第12話:子供錬金術師

錬金術師の試験に合格したので、ギルドに報告しに行く。

ギルドで正式に錬金術師に認められないと、薬が作れないんだって。


ディジィさんにもらった合格通知をグランツさんに渡す。

ちなみにギルドマスターさんの名前ね。

職業の認定はグレイスさんじゃできないんだって。

いつも通りにグレイスさんに手紙を渡しに来たら、

ギルドマスターじゃないと対応できないって言われた。

ランクアップもギルドマスターしかできないらしい。

まあ、何でもかんでもグレイスさんが出来たらギルドマスターいらないもんね。

グレイスさんはすごく悲しそうな顔をしていたけど・・・


グランツさんが内容を確認し、ギルドカードを更新する。

職業が無職から錬金術師に変わった。


いきなり上級職だ。

なんでも、今までの最年少記録らしい。

ギルドに登録できる最低年齢なんだから当たり前だけどね。


これで無職を卒業だ。わーい。

スキルも充実してきた。

最初はアイテムボックスしかなかったけど、

今では「精霊魔法」と「鑑定」と「薬作成初級」が増えた。

これからもどんどん色々なことができるようになる予定。


錬金術師ってどんなものが作れるんだろう。

まずは薬かな。薬作成のスキルだしね!


そんな夢と希望にあふれていた時代がありました。

しかし、現実はとても厳しかった。

ギルドカードをよく確認してみる。

職業の欄には「錬金術師」と表示されている。

しかし、よく見るとその他の欄に注意書きで「ただし初級ポーションに限る」と書いてあった。

他のは作れないのかな?ちょっとがっかりなんだよ・・・


錬金術っていうスキルじゃないんだね。

みんな別々のスキルなのかな?

「〇〇作成初級」とか。そんな感じで。

色々なスキルを覚えないとダメなのかな?


まあ、スキルが増えたとはいえ、ステータスは相変わらずアレだから仕方がない。

レベルも全く上がる気配がないしね。


でも、そんなこと気にしてても始まらない。

がんばって初級ポーションを作り続ければ、

そのうち何か別なのも作れるようになるかもしれないんだよ。


まずはできることをがんばろう。

どうせ、他には何もできなかったんだし。

でも、これで錬金術師を名乗っていいものか?

他の錬金術師に申し訳ない気もするするんだよ・・・


それに、錬金術師って工房を構えて1人前な気がする。

ディジィさんみたいに自分の工房を持っているのが普通だと思うんだよ。

自分の勝手なイメージだけどね。


新規に錬金術師になるのって普通はどうするんだろう。

師匠に弟子入りとかするのかな?

私の場合、ディジィさんの弟子ってことでいいのだろうか?

そもそも、この街に他の錬金術師っているのかな?

私はディジィさんしか知らないけど、1人ってことはないよね?


そこら辺の疑問を、ギルドマスターをわきに押しのけたグレイスさんが説明してくれた。

「ふつうは錬金術師に弟子入りして何年か修行するの」

やっぱりそういう手順を踏むんだよね。

「この街には錬金術師はディジィさんしかいないから、ディジィさんに弟子入りするわけね」

1人しかいないんだ。

てっきり何人かいる中のギルドの就職部門責任者とかかと思ったよ。

ディジィさんの工房で就職試験を受けたからね。

まあ、実際一番上の位の錬金術師ではあるんだけど。

それを言ったら、私だってこの街で2番目の錬金術師になってしまう。

「だから、リーゼちゃんの場合はちょっと特殊ね」

私が変なのは十分理解してるから、今更ひとつふたつ増えてもどうと言うことはないんだよ。

「それと、普通は錬金術師になったときにはある程度のものが作れるのよ」

私は初級ポーションしか作れないよ?

まあ、修行してないしね。仕方ないといえば仕方ないんだよ。

そもそも、錬金術の勉強とかもしてないし、

錬金術について教えてもらったこともないからね。

「リーゼちゃんがレアスキルの鑑定を手に入れたから、もしかしてと思ったわけなのよ」

やっぱり。しかも鑑定ってレアスキルだったんだよ。


尤も鑑定スキルよりもアイテムボックスの鑑定の方が性能が上なんだけどね。

より細かく鑑定してくれるし。一回しまわないといけないのが不便だけどね。

場合によっては盗んだと思われちゃうし。

今のところ、鑑定スキルも自分で手に取る必要があるから、

他人のものを鑑定するのは止めておこう。

誤解を招きかねないからね。


他の錬金レシピを覚えれば、作れるようになるのかな?

今は初級ポーションしか教わってないからね。


そうだ、目標の一つに自分の工房を設定しよう。

多分相当な金額が必要だと思うけど、

いずれ自分の工房とかも欲しいよね。お店でも良いけど。

「工房?ディジィさんと同じ規模だとすると・・・金貨2,000枚位かしら?」

金貨?見たこともないよ?銀貨だと200,000枚?銅貨だと20,000,000枚?

一気に無理な気がしてきたんだよ。

それにあんなに広くなくて良いんだよね。

半分の広さだとしても金貨1,000枚くらい?

まずは金貨1枚を手に入れるのにどれくらいの日数が必要かってことだよね?

これは後回しかな?


当初の目的通りに王都への旅費を稼ごう!

ちなみに王都ってどうやって行くの?

「王都までなら乗合馬車で7日ね。料金は金貨2枚くらいかしら?」

さっきよりも現実的な金額だ。

これを目標にしよう!


いっぱいお仕事して、まずは金貨一枚を手に入れる!

偉大なる野望もまずは第一歩から!

そうと決まれば頑張って薬草の採取なんだよ!


◇ ◇ ◇ ◇


って行っちゃった・・・リーゼちゃん向きの依頼があったのに・・・


--緊急クエスト--

依頼内容:荷馬車護衛

ランク指定:無し

報酬金額:一日金貨1枚

詳細内容:王都までの荷馬車の護衛。収納魔法持ち優遇。


受付が今日の昼までだから、もう無理かしらね?

あの子採取に行っちゃうと昼過ぎまで帰ってこないし。

せっかくタダで王都まで行けてお金ももらえたのに。

これも幸運・不運関係の呪いのせいなのかしら?

本当、かわいそうな子・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る