第11話:薬作成初級を覚えた

薬草の採取でそれなりに収入が見込めそうだったので、

比較的安全な近所の森での薬草採取を継続することにした。


今の私にできるのはこれくらいしかない。

しばらく薬草の納入のクエストをこなしていると、

薬草からポーションが作れることを教えてもらった。


グレイスさんに錬金術師を紹介して貰う。

上級職だから適性検査は受けていなかった。


ギルドマスターさんに紹介状を書いてもらって、

ディジィさんの工房を訪ねる。

ディジィおばあさんは薬専門の錬金術師で、薬師ともいう。


だから、工房というよりも薬局だ。

お店の名前も「ディジィ薬剤店」という名前。

この前お世話になった治療院の隣の建物。


まあ、治療院でお薬を使うんだから、

隣にあった方が便利だよね?

他の街でもだいたいそうらしい。


治療院は場所がわかるから迷子にはならない。

隣の建物と聞いたけど、どっちの隣だろう?

あ、看板が出てる。右のお店だ。


ごめんください。ディジィさんいますか?

店の奥から出てきた人に手紙を渡す。


おそらくこの人がディジィさん。白髪のおばあさんだ。

おばあさんは手紙を読むと私の顔を覗き込んだ。


「あらあら、あんたが試験を受けるのかい?」

え?試験受けるの?

薬の作り方を教えてくれるんじゃないの?


「錬金術師以外は薬を作っちゃいけない決まりなんだよ」

そういうことか。偽の薬で具合が悪くなると大変だからね。

ってことは、受けるのは錬金術師の就職試験?

錬金術師って上級職だよ?下級職の試験全滅したんだよ?


「なーに、試験といっても簡単な間違い探しみたいなものよ」

そういいながら、ディジィさんはいくつかの道具を持ってくる。

これが錬金術で使う道具なのかな?


「まずは私がお手本を見せるわ」

薬草をキレイに洗って細かく磨り潰す。

石臼みたいなものを使って丁寧に細かく磨り潰していく。

しばらくすると薬草が細かいサラサラの粉になった。


透明な器に水と磨り潰した薬草の粉末を入れて下から火であぶる。

ガラスの棒を使って薬草の粉末がだまにならないように注意しながらかき混ぜる。

しばらくかき混ぜて一旦火を止める。


緑色の液体は全体が均一にはなっていない。

ところどころモヤっとしている。

「これはまだポーションじゃないの」

そういって小皿に少し取り分ける。


再び火であぶりながらかき混ぜる。

しばらくしてまた火を止め、小皿に取り分ける。

今度は液体が均一に同じ色になっている。

「これが初級ポーション」

わざと一回火を止めるのは時間で判断させないためだろう。


さらにもう一度火であぶりながらかき混ぜる。

そして、今までと同じように火を止めて小皿に取り分ける。

色は均一だけど、さっきよりも濃い色になっている。

なんて言うか、煮詰まった感じ?

「これはもうポーションじゃないの」


なるほど。この違いを見極めればいいのかな?

だとすると簡単だ。私でも合格できそうなんだよ。


「材料は水と薬草だけ、かき混ぜながら火であぶればいいの」

そう言って、ディジィさんが私にポーションの材料を渡す。

この材料でポーションを作ればいいんだね。


先ほどのディジィさんの作業をまねて、ポーションの作成を開始する。

薬草はあらかじめ粉末状態になっているのを使っていいみたい。

ポーションを作る手順をチェックするんじゃなくて、

あくまでもポーションに変化するタイミングを確認するテストなんだろう。

それが錬金術師に必要な適性なんだと思う。


透明な器、ビーカーっていうらしい。

これに水と磨り潰した薬草を入れて火であぶる。

火加減とか、かき混ぜ具合とかも全くわからないけど、

今回そこは重要じゃないらしい。


かき混ぜながら様子を観察する。

ポーションが出来上がったタイミングで火を止める。


「すごいね。一回で成功かい?バッチリだよ!」

まあ、簡単にできるよね。

かき混ぜながらたまに鑑定を使ってたからね。

鑑定結果が「薬草の煮汁」から「初級ポーション」に変わったもん。


どうやら、今ので「薬作成初級」のスキルを手に入れたらしい。

ちょっとズルした気分だけど、他に何もできないんだし、これくらい良いよね?

グレイスさんも私が鑑定のスキルを手に入れたから、錬金術師を勧めてくれたんだと思う。

なんせ結果が見えるんだから間違えようがないしね。

でもまあ、これで錬金術師になれるのかな?

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