詩  「あの子の空」

@aono-haiji

第1話  詩  「あの子の空」



サキは 空が筒状にゆがんでいくのを見ていた

甘いか 冷たいか

これは あの子の夢に似ている


地上を引っかける留め金がはずれていたから

そう あの子の夢のように

空は自由になろうとしている


どうも………………ありがとう

みんな どこへ行こうとしてるの



サキは 空が筒状に離れていくのを見ていた

あの子の夢が叶う夢ならいいけど


海が 岬の先で 頬杖をついて波うっている

幸せばかりが 冷たく光りながら落ちてくる

傘が舞い散って 降り注ぐように



サキの心は逃げていく黒い影を追いかけていた

あの子をこんな風に追いつめた

あの黒い影を

あの子に……………………

楽しかったことが 一度でもあった?

右側と左側 

両側に優しさを感じたことあったの?


あたしが泣いたって しかたない

あの子は 笑ってよと いっている

だから 雨は降らないよ


虹が ふわり ふわり 地平線をわたっていく



さようなら



サキは あの子から 手紙を受けとった



「いまは  きっと  ある人の

          こころの中にいるよ」



サキは ゆっくりと 手紙をもやす

     

でも 


もやしても 燃やしても

風が灰を運んできて


群れ咲く野アザミの上に

また手紙を編んでしまう


しろ と くろの 灰が

音符のように風にゆれて 文字になったよ


「サキ あなたの

    ごめんなさい だけは聞こえないの」



指を 火の中に 伸ばし

          

からみつく その灰を 


  風に飛ばした


     いくども

      

        火の中に入れて

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