第60話:噂のククリさん

とりあえず泊るところを確保するために、

「肉と安らぎ亭」にやってきました。ここしか知らないしね。

マーシャさん、お部屋空いてる?

「あら、リーゼちゃん帰ってきたの?」

またこの宿屋に泊まりに来ました。

「あらあら、お友達が増えたのね・・・」

そうなんだよ、6人泊まれる部屋ってある?

「うちは4人部屋までしか無いのよ」

そうか、どうしよう。

「もっと大きな宿屋なら6人部屋や8人部屋もあるんだけどね」

みんな別々の部屋にする?

「リリスはご主人様と同じ部屋が良いですの!」

2人部屋を3つ?

リズとニニアさんが同じ部屋でシオンさんとベリーさんって感じかな?

「まあ、今日のところはそれでかまわんのじゃ」

2人部屋が銀貨5枚だから全部で銀貨15枚。

巾着袋から銀貨を取り出す。ふりをしてアイテムボックスから出す。


夕飯までには戻るからね。

マーシャさんにそう伝えてみんなで出かける。

行き先はもちろんドズン工房。

って、どこにあるの?

「ドズン工房は知らぬが、この剣を買った店の場所はわかるのじゃ」

そう言いながら、リズがニニアさんを先頭にする。

「さあ、ニニアよ我が主を案内するのじゃ」

リズが覚えてるんじゃなくて、ニニアさんの知ってる店なのね。

「って、もう覚えてないの?まあ良いけど・・・」


ニニアさんの案内で武器屋に到着。

看板には「グレッグ武器店」と書いてある。

すみません、この剣を作ったドズン工房ってどこですか?

「なんだ?修理か?」

まあ、そんな感じです。直すのは聖剣だけど。

「それならうちの裏が工房だよ」

店員さんにお礼を言って工房に移動する。


ここだ。「ドズン工房」って看板が出てる。

すみません、この剣を作った職人さんいますか?

ククリさんって人みたいなんですけど。

「またかよ?ククリに剣を頼みに来たのか?」

これを見て欲しいんだよ。

真っ二つのサラトガ・クーラーを取り出す。

「聖剣だな。見るのは初めてだが・・・」

これを折ったのがククリさんの作った剣なんだよ。

「どうしてこの剣がククリの作だと?」

アイテムボックスの中で鑑定できるんだよ。

その結果、ドズン工房のククリ作って表示されたんだ。

「俺がドズンだ。ククリは俺の娘なんだが、剣なんか作った事ないんだ」

おやぁ?

じゃあ、どういうこと?

この剣を作ったのは本当は誰なの?

まあ、そこを追求するつもりもないんだけどね。


この剣直せる?

出来れば元通りに。

この剣は盗まれて盗賊が持ってたんだよ。

その盗賊に襲われたときにリズがへし折っちゃったんだよ。

そしたら本物の聖剣だって言うから、出来れば直したいんだ。

元々はシオンさんが使うはずだった剣だし。


「シオンってその女だろ?勇者に任命されたって噂の」

ドズンさんは奥から一本の剣を持ってきてシオンさんに渡した。

「聖剣とほぼ同じ重さ、大きさの剣だ。ちょっと振ってみろ」

シオンさんが言われるまま振ってみる。

さすが勇者だけあって、なかなか様になってると思う。

「意外と重いね。ちょっと扱いづらいよ」

そうなの?

でも、聖剣装備のスキルで補正されるんじゃないの?

「多少はそれもあるだろう、だが、少しの違和感が命取りになる」

そういうこともあるんだ。

なんと言っても、勇者だもんね。

「しかし勇者ともなればもっと自分に合った武器を使うべきだ」

今度は少し小さめの剣を持ってきてシオンさんに渡す。

「おそらくこっちの方が使いやすいだろう」

シオンさんが振ってみると、明らかにさっきよりも動きが言い。

「うん、いいね。問題は強度かな?」

勇者だと、ゴブリンやオークだけじゃないよね。

もっと強い魔物とも戦うんだ。


「この真っ二つになった聖剣を二本の短剣に鍛え直せるかな?」

第2案の方をお願いするみたい。

使う本人が使いやすい方が良いと思う。

「鍛え直すって言ってもなぁ、コイツは鋼じゃないんだぜ?」

ミスリルで出来てるって言ってたね。

「そうなんだよ、ミスリルなんて手に入らないぜ?」

じゃあ、サラトガ・クーラーはもうダメなの?死んじゃった?

「鍛冶屋としてみた上で言うなら死んでるな」

最後に一応ククリさんの意見も聞いてみたいんだけど・・・


奥に引っ込んだドズンさんが連れてきた女性。

褐色の肌に赤黒い髪の毛。

「俺に似てかわいいだろ?」

ククリさんは確かに女の子だった。

けど、ドズンさんとは似ていない。

と言うか違う種族に見える。


若いけど、私よりは年上。

見た目的にはリリスと同じか少し上くらいかな?

種族が違えば実際の年齢はわからないけど。

ククリさんは鍛冶のお手伝いはしてるの?

「私は・・・」

もごもごと言いづらそうだ。

たぶん隠れてドズンさんのまねをしていたんだろう。

それをドズンさんには知られたくないんだと思う。

リズの持ってる剣は何かの手違いで販売されたのかも知れない。


じゃあ、この剣は死んでると思う?

「この剣は、ひどく傷ついていますが、まだ勇者様のお役に立ちたいと言っています」

やっぱりそうなんだね、そんな気がしたんだ。

だから直そう。この剣が望むその姿に。

ククリさん、直せそう?

「私1人では無理です」

必要な物があれば教えて。

頑張って手に入れるから。


「ミスリルは妖精銀とも言われます。妖精の血と回復薬が必要です」

なんだ、それならもうあるよ。

そう言ってニニアさんを見る。

「エルフの方ではダメです。もっと上位の妖精の血が必要になります」

ニニアさんがわざとらしくガッカリした顔をしてから、

私の顔を見る。

ん?上位の妖精?私だ!

それなら、私の血で大丈夫だね。お薬もあるし。


「回復薬と言っても初級ポーションでは・・・」

初級だけど星四つだよ?

「なんですか?この薬は!?」

これじゃダメ?

ダメだったらベリーさんかディジィばあちゃんに作って貰うけど。

「これで十分です。総合的な効果を考えれば上級に匹敵するじゃないですか!?」

初級ポーションを作るのは得意なんだ。

今はリーゼロッテの薬って言うみたいだけどね。


「ミスリルを鍛えるには高熱の火力も必要です」

ニニアさんの魔法で大丈夫かな?

「伝承では火龍の炎とありました」

リズでも大丈夫かな?

「火龍程度の温度まで下げれば良いのじゃろ?楽勝なのじゃ」

なんだ、全部そろってるじゃん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る