第2章 ②
「…最近元気ないね翔太」
「え、そう?」
昼休みの時間、いつものように亮達のクラスへ遊びに行って一緒に昼食を食べていると亮からそんな事を言われた。
「うーん…、元気なさそうというか、なんか眠そう?」
「あー…、眠いのは眠いな」
「やっぱりか」
最近眠れないのか?と弁当を食べながら直哉が聞いてくるので俺はう、と口をつぐむ。ーーあの例の屋上の夢を見て以来、前にも増して高い頻度であの人物が出てくる夢を見るようになり実際の所眠れていないのだ。
「いや、眠れてはいるんだろうけど、最近夢をよく見ているから」
「夢みるのか?夢見ると中々寝た気がしないよな」
直哉に気の毒そうに話され俺は困ったように笑った。食べ終えた弁当箱を片付けつつ、昼食を食べた直後からだからか眠気が増してきて大きな欠伸をしていると、今し方昼食を食べ終えた陽貴が俺に話しかけてきた。
「俺、夢自体あまり見ないなー。翔太くん最近どんな夢見てるの?」
「夢…?うーん」
どんな夢を見ているのか、と聞かれ俺は若干戸惑う。…この夢の内容を言うべきか?悩んだ末口を開いた。
「いや、俺の夢そんな大した夢じゃないしつまんないよ?また面白い夢でもみたら教えるわ」
「……そう?それならいいけど」
残念そうな様子で話す陽貴に俺は「ごめんな」と言葉を返しそのまま席を立つ。
「眠いし、保健室でしばらく寝てくるわ」
「あれ珍しい。5限はこのままサボり予定?」
「うーん…。分かんね、取り敢えず保留。じゃあ行ってくるわ」
「行ってらっしゃい」
手を振ってくる亮達に軽く手を振った後、俺は教室出る。陽貴がこちらをじっと見つめていた事など知らずに。
*************
階段をゆっくり登って行き、扉の前へと着く。ドアノブに手を掛けキイィ……と扉を開けると途端に春の柔らかく心地よい風が体全体を包んだ。
(初めてだ、屋上)
屋上に入りパタンと扉を閉め、澄み切った青空を眺める。ーー屋上には誰も居らずひっそりとしていたが俺は貸し切りだなと嬉しく思った。奥へと進み今度はフェンスから街並みを眺める。
屋上から眺めた街並みはこんな風景なのかとか夜景綺麗そうだなとか、しばらくの間興奮していたのだがひとつ欠伸をしごろりと床に寝っ転がった。
「……」
ーー保健室で寝ると言ったのは嘘で、夢の事もあり本当は屋上が気になり結局来てしまったのだがなんだか初めて屋上へ来た感じがしないな、と空を眺めながら俺は考える。
でも、そんな事実は全くなくここに来た事は現実では初めてで…それか、
「何か忘れている、の…か?」
忘れているとしたら、何を忘れているのか?
考えている内に心地よさにだんだん目が塞がっていく。
「んー……」
まあいいか、とその時の俺は楽観的に考えそのまま目を閉じた。
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