第1章 ③


 「は…」


「は?」


 「はああっっくしょんっっ!!」


 

 俺に向かってにっこり微笑んでいた陽貴だったが急に顔をひくつかせた後に盛大にくしゃみをしたので、俺は肩をビクッとさせた。



 「あーもう…、ほんと花粉サイアク」



 マスク越しにくしゃみをした陽貴はズズッと鼻をすすりつつうんざりそうに言う。その様子を見ていた河村が苦笑し口を開いた。



 「まだマスクしばらく外せねえな、陽貴」


 「あー、まあ4月いっぱいはしとかなきゃなあ。外したらヤバいわ。…翔太くんと樹くんは花粉症じゃないのな」


 「まあ、確かにこの時期そんな症状はないな…」



河村になあ?と言われ俺は頷く。その様子を見た陽貴が羨ましい!と呟いた。



 「この高校ってマスクしてる人あんま見かけないけど、花粉症の人少ないのかねえ。あ、でも俺のクラスの担任の宮本先生もマスクしてたから宮本先生も花粉症かな?」


「そういえばずっとマスクしてるよな先生。ていうかさ…先生最近元気なくね?」


 

 河村が不思議そうに俺と陽貴に話しかけてくる。陽貴はえ?と驚いたように口を開いた。



 「え?そう?いつもあんな感じなんじゃないの」


 「そうだけど…、なんか上の空の時があるというか何というか。まあ俺と翔太はクラス違うから気のせいかもだけど」


 「……ふーん」


 「でも俺もそう思うかな」


 「翔太くんも?」


 「うん」



 どうしたんだろうね、と陽貴が首を傾げ俺もうーん、と腕を組み暫し考える。



 「花粉症かもだし、疲れてるのかもなー先生」


 「だな」

 

 「さ、もうそろっと行かねえと遅刻するし行こうぜ」


 「おう」



 

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