第8話:鑑定を覚えた

結局、無職の私を仲間に入れてくれる人はいないわけで、

1人で採取をすることになったんだよ・・・


採取も危険な地域だったら1人じゃ無理だから、

街の門から歩いてすぐの近くの森だ。

採取出来るものもたかが知れているし、

それによって得られる収入も大したことはない。

そう、普通の冒険者には全く魅力がない場所なんだよ。


採取するに当たって重要なのは、

今自分が採取したものが、依頼のあったものと同じものか判定すること。


依頼品と違うものを提出しても意味が無い。

受付のグレイスさんに採取の目標物を教えてもらって、

クイズ形式で練習繰り返していた。


朝一の依頼の受付の時と、夕方の依頼の完了の時間以外はそれほど忙しくないらしい。

近くの森で採れるもののうち、ギルドで買い取り可能なものを教えてもらう。

魔物の部位は討伐をしないと採取できないので却下。

安全そうな薬草の採取を行うことにするんだよ。

薬草は常に不足がちなので、依頼と関係なく常時買い取ってくれる。


ちょっとだけ近くの森に行って練習してみる。

森に行くには丘への道がある南門じゃなくて、西門から出る。

西門を出ればすぐそばに森がある。


魔物や野獣に襲われたら、戦わないで全力で門まで逃げろと言われた。

門衛が助けてくれるはずだからと。

本当は冒険者が魔物を引き連れて逃げるのはご法度なんだけど、

私が近くの森で私が採取するときに限って特別に許可してくれたんだよ。

だから門のすぐ近くで採取することにした。


さっそく採取を始める。

薬草は葉っぱがギザギザの草。

採取のコツは根っこから抜くこと。

これだけは覚えた。

薬草だと思う草を根っこから抜いて、

アイテムボックスに突っ込んでみる。


名前:ポポロ草

品質:普通

説明:いわゆる雑草。特に使い道はない。


違った。でも、もしかしてアイテムボックスに入れれば鑑定ができるんだよ?

試しに色々突っ込んでみる。


ポポロ草(25)

薬草(13)

毒消し草(2)


おお、ハズレばかりかと思えばアタリがあったんだよ。

同じ種類のは一つにまとめられるみたい。

かっこの中が持ってる数になるのかな?


試しに薬草を一つ出してみると、薬草(12)になった。

もともと13個あった。左手に持ってるのが一つ。

アイテムボックスの中に12個、全部で13個。そういうことらしいんだよ?


ポポロ草も出してみる。

右手にポポロ草、左手に薬草。


両方を見比べてみる。どっちもギザギザの葉っぱだけど、

薬草の方は先っぽが少し丸い。ポポロ草はとんがってる。

これで見分けるのか。


狙うのは薬草。ポポロ草は買い取ってくれない。

毒消し草も買い取ってくれるけど、数が少なそう。


アイテムボックスに頼らずに自分の目で判断して薬草を採り続け、

100個を超えたあたりだと思う。

いつの間にか鑑定のスキルを覚えていた。


採った瞬間に薬草と判断できる。

鑑定スキルのレベルが低いからか、

地面に生えている状態では鑑定できないらしい。

手に取ることで自分の所有物と見なされるのかも?

自分の所有物でないと鑑定は出来ないっぽい。

なんでも鑑定できるのかな?

とりあえず名前も知らないキノコを手に取ってみる。


名前:赤色水玉茸


見たまんまな感じの名前。

品質も説明文も無い。

キノコをアイテムボックスに入れる。


名前:赤色水玉茸

品質:普通

説明:毒キノコ。毒薬の材料。


食べられないキノコだった。

毒薬の材料ってことは買い取り対象なのかな?

グレイスさんの説明にはなかった気がしたけど、

毒だからあえて説明しなかったのかもしれない。

ある程度まとまったら買い取ってくれるかな?

しばらくはアイテムボックスで眠らせておこう。


やっぱりアイテムボックスに入れると、

品質や説明が見られるんだよ。

アイテムボックスの方が性能がいいらしい。

でもまあ、物の名前がわかるだけでもすごく便利。

鑑定スキルのレベルを上げれば品質とかも見られるようになるのかな?


とりあえず、おなかがすいた。今日はもうやめよう。

ギルドに戻って、グレイスさんにアイテム買い取りをしてもらう。

薬草を120束、銅貨360枚。

普通はなかなかここまで採れないらしい。

半分近くポポロ草が混じっちゃうみたいなんだよ。

まあ、鑑定スキルのおかげで薬草を効率よく集められたんだけどね。


採取中に鑑定スキルを覚えたことを報告すると、

まるで自分のことのように喜んでくれた。

当たり前だけど、採取をするには最高のスキルの一つだ。

それに加えて、アイテムボックスも持っている。

無敵の採取人になれる予感なんだよ!

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