第68話:ドワーフの火酒
親方の案内で、建築資材を売ってる店に行く。
街の中にある物全部が、コモンズの街や王都とは違った風に見える。
ドワーフが多いからそう感じるだけかも知れないけど。
「よお、ガンゾしばらくぶりだな」
親方の名前はガンゾだ。普段は親方としか呼ばれないけど。
たぶん、この街には親方がいっぱいいるんだと思う。
「耐火用高圧縮レンガをくれ」
お店の中には色々なレンガや石材、木材も売ってる。
「どの程度のものが必要だ?」
ミスリルの加工に使う炉を作るんだよ。
するとお店の人が疑惑の目で見つめる。
「ミスリル?それなら普通の耐火レンガでも大丈夫だぞ?」
そうなの?
「ミスリル以上の素材も使うんだ」
ああ、リズの鱗だね。
「オリハルコンでも扱える炉を作ると約束した」
いよいよお店の人が不審者を見る目で見つめてくる。
「オリハルコン?そんなもんどこにもねえよ。あれはただの伝説だ」
親方が私に目で合図する。
これだよ。聖剣ピニャ・コラーダ。
「うおおおおおおお!!!!マジか!?」
お店の中がざわめきだした。
「まてまて、数百年前に失われた伝説の聖剣だぜ?」
うん、そうだね。300年くらいリズに刺さってたよ。
本物だと思うんだけどな。鑑定結果にも出てるし。
「そう言うわけで、最高級の耐火レンガが必要だ」
名前:耐火用高圧縮レンガ
品質:高品質
詳細:火龍の炎にも耐えるレンガ。
白いレンガだ。普通のレンガはもっとざらざらしてると思うんだけど、
これは割とすべすべしている。
「ちょっと火を当ててみてくれんか?」
リズがレンガを受け取り、地面に置く。
地面に置いたレンガに手をかざすと黒い炎がレンガを包んだ。
ほんの少し炎を当てただけで、
白いレンガだった物がぐちゃっとしたガラスみたいになった。
親方が店員さんをジロッと睨む。
「なんじゃ?このレンガは?妾の手加減した炎にも耐えられないのじゃ」
やっぱりリズの炎じゃダメなんじゃないの?
手加減しても強すぎるんだよ。
「それよりも今の炎はなんだ?」
リズが黙ってギルドカードを見せる。
「コモンズの片腕の黒い古龍・・・」
店員さんがガタガタブルブル震えている。
「だいたい、さっきもここまで飛んできたのじゃ。見ておらんのかや?」
騎士団に囲まれたもんね。
「自警団達が騒いでた黒龍ってあんたの事か・・・」
ギルドカードとリズの顔を何回も見ている。
「そう言うわけじゃ。もうちっとましなレンガはないかや?」
店員さんがふるふると首を振る。
「さすがに黒炎に耐えられるレンガはないぜ・・・」
そうすると、別の火種も考えないとダメなのかな?
「仕方ないのじゃ・・・」
リズが店員さんに指示を出して色々と用意させる。
地面にさっきのレンガを並べてリズが自分の血を振りかける。
その上に私の薬もまいて黒い炎でさっとあぶる。
レンガが真っ赤になって、その後黒くなって固まった。
それを何回か繰り返して大量の黒いレンガを作った。
「妾の血を馴染ませたレンガじゃ。これで大丈夫じゃろ」
名前:黒龍のレンガ
品質:最高品質
詳細:黒龍の加護を受けたレンガ。
なんかすごいね。レンガと言うより、黒いガラスの板みたい。
「さすがに血を使いすぎたのじゃ。今夜はこの街に泊まるしか無いのじゃ・・・」
親方、数は大丈夫?炉作れる?
「問題ない、これならオリハルコンだろうが神鉄・玉鋼だろうが使える炉になるぜ」
神鉄ってこれの事?
神刀コシヒカリ・ウオヌマ。
「なんでそんなものまで持ってるんだ!?」
親方もびっくりしてる。そう言えばこれはまだ誰にも見せてなかったっけ?
「さて、飯と酒がうまい店に案内頼むのじゃ。酒は芋の酒じゃ」
まあ、ドワーフの料理もどんな物か気になるし。
「火酒と串焼き亭」なんて言うか、ニニアさんが好きそうな名前の店だ。
今度みんなでゆっくりと来たいね。
「店主よ、芋で出来た酒があるというのは本当かや?」
お客もみんなドワーフだ。
エールじゃないお酒を小さい取っ手の付いた樽で飲んでいる。
これがお芋のお酒なのかな?
「火酒といって、酒精の強い酒だ。芋だけじゃなく、麦やトウモロコシもあるぞ」
トウモロコシって、黄色いスープのあれだよね?
甘いお酒なのかな?お芋のお酒も甘そうだけど・・・
「では、芋と麦とトウモロコシを1杯ずつなのじゃ!」
あー!そんなに飲んで大丈夫なの?酒精が強いって言ってたのに!
「それとそれらの酒に合う串焼きを適当に頼むのじゃ!」
「ふむ、ほんのりと芋の香りがするのじゃ」
芋のお酒の匂いを嗅いで少し舐めている。
「確かにコイツは酒精が強いのじゃ。エールなんぞ水のようなのじゃ」
しかしなんか眉を寄せて首をかしげている。
「うーん、芋の味がしないのじゃ・・・いや、かすかに、かすかにはするんじゃが?」
思ってたのと違う感じなのかな?
「じゃが、これはこれでとてもいい酒なのじゃ!」
テーブルの上にはすごい量の肉がのっている。
鳥の丸焼きとかあるよ?
私は少しでお腹一杯になっちゃったけど、
とても美味しい串焼きだった。
「コイツは塩竃で焼いたのをさらに串焼きにしてるんだ」
塩竃?あの塩で固めるヤツ?前に王都で食べた事あるよ。
これはニニアさんに持って帰ってあげよう。
おはようございます。
リズも親方も寝込んでいます。火酒を飲み過ぎたんです。
2人とも動けそうもありません。どうしよう。帰れないよ。
だからお酒飲んじゃダメって言ったのに!
ん?お酒ってある意味毒みたいなもんだよね?
じゃあ、お薬で治るんじゃないかな?
とりあえず2人に無理矢理お薬を飲ませて、
その間に色々と買い物をする。
ニニアさんに塩竃の串焼きとか、
昨日リズが美味しいって言ってたお酒とか。
この街ってお菓子が売ってないんだよね。
もしかするとあるのかも知れないけど、探した感じ見つからなかった。
お肉とお酒とお芋と・・・
お酒と一緒にガッツリ食べる系の料理が多い。
リリスは喜びそうだね。
ベリーさんが居れば気になるような素材もあるんだろうけど、
私じゃ何がすごいのかもよくわからない。
さてと、2人は復活したかな?
「おお!我が主よ、完璧に治ったのじゃ!」
じゃあ、さっさと帰ろう。
「その前に蒸留装置を買うのじゃ!」
お酒を造る道具?
お酒って勝手に作って良いの?
「もちろん、ダメなんだぜ。諦めろよ」
仕方ないからお酒の樽を追加してあげた。
また今度みんなで来ようよ。
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