第19話:色々な水を求めて冒険する

シオンさんが居なくなったのは寂しいけど、

私のやることは変わらない。初級ポーションの作成だ。


初級ポーションの材料は薬草ときれいな水。

前回は薬草の工夫を試したけど、ポーションにならなかった。

だから今回は水の工夫を試してみよう。


まずはいつも使ってる水。

街の共同井戸の水。

アイテムボックスから水の入った樽を取り出す。

樽の水をコップに注いでアイテムボックスにしまう。

これで鑑定ができるんだよ。


名前:コップに入った水

品質:普通

説明:コップに入ったきれいな水。街の共同井戸で採取。


あれ?採取場所が追加されてる。

まあ、いいや。この水は品質が普通なんだよね。

コップの水を樽の中に戻して樽をアイテムボックスにしまう。


今度は魔法で水を作ってコップに注ぐ。

本当は水の精霊魔法で、しかも攻撃魔法なんだけど、

私が使ってもコップに水を注ぐ威力しかない。

普通の人が見たら生活魔法だと思うんじゃないかな?

同じようにアイテムボックスで鑑定なんだよ。


名前:コップに入った水

品質:高品質

説明:コップに入ったきれいな水。魔法により生成。


こっちは高品質だけど、一日に作れる量が少なすぎる。

樽を満たすには何日かかるかわからない。

10日かかっても半分にもならないんじゃないかな?

だから、自力で水を作るのはあきらめたわけだし。


それと、街の中に流れている川。

これは高品質な普通の水だった。ポーションの材料には使えない。

その川の上流にあたる近くの森に流れる川。

これは低品質のきれいな水だった。ギリギリ材料にはなるけど、

それだったら普通品質の井戸の水の方がいい。

もっと上流まで行けば高品質なのかもしれないけど、

私が歩いてたどり着ける自信がない。


他に水が取れるところといえば、

南の街道を少し行ったところの崖から染み出ている湧き水。

きれいだけど、掬って器に入れるのが大変。

なんせ壁からにじみ出てるだけだからね。

ドバーッとは言わないけど、せめてチョロチョロ位は出てないと掬えない。

布に染み込ませて絞ったら品質が下がりそうだし。

これは候補には入れられない。


ダンジョンの泉。まだ行ったことないけど、

ダンジョンでも泉が湧き出している所があるらしい。

そうだ、ダンジョンに行ってみよう。

でも、ダンジョンって危ないよね?

まずはグレイスさんに相談しよう!


「ダンジョンに入りたいですって?」

グレイスさんの目が怖い。

やっぱり1人でダンジョンに入るのはダメなのかな?

「ダンジョンで何をするの?」

あのね、ダンジョンの泉の水が欲しいの。ダメ?


「簀巻きがいれば無料で護衛をさせたんだけど、王都に行っちゃったからね・・・」

護衛かぁ。護衛を雇うお金はないんだよ。

「明日までに護衛を用意しておくから、今日は準備しといて」

グレイスさんがどこかのパーティーに荷物持ちとしてねじ込んでくれるみたい。

確かに、荷物持ちなら私でもできるんだよ。


準備って何を用意すればいいんだろう。

「ダンジョンも浅い階層なら明かりが必要ないから、お弁当とポーションかな?」

一般的にパーティーは4人が多いから、少し多めにお弁当を用意しておこう。

私と違ってみんないっぱい食べるよね?

ポーションもたくさん作ろう。なんせ初級ポーションだし。

1個や2個じゃ大して回復しないよね。


今日はいつも通りにポーションを作って、露店で食べ物を買っておこう。

パンとか、串焼きとか、スープとか。

マーシャさんに頼んで何人分かお願いもしておこう。

宿屋の食器を使うわけにはいかないから、食器も用意しないと。

まずはカインズさんのお店だ。


大きな鍋にスープを入れてもらって、それを取り分ける感じかな?

パンはそのままで大丈夫だし、他の料理はどうしよう。

串焼きってどうやって持ち運ぶの?

いつもその場で食べてるからわからない。

なんか箱的なものに入れればいいのかな?


パンは焼きたてのをいくつか買っておこう。

予算の関係で黒パンじゃないと買えないけど、

それは勘弁してもらおう。

自分用に堅パンも買っておこう。少し多めに。


マーシャさんにシチューを用意してもらったし、

これで準備は完璧かな?

そうだ、薬作ってない。

そうか、ギルドに納品するんじゃないから、

樽のままでいいのかな?

いやいや、すぐに使うためには小瓶に入れて、

みんなに渡しておいた方がいいかも?

やっぱり納品用と同じに作っておこう。


明日が待ちどおしいなぁ。

早く寝よう。おやすみ。


おはようございます!

「リーゼちゃん、おはよう。早いわね」

グレイスさんに挨拶する。

まだ護衛してくれるパーティーは来てないみたい。


「おう、おはよう!」

剣士っぽいお兄さんと魔法使いっぽいお姉さんだ。

魔法使いのお姉さんは見たことがある。

ギルドに登録するときにいたエルフのお姉さんだ。

「久しぶりね、ランクC魔導師のニニアよ」

ランクCってすごい強い人だ。

「俺は初めましてだな。ランクC剣士のアレンだ」

こっちの人もランクC。

ランクCって、この街ではトップランクなんだよ。

グレイスさんどんな手を使ったの?

そしてトップランクパーティーがダンジョンの浅い階層に用があるの?

何らかの力が働いた気がするんだよ・・・


「じゃあ、行きましょう」

ダンジョンは東門から行く。

と言うよりも、東門がダンジョンの入り口だ。

ダンジョンから魔物があふれたときに、

東門を閉じて街に魔物が入れないようにするらしい。

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