第2章 ⑥


 煙草といえば、夢の中に出てくるその人物も煙草を吸っていた。よく夢に出てくる屋上でフェンスにもたれ煙草を吸いながら外の景色を眺める様子を、夢の中で見ていた記憶がある。



 「……」



まあもちろんの事、その人物の顔も全体像も靄がかかっていて全く分からないのだが。

 屋上に足を一歩進めキョロキョロと周りを見渡すも屋上には誰も居なかった。



 (風の流れに乗って匂いが来た…?)



そう考えているとまたふわり、と煙草の匂いが漂ってきた。それも今度は割と近くの方で



「は…?なに、誰か居んの…」



 眉を潜め再び屋上を見渡そうとした時、端にある給水塔が目に入る。近くに寄り給水塔を見上げた。ーーもしかしてこの上に、誰か居る?とか…。


 俺はごくりと息をのんだ後、給水塔の上へと続く梯子に手をかけ登ることにした。足場を確認しつつどんどん上へと登って行く。ふと、下に目を向けると割と結構な高さであり恐怖を覚えるも、気にしないようにし登り進めた。



 「よっと……」



 あと一段で登り終わるなと思い給水塔の上を見るとそこには目を疑うような光景があった。

思わずえ、と小さな声が俺の口から漏れる。


 見た先にはこちらに背を向け給水塔の端に腰掛ける1人の人物がいた。それだけならまあいいのだが驚いたのはその外見で、その人物は現代にもかかわらず薄い桃色の着物を着ていて、左手には煙管?のような物を持っている。


呆気に取られていると俺に気付いたのかその人物が顔をチラッと向けた。



 「……」



俺は思わず目を見開く。茶色の髪に白い肌。整った鼻筋と唇に、その人物は赤紫色の瞳をしていた。顔もとても整っているが何よりもその瞳の色はとても綺麗で。

 

 でも何故だか俺はこの人物に対し既視感を覚え、なんでだろうと思いながら俺はただその人物を見つめる事しかできないままでいた。

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