第2章 ①


 「ーー最初はそうだった」

 

 

 夢をみた。それも今まで見ていた夢の光景とは別の、初めて見た内容だった。雲ひとつない快晴の空の下、おそらくは屋上であろうその場所で俺は1人の人物と一緒に居た。



 (学校の屋上なんて行ったことがないのに、なんで)



学校の屋上には俺が1年の時、もう卒業したが3年の北条先輩たちが入り浸っていたからまず行ったことがなかった。だから屋上がどんな場所か分からないのだ。

 


 「高瀬と日常で関わっていく内にもうこのままでいいんじゃないかって思えてきたんだ…」



俺の隣でフェンスにもたれかかりながら座るその人物は、そう口にする。



 「頭のどこかでは記憶を消さないとって思いつつも、結局できなかった。記憶を消すと、高瀬がもう俺と仲良くしてくれなくなるんじゃないかと思って」



 その人物はそう言ったあと目線を下へ下げ顔を俯かせた。記憶を消す?消さない?どういうことか話がまるで分からなかった。でも、そんな思考とは裏腹に俺の口から流れるように言葉が出た。



  「……それはどうだろうな。記憶がなくなっても**と仲良くするからって言えたらいいけど、実際の所分からないわ。実際に記憶を消されたわけじゃないし」

 


その人物は顔を上げ俺をじっと見つめた。



  「でも、俺が最初に屋上で**に話しかけた時**の正体なんて全く知らなかったわけだからさ、それで接点できたしそれがきっかけで**と仲良くなったんじゃねえかな。正体知ってる知らない関係なく」



 お前目立つしな、と言うとその人物は「目立つってなんだよ」と微笑んだ。



  「さあなー、あー、あとさ」


 「?」


 「俺、**と仲良くしてるのは他の人と違うからとかそんなんじゃないからそりゃ、最初は好奇心もあって仲良くしてたのもあるけど今は違うんだ。それ抜きで**のことをもっと知りたいと思ってる」

 


その言葉に、その**と呼ばれた人物は目を細め優しく微笑んだ。



 「そうか……。それ聞いて安心した。ありがとな」



 

 これは、一体なんの記憶だ?

 俺は屋上でこの人物に話しかけてはないし、なにより俺はこの人物現実でを見た覚えがない。会っているのは何回か見る夢の中だけで、



 でも、何故だろう。

 この人物に対してなんだかとても懐かしくて、泣きたくなる気持ちになるんだ。


 


 


「……」



意識が浮上し、ゆっくり目を開ける。途端に夢で見た光景が急速に消えていく。そして頭の中に残った夢の内容はその人物と屋上で何か話をした。というものだった。


 でも、その中で[懐かしい]という思いが新たに残った。…なにが懐かしいんだか。



 「…なんなんだよ、一体」




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