第15話:初級ポーションはまずかった

初めて作ったポーションを自分で飲んでみる。

すごく苦くてまずい。まあ、草を煮出した汁だからね。


回復のためとは言え、これを飲むのは嫌なんだよ。

むしろ、ダメージを受けそうな味。


これを飲んで回復するのがHP10だけ。

私だったら瀕死の状態からでも全快だけど、

普通の冒険者だと1本や2本じゃたいして回復しないよね。

グレイスさんが瀕死の場合は10本以上飲まなきゃいけないわけだ。

これって需要あるのかなぁ?


試しに売っているポーションを買ってみた。

アイテムボックスに入れて確認すると、

私が作ったものと品質も変わらない。ふつうの初級ポーション。

やはりまずい。この味で問題ないらしい。


もっとおいしくしたい。回復しそうな気がするような味にしたい。

花の蜜とか混ぜても大丈夫かな?


買取価格は変わらないと思うし、材料費が増えるから赤字かな?

でも、材料を自分で採取すれば・・・


そもそも、初級ポーションとして通用するか?

失敗作として買い取ってくれないと困るし。


採取しているときに、甘そうな果物とか蜜とかを見つけたらついでに採っておこう。

鑑定はアイテムボックスに任せて、食べられるものだけ保存する感じで。

あくまでも甘そうな素材はついでで、本命は薬草。

近くの森じゃ、甘い素材は採れないかもしれないしね。


まずは生活費として必要な分のポーションを作って、それからアレンジの実験。

とにかく平穏な日常を確保しないと。


まあ、それとは別に甘い素材の研究も必要だよね。

甘い果物とか、お菓子とか。簡単に思いつくのはそれくらいだけど、

他にも色々あると思う。グレイスさんとか詳しそう。


それに、ポーションの作り方を工夫すれば、

味も少し変わるかもしれない。こっちも研究しよう。

多分、初級ポーションをそこまで研究した人はいないんじゃないかな?

中級ポーションとか作れるようになれば、初級ポーションは作るのやめると思う。

普通の錬金術師なら、作れるものを増やしていくと思うし。

初級ポーションしか作れないならそれを極めるのみなんだよ!


薬草の刻み方とか、煮出し方も研究の余地があると思う。

そもそもポーションに必要な成分が薬草のどの部分に多いのか?

葉っぱなのか、茎なのか、それとも根っこなのか?

まずは、それを調べてみようかな?


逆に、薬草のどの部分がまずいのかも調べよう。

まずい部分を使わないでポーションが出来れば、

甘くする必要がないかも知れないんだよ。


まずは薬草の採取。採取のコツに根っこから抜くとあったので、

根っこにも必要な成分が入っていると思う。

色々と試すために、いつもよりも少し多めに採取してこよう。

そのためにはお弁当が必要。いつもはお腹減ったら帰ってるからね。

マーシャさんに頼んで堅パンと塩スープを用意してもらう。

それを温かいままアイテムボックスに入れる。

お値段は銅貨10枚のお手軽なお弁当。


まずはいつも通りに薬草の採取を行う。

お日様が高くなってお腹がすいてきた。

いつもはこの状態で街に戻ってご飯を食べる。

でも、今日はお弁当がある。

堅パンを塩スープに浸して食べる。

シンプルだけど、意外とおいしい。私はこれで十分。

串焼きとかも好きだけど、お腹を満たすだけならこれで問題ないんだよ。


すでに普段の分量は採取しているので、ここからが実験用の材料だ。

これはそんなに多くは必要ないので、適度に採取したら帰ろう。

ポーションも作らないといけないから、採取だけに時間はかけられない。

これくらいでいいかな?街に帰ろう。


ギルドに納品する分を作成する。

焦らずにじっくりと作業する。焦って失敗すれば宿代やごはん代が減っちゃうからね。

慎重に作業を行い、いつも通りの分量を作成する。

小瓶に詰めてギルドに提出なんだよ。


グレイスさんに初級ポーションを渡して報酬をもらう。

もらった報酬をそのままマーシャさんに渡せば、とりあえずの生活が確保できる。


もう一度ディジィばあちゃんの工房に戻って実験を開始する。

まずは薬草の分解。

いつもは丸ごと磨り潰して使ってる。

それを葉っぱと茎と根っこに分解する。

そしてそれぞれを単独で磨り潰す。


まずはそのまま味見。

葉っぱ、普通の野菜っぽい味。まずくはない。

茎、少し歯ごたえがあるけど別にまずくはない。葉っぱと比べると苦い。

根っこ、すごく苦い、渋い、えぐい、まずい。根っこが原因だね。


葉っぱだけで作れば苦くないポーションが出来上がるのでは?

そう思ったから作ってみました。結果、失敗です。

ポーションにならなかった。グツグツ煮出してもポーションに変化しない。


茎はどうだろう?同じように煮出してみる。

こっちもやっぱりポーションに変化しない。


ってことは根っこがポーションの成分のもと?

根っこだけで作ればすごいポーションになるのでは?

期待してたんだよ?まずい成分がそのまま回復の成分かも?って思ってたし。

ところが、根っこだけで煮出しても、ポーションには変化しなかった。

どういうことなんだよ?


これはそのうちまたゆっくりと調べよう。

葉っぱだけでも茎だけでも、根っこだけでも薬草にはならないってことだ。

薬草じゃないからポーションの材料ではないと。

そういうことなんだろう。

初級ポーションの材料は「薬草」と「きれいな水」だから、

この枠組みから外れるとダメなんだろう。

考えるまでもなく、根っこだけでできるなら、

最初から「薬草の根」っていうレシピになるよね?

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