第17話:騙されて一文無し

いつも通りに1人で採取していると、

シオンさんって言うランクEのスカウトのお姉さんが手伝ってくれた。

最近パーティーが解散したらしくて1人なんだって。

人間では珍しい、水色の髪がきれいなお姉さん。

背も高くて(私基準)胸も大きい(私基準)美人さん。


私が採取している間、索敵のスキルで魔物の接近を教えてくれる。

いつもは物音におびえながら採取していたけど、

今日は集中して薬草の採取ができる。

1人じゃないっていいなぁ。安心感が違う。

いつもよりも少し奥まで採取に行くことができた。


「右は危ない、左の方で採取して」

魔物と出会わないように方向を指示してくれる。

戦えるのがシオンさん1人なので、魔物と戦闘はしない。

シオンさんでも1人で魔物の討伐は難しいらしい。

私は全く戦えないし、むしろ戦闘中は邪魔でしかないと思う。

だから、魔物と出会う前に進路を変更する。

出会ってしまったらどうにかして逃げるしかない。


護衛のお駄賃で半分くれって言ってたので、

ポーションを作った売り上げの半分を渡すことにする。

この日はいつもよりも多く採れたので銀貨12枚。

だから半分の銀貨6枚を渡した。

「まあ、この仕事内容でこの金額ならいっか」

シオンさんは不満そうだったけど、本当のことだから仕方がない。


次の日もその次の日も手伝ってくれた。

護衛の代金は初日と同じ銀貨6枚。

毎回計算するのは面倒だから同じ金額でいいと言っていた。


気付けば宿の代金がなくなった。

仕方ないので野宿することにする。

マーシャさんに言い訳をして部屋を引き払う。

お金がないのは内緒にしておく。

なんとなくかっこ悪い気がするし。

街の中を流れる川の橋の下で眠ることにする。

ディジィばあちゃんの工房に厄介になるのも悪い気がするし。


しばらくすると小瓶を買うお金も無くなった。

おかしいな。いっぱい作ったのに。なんでお金無いんだろう。

瓶が買えないとポーションが作れない。どうしよう。


ご飯も買えなくなっちゃったし。どうしよう。お腹減ったよ。

自分で作った初級ポーションを飲もう。これで回復するはず。

うん、少し大丈夫になった。


とりあえず薬草の採取に行かないと。

材料集めは基本だからね。

あれ?なんか今日は調子が悪いなぁ。

「あんた大丈夫?具合悪いなら今日は止めよう?護衛代はいいから帰ろう?」

シオンさんもそう言ってるし、今日は止めようかな?


◇ ◇ ◇ ◇


あの子はそろそろ潮時かしら?

最近見つけた、ちんまい錬金術師。

薬草を採取するのを見守るだけで銀貨6枚だったけど、

最近体調が悪そうだ。

今日も不調そうだったからやめたけど、

ちょくちょく休みが入ると安定した収入にならない。


今日のところは早めに酒場に繰り出してたっぷりと飲むとしよう。

なんせ、今までの20日間で銀貨120枚だしね。

いつもよりもいい酒を飲もう。


また獲物を探さないとなー。

楽な仕事だったのに。

入れてくれるパーティーがあればダンジョンに潜るのもいいし。

楽なのもいいけど、楽ばっかりだと体も鈍るしなー。


おっちゃん、ワインを瓶で!

「今日は気前いいな!」

なんかおすすめのつまみもお願い!

「あいよ!今日は鳥の塩焼きがおすすめだが、ワインならこっちだな!」

おっちゃんが差し出したのは、チーズとハムの盛り合わせ。

飲み慣れないワインをチビチビと舐めつつ、チーズを囓る。

うーん、よくわからないけどこれが高い酒なのかな?

なんか気持ちよくなってきたー!


おっちゃーん!串焼き追加ー!

いいぞー!グルグルしてきた。

豚の串焼きを囓りつつワインをがぶ飲みする。

豚肉の脂と塩気でワインが進む。

揚げ芋も注文したけど、ワインに合わない。

芋にはエールだよねー!

「おらよ!飲み過ぎんなよ?」

かーっ!やっぱ冷たいエールが芋には合うなー!

ソーセージも追加ねー!

エールって言えばソーセージも欠かせないよねー!

「そろそろ止めとけよ?」

パリッとした歯ごたえがサイコー!

ぷはぁ

ごきゅごきゅ


「おーい、飲み過ぎだぞ?」

誰かがなんか言ってる気がするけどよくわかんないー!

すごーい!気持ちいいー!

なんかもうダメー

「おいおい、潰れちまったぞ」

うにゃーん

「ダメだなこりゃ、部屋にぶちこんどくか。お代の銀貨32枚はつけといてやる」

むにゃむにゃ、おやすみー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る