議を始める。
姫様は王都のお城に戻らなくて大丈夫?
捜索隊とか出てるんじゃないの?
「そんなのはいつものことなの。別に問題ないの」
なるほど、姫様は気にしないと。
でも、おそらく他の人は違うんだよね?
きっと王都では大騒ぎになっていると思うんだ。
早めにどうにかしないと・・・
そう言うわけで、姫様には王都に戻ってもらいます。
「ズルいの!横暴なの!断固抗議するの!」
おそらくこのままだと、私たちは姫様を攫った犯人になってしまう。
そうなる前にこの事態を解決する必要がある。
「でも、お姫様を王都の王城?に戻すにしても馬車で7日かかるよ」
そう、シオンさんの言う事はもっともだ。
そして問題なのが、すでに7日以上も姫様は行方不明って事だと思う。
国家を揺るがすほどの大犯罪の予感しかしない。
加えて私の呪いがある。どう転んでも悪い方に転がる予感がする。
だから、とにかく全速力で全力で謝る。王様に。
とにかく、どうにかして死刑だけは回避しないと。
「大丈夫、城を抜けてきたのは今朝の話なの。まだバレてないと思うの」
今朝?そんなに短時間で王都からここまで?
「なんとなく、城を抜けるなら今日しかないと思ったの!」
なぜに?今日だったんだろう。
そして、なぜギルドの掲示板を見たんだろう。
さらには、どうしてうちのメイドに応募してきたんだろう・・・
答えはわかっています。そうです。私の呪いです。
最悪のタイミング?いいえ、私の呪いの前ではただの予定調和です。
「どうやってここまで来たのじゃ?もしやゲートかや?」
リズが何やら知っている模様。
「その通りなの!転移の魔法陣が今日なら発動するの!」
うわぁ、そしてたぶん一度発動すると魔力切れとかで動かないんだよね?
「その通りなの!」
なぜだろう。正解したのに全然うれしくないよ?
リズ、全速力で飛んで王都まで行ってきて。
そして姫様を王城に帰してきてください。
もうこれしか無い。馬車でなんてのんびり移動できない。
ただし、姫様を無事に届けてね!
姫様だった物を届けてもダメだからね!
「わかったのじゃ。夕飯までには行って帰ってくるのじゃ」
馬車の20倍くらいの速さだね。さすがはリズ。
「それ以上の速さだと人の身には耐えられないのじゃ・・・」
うん、もっと速くも飛べるんだね。でも安全第一でお願い。
「それでしたら、私が防御しながらならもっと速く飛べますね」
ジブリールさんだ。天使って言ってたし、そう言う事も出来るんだろう。
それよりも、天使の力でゲートを使えるように出来たりしない?
「空間に作用する事は出来ます」
じゃあ、その方が速いんじゃ無いの?
「おそらく人間では耐えられないでしょう。良くて消し炭かと」
ダメだ。力の規模が根本的に違うんだ。
じゃあ、ジブリールさんのプランで。
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