第70話:五つ星の薬
パン屋さんのおっちゃんに聞いてみた。
水飴を作るコツ知ってる?
「うちでは水飴は使わないからな、隣のお菓子屋なら使うんじゃないか?」
そう言えば、前に食べた甘いパンは蜂蜜だった。
いつもの堅パンと、今日はハムとチーズを挟んだパンを買う。
同じ質問を隣のお菓子屋さんのお姉さんにもする。
水飴ってどうやったらうまく作れるの?
「うちは水飴は仕入れてるのよ。ここでは作ってないの」
なるほど。
と言う事はその仕入れ先に聞きに行くのが良いかな?
水飴屋さんを教えてください。それと、このお菓子を銀貨1枚分ください。
「銀貨一枚だと、5個ね。水飴は、はす向かいのお店よ」
ありがとー!
受け取ったお菓子をポーチに入れる。(と見せかけてアイテムボックスにしまう)
はす向かいのお店・・・
何屋さん?料理の素材というか調味料?を売ってる店だ。
う、なんか怖い感じのおじさんだ。
すみません、水飴の作り方を教えて欲しいんだけど・・・
「水飴?」
ギロッと睨まれた。べ、別に怖くないよ?
「ご主人様、足が震えてますの・・・」
リズの方が怖かったもん。
「なんに使うんだ?」
お薬作るんだよ。
「薬?水飴で?」
ものすごく怪しまれてる。
普通薬を作るときに水飴は使わないからね・・・
こんな時はギルドカードだ。
「確かに錬金術師って書いてあるな。しかも薬専門と」
とりあえず、自分で作った水飴をおじさんに見せる。
品質が悪いのしか出来ないんだよ。
「材料は何を使ってる?」
お芋とラディッシュだよ。
「材料は問題ないって事は温度だな」
温度?
「温度管理が重要なんだ」
そうか、いつもぐつぐつ煮てたよ。
「それがダメだ、熱すぎるとうまく水飴にならない。ぬるくてもダメだ」
難しいんだね。
ちなみに指では触れないほどの温度だから触るなって言われた。
「芋から白い粉を作るまでは大丈夫だろう」
それは大丈夫だと思う。
「一番の問題はラディッシュの汁を入れた後だ」
グルグルかき混ぜるだけじゃないの?
「かき混ぜた後は寝かせるんだ」
寝るの?水飴が?
「そうだ、芋の粉とラディッシュの汁を合わせて眠らせると水飴になる」
どれくらい?
「そうだな、結構長いぞ。朝飯を食ってから晩飯を食うまで位だな」
そんなに?
「しかもその間は温度を保たなきゃならねえ」
たぶん、アイテムボックスじゃダメなんだよね。
思ったよりも大変だ。だから低品質だったんだ。
寝かせるって言うよりも卵を温める感じ?
「そう、そんな感じだ!うまく温めないと水飴が孵らねえ。そう思っとけ」
なるほど、わかりやすい。ありがと!
暖かさを保つのはベリーさんやディジィばあちゃんが知ってるかも?
それとも魔法でってのもありかな?難しそうだけど。
まずはばあちゃんかな?ここから近いし。
ディジィばあちゃん、暖かさを保つのってどうやるの?
「暖かさかい?何やるんだね?」
お芋の粉とラディッシュの汁を反応させるんだよ。
暖かいまま朝ご飯から晩ご飯までなんだよ。
「なるほどね。ずっと同じ温度を保持するのね」
ディジィばあちゃんが大きな鍋を持ってきた。
「これでお湯を沸かして、その中にリーゼちゃんのお鍋を入れるんだよ」
鍋の中に鍋を入れるの?
やってみる!
色々な人に教えてもらったコツを踏まえて水飴を作ってみた。
何度も失敗しては修正点を探して作り直した。
リリスにはその都度レシピをまとめてもらっている。
分量だったり時間だったり。
そして、いよいよ・・・
名前:水飴
品質:高品質
詳細:甘くて美味しい水飴。
できた!高品質!
リリス、今の配合とか時間とか全部メモしてあるよね?
「バッチリですの!ご主人様」
これで次も大体同じくらいの品質で作れるはず。
だが、目的はこれじゃない。あくまでも材料を作っただけ。本番はこれから!
でも、今日は疲れたから薬を作るのは明日かな?
おはようございます。
今朝は私が一番じゃありません。
私が目を覚ますと、準備をバッチリと終えたベリーさんが横に座っていました。
「おはようございます。リーゼロッテ様、本日は薬を作るのですよね?」
そうだけど、どうしたの?
「リーゼロッテ様が薬を作る作業を見学してもよろしいでしょうか?」
いいけど、ベリーさんがいまさら見るような内容じゃないよ?
基本的には初級ポーションなんだし。
「私の作る初級ポーションにはあれほどの効果はありません」
ベリーさんもっとすごい薬色々作れるよね?
「私とリーゼロッテ様の初級ポーションの違いを、他の薬にも応用できればと思いまして」
なるほど。最高品質を超えた上級ポーションとかできればすごいかもね。
そう言うわけで、ディジィばあちゃんの工房です。
私の工房はまだ完成してません。
今はリズが親方と炉の燃焼試験を繰り返してます。
じゃあ、お薬作るよ。
まずは材料。薬草の部分粉末、水飴、きれいな水。
「ちょっとこれはなんでしょうか?」
薬草だよ?葉っぱと茎と根っこに分解して粉末にしたの。
「薬草をそのまま使うんじゃないのですね、さすがリーゼロッテ様」
お鍋に葉っぱ1と茎1と根っこ3をきれいな水お玉3杯にといて・・・
かき混ぜながらゆっくりと温める。
「お鍋を使うのですね。勉強になります」
ビーカーが高くて買えなかったんだよ。
お鍋の中身がゆらっとしてきたら水飴をスプーン2杯入れる。
水飴が全部溶けたら、お鍋を竈からどかして布巾で濾してできあがり。
「今、ポワッと光りませんでした?」
さてと、鑑定するよ!
名前:リーゼロッテの薬
品質:★★★★★
説明:HPが320回復。毒回復。麻痺回復。ほんのり甘くてすっきり爽やか。
やった!星5個!
「おめでとうございます、リーゼロッテ様!」
ベリーさんが目をキラキラさせながら見つめてる。
「なんか、ばあちゃんが教えたのとはだいぶ違う作り方だね?」
うん、色々と工夫したんだよ。なんせ、これしか作れないからね。
「リーゼロッテ様、最後に布巾で濾すときにポワッと光ったのは?」
わかんないんだよ。勝手になるんだ。
でも、とりあえず目標達成なんだよ!
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