第3話 小説談義

 マスターから声を掛けられた笠原は、、

「こんにちは」

 と、声を掛けたその瞬間に、隣の石松さんも同じように、

「こんにちは:

 という声を掛けたのを聞いてびっくりした。

 思わず隣をあっけにとられるように見つめると、彼女はニッコリとして、

「私、ここの常連なんですよ」

 というではないか。

「何だ。それだったら言ってくれればいいのに」

 というと、彼女はニコニコしながら、したり顔だった。

「やられた」

 という気分でいっぱいだったのだ。

「でも、この店を知っているということは結構ツーですね」

 というと、

「ええ、私は誰かに教えられたわけではなく、偶然歩いていると、辿り着いたという感じなんですよ」

 という彼女に、

「そうなんだ。実は僕もそうなんだよ。一応僕は地元ではあるんだけど、大学に入学するまではこのあたりはまったく知らない領域だったので、探検を兼ねて歩いてみたんだけど、こんなしゃれたお店があるとは思わなかったので、発見した時は、ちょっと嬉しかったですね」

 と答えた。

 それを聞いたマスターがニッコリと笑って、

「いらっしゃい。まさか笠原君と、聡子ちゃんが知り合いだったなんて、ビックリしたのはこっちだよ」

 というではないか。

 それを聞いて初めて、彼女が聡子であるということを知った。

「僕はいつもカウンターなので、いつものくせでここに座っちゃったけど、よかったかな?」

 と笠原がいうと、

「ええ、いいですよ。私も実は、いつもここなんですよ」

 と言ってくれたことで、安心したのだった。

「ところで、聡子さんは、どこかサークル決めましたか?」

 と笠原は聞いた。

「笠原さんは決められましたか?」

 と言われたので、

「僕は文芸サークルに決めました。僕は法学部なんだけど、機関誌を発行していて、自分の作品を雑誌に載せてくれるということだったので。入部したんですよ。僕は自分で何かを作ることが好きなので、文章を書いてみたいと思っていると、機関誌もあるということだったので、飛びついたといところですね」

 というと、

「笠原さんは、高校までに文章を書いたりしたことはあったんですか?」

 と訊かれて。

「いいえ。中学時代に、俳句を少々齧ったことがあったくらいで、文章なんておこがましいと思っていたくらいです」

 というと、

「文章って、実際に書いてみると、結構ハードルが高いということを思い知らされるんですよ。そして、それが自分の中でトラウマになってしまうと、自分にはできないと考えてしまうんですよね。そうなると、ハードルがもっと高くなってしまって、最初にハードルを作ってしまうと、最初にそのハードルに挑んだ時は、自分で作った時よりもさらに大きくなってしまう。それが、小説を書きたいと思っている人が、最初に引っかかる関門なんですよね」

 と聡子は言った。

「なるほど、確かにそんな話を訊いたことがありました。最初に大きな難関があるんだって先輩が言ってました。実際にやってみないと分からないんですが、今はまだ、書き始める前の心構えの勉強からというところですね」

 と、笠原はいうのだった。

「私はまだ、どのサークルにするか決めていなかったんだけど、笠原さんが文芸サークルに所属しているのであれば、私も入ろうかしら?」

 というではないか。

「えっ、そうなの? それならぜひ一緒に活動しましょうよ。僕は大歓迎だな」

 というと、

「ええ、私も文学部に入ったのは、文筆系で何かをしたいと思っていたので、小説を書いたりしてみたいと思っていたんですよ」

 と聡子は言った。

「今までに何か書いてみようと思ったことはあったんですか?」

 と訊かれて、

「高校生の時に、新人賞に応募しようと思って書き始めたんだけど、結局最後まで書けずに挫折してしまったということくらいかしら? でも小説って結構難しいって分かったから、却って大学に入ったら、本格的に勉強してみたいって思ったのよ」

 というので、

「それでどうですか? 書けそうな気がしています?」

 と聞かれた聡子は、

「今は一年生なので、まだ専門的な授業はないから、何とも言えないんですね。でも、あくまでも、書くのは自分だし、小説のアイデアを捻り出すのは自分なので、たぶん、大学の授業で書けるようになれるかどうかは、結局自分次第だということなのかも知れないわね」

 というのだった。

「確かにそうかも知れない。表面上のことばかりを勉強しても、いわゆる頭でっかちになってしまって、どこまで勉強できているのかというのも、分からないかもしれないという不安もあるんですよ」

「だったら、サークルで実践を積んでみるというのも面白いかも知れないですよ。サークルには先生がいるわけではないので、皆独学なんですね。そして、時々、ディスカッションの時間があるんです。意見交換会のような感じですかね? まったく違うジャンルを書いている人の話を訊くというのも面白いですよ」

 と笠原がいうと、

「それ、面白そうですね。その時にディスカッションを始める前に、誰か、そう持ち回りでもいいので、一人が演台に立って発表する時間があって、それから皆それぞれディスカッションということにすれば、最初の発表に対しての話も入れることができて、いろいろな意味で効果があるような気がします」

 と聡子が新たな案を出してきた。

「そうですね、言われてみれば、それも面白いですね。今度部長に話してみてくださいよ」

 というと、

「ええ、入部してから一度ディスカッションに参加した後に話をしてみましょうね」

 と聡子は言ったが、確かに入部してからいきなり助言というのは、

「何様か?」

 と思われるという懸念を抱くのも無理もないことのように思えたのだ。

「ところで、聡子さんは、どちらの出身なんですか?」

 と聞いてみた。

「私は金沢なんですよ。どうして私は地元の人間じゃないって分かったんですか?」

 と聡子は聞いてきた。

「訛りがあるような気がして、その訛りが何か懐かしさのあるものだったので、どうしてかな? と思ったんですよ」

 というと、

「どこから来る懐かしさなのか分かりました?」

 と聡子が訊くので、

「ええ、分かりました。僕の祖父母が金沢にいるんですよ。それでよくこっちに遊びに来ることがあるので、それで懐かしさがあったんですね。祖父母の訛りというと、どうしても、昔の発音や訛りだと思うので、そこに懐かしさがあるんです」

 と言ったが、

「それって面白い発想ですよね。皆が皆思いつくものではないと思いますよ」

 と、聡子は言ったが、それを聞いて、

――彼女は、本当は誰もそんな発想思いつかないだろうと言いたかったのかも知れないなと言いたかったのかも知れないな――

 と笠原は考えたが、さすがに面と向かって言えるわけもなく、

「うん、そうだね」

 と答えるにとどまった。

 すると、急に聡子が目を輝かせて、

「そうだ。今のような発想って、小説のネタになったりしません? 大筋としてでなくても、話の中のアクセントとして使えるかも知れませんよ。登場人物の中に遠隔地にいる祖父母を気にしている人が、だんだんとその地方の言葉になっていくなんて発想があってもいいんじゃないかしら?」

 という。

「それは面白いかも知れないですね。そういうのを、ネタ帳のようなノートに箇条書きのようにして書いていけば、小説を書く時、そこからいろいろ繋合わせて見た時に、一つの筋が出来上がってくるのかも知れないですしね」

 と、笠原は言った。

「小説ってプロットを書くところから始まるじゃないですか? もちろん、中にはプロットの前にさらに準備する人もいれば、プロットを書かずに、書きながらアイデアを膨らませていく人もいる。でも、最終的には、プロットのようなものが並行してできあがっていくと思うんですよね。笠原さんは、どんな感じの書き方をするんですか?」

 と聡子に聞かれて、

「僕も、以前、このサークルに入部する前に、小説を書こうと思ったことがあったんですが、数行書いてそこから進まないんです。進めようとすると、終わってしまうような気がしてですね。数行で終わりなんて、まるでポエムじゃないですか。僕はポエムを否定はしないんだけど、書きたいのは小説だと思っているのに、数行で終わってしまうなんて、それだったら、完成させない方がいいと思ったんです。小説ではない小説なんですからね」

 と笠原は言った。

「小説ではない小説という言い方面白いですよね。確かに私も昔小説を書きたいと思って書いてみると、まったく言葉が出てこなくて、数行で結末だったんですよ。小説を書こうとしているという自分の姿勢は間違っていないはずなのに、書けなかったと思うと、小説を書くことは難しいんだと思い込んでしまって、皆が挫折しているのに、自分なんかが書けるわけはないと思うようになると、先へ進むことができなくなってしまったんですよね」

 と聡子は言った。

「これはきっと、当たり前のことを当たり前にできない自分のせいなんだって、僕は思ってしまったんだけど、本当にそうなのかということが自分でも分からなくなってしまったんだと思います。だって小説なんて、確かに最終的には人に読んでもらうためのものなので体裁が必要だけど、基本的には自己満足でもいいと思っているんですよ。そもそも、最初にプロのような作品が書けるわけでもないですからね。でも、一つ一つの作品を丁寧に書いて行こうという思いがあるので、結局、妥協に思えてしまう。妥協を許さないということまでは思ってもいないくせに、書いていて、どこか情けない思いがしてくる。そこが小説を書けるかどうかの分かれ道の気がするんです」

 と聡子がいった。

「じゃあ、そんな情けなさを感じないようになれば、小説を書けるようになるんじゃないかと考えているんですか?」

 と笠原に聞かれて、

「というよりも、体裁ばかりを気にしていると、身動きが取れないようになるのではないかという思うがあるからなんでしょうね」

 と、聡子は言った。

「小説を書く上で、書けないと思っている人へのアドバイスということで、これは本に載っていたことなんですが、とにかくどんな話であっても、最後まで書きあげることが大切と書かれていたんですが、自分が昔書こうと思っていた時は、そのレベルにすら達していなかったということなんでしょうね」

 と笠原がいう。

「そうですね。私もそれは自分に対して感じました。だから、書ける書けない以前に、終わらせるだけの材料すらなかった。もっと言えば、小説を書く姿勢すらできていなかったということではなかったんでしょうか?」

 と、聡子は言った。

「小説を書く時って、孤独じゃないですか。そもそも一人でコツコツとこなす趣味というのは孤独なものなんでしょうけど。でも、その孤独な時間、自分の世界に入り込んで、妄想のようなものを抱いていると、時間が経つのが早かったりしてですね。僕はそのあっという間に過ぎる時間こそに、小説を書くパワーが隠されているんじゃないかって思ったりするんですよ」

 と、笠原は言った。

「いいですね。私もその発想大好きなんですよ。小説に限らず、芸術はほとんどが一人の世界。その世界をまわりから見ていると、とても高貴に見えてくる。だから自分もやってみたいと思ったんですよ」

 と聡子がいうと、

「そういえば、僕が高校生の頃、友達が言っていたことなんですけど、彼が以前、どこかの湖畔の宿に家族で行った時、湖畔の脇にベンチああって、そこでキャンバスを立てて、本格的に絵を描いている人がいたそうなんです。格好も絵描きそのものだったので、さぞや有名な絵描きなのだろうと思って話しかけたそうなんですが、その人は自分は素人で、ただ恰好から入っているというらしいです。でも絵を見てみると相当上手に描けていて、プロと比較してもそん色がないと思ったらしいんですおね。そこで聞いた話としては、その人がいうのは、恰好がどうのこうのではなく、それをまわりがどう考えるかという発想とは別に、被写体が自分を見て、描かれていることに感情を持ってくれると、下手な自分でもうまく描けるような暗示をかけてくれるのではないかと考えたようなんです。本人は幼稚な考えだっていって笑っていたそうなんですが、それを聞いて、何と面白い発想なのかって思ったんですよね。それは、発想云々よりも、見る角度で、子供のような発想であっても、単純に子供で終わらないような感じですね。その友達はそれから、自分でも絵を描くようになったんですよね。今では僕が見ても、なかなかだと思えるくらいになっているんですよ」

 と、笠原はいうのだった。

「興味深いお話ですね。被写体が反応してくれるという発想はさすがにないですね。でも、小説だって、妄想することで話が繋がるんだから、絵を描く人が妄想したっていいですよね」

 と聡子がいうので、

「そうなんですよ。その絵を描いている友達がこれも面白いことを言っていたんですが、絵描きというのは、目の前にあることを、忠実に描いているわけではないというんです。時には何もないのに、あるかのようい描いてみたり、逆に大胆に省略して見たりするのが絵画だというんですね。それを聞いた時、芸術って、妄想や目の前に見えているものだけを表現するだけでは、ダメなんだと思うようになったんです。だから、素直に書こうと考えると、数行で終わってしまうんですよ。考えてみれば、本屋の文庫本コーナーに並んでいる小説を見ると、そのほとんどが、一つの場面の描写を描くだけで、数行を費やしているじゃないですか。いろいろなことを書いているんだけど、よく読んでみると、描写の描き方に共通点があるんですよ。それは一人一人違うもので、それを見た時、法則はあるけど、皆それぞれ違うもので、それを個性というのではないかということを感じたんですよ」

 というのだ。

「私もそれは感じたことがあります。基本的にあまり本は読んでこなかったんですが、本を読んでいても好き嫌いが出てきたんですよ。好きな作家さんの作品は一気に一晩で読んでしまうほど、嵌って読めるんですが、自分に合わないと思う作家の作品は、それこそ、最初の章を読んだところで挫折するような感じですね」

 と聡子がいうので、

「聡子さんは、どんなジャンルが好きなんですか?」

 と訊かれて。

「私はミステリーやSF系が結構好きかな? 奇妙なお話なんかも好きかも知れないわ」

 と聡子は言った。

「僕もミステリーは好きですね。実は昔のミステリー黎明期の探偵小説と言われていた時代が好きですね」

 と笠原がいうと、

「探偵小説?」

 と聡子が聞き返してきた。

「ええ、大正末期から昭和初期くらいの作品で、ちょうど今から六年くらい前に、よく映画化されたりドラマ化された作品があったでしょう。有名な探偵が出てくる」

 というと、

「ああ、そういえばありましたね。私はその頃興味もなかったので、そういう探偵さんの小説が流行っているというのは話しだけ聞いていましたけどね」

 と聡子は言った。

「僕は今とまったく違うその時代背景が好きなんです。探偵小説であり、オカルトの要素も十分含まれていて、おどろおどろしいその雰囲気にのまれてしまって、それこそ一日で読破してしまうほどでしたね」

 と笠原がいうと、

「そんなに面白いんだったら、私も読んでみようかしら?」

 と聡子は言った。

「いいと思いますよ。僕の場合は、自分の知らない時代背景から繰り広げられる物語に感動するタイプなので、トリックとかよりも、ストーリー重視の見方をしますね。中学生くらいの頃だったら、きっとトリックや、残虐性に目を奪われて、派手な部分しか見ていなかったかも知れませんが、今では小説を時代背景を元に見ているので、小説を読みながら、歴史の勉強もするようにしています」

 というと、

「昭和初期が、もう歴史の一ページなんですね」

 と、彼女は少し寂しそうに言った。

「それはそうでしょう、戦争が終わったのが今から四十年くらい前、戦前は過去の歴史と言ってもいいんじゃないですか?」

 という。

「そうですね。普通に考えれば、自分が生まれてからの出来事や、物心ついて記憶している時代を現代と思い、それ以前を過去だとして、歴史の意識でいる人がほとんどなのかも知れないですね。だから、ちょっと年齢がずれただけでも、話が通じなかったり、発想が違ったりするんですね。それもしょうがないことなのかも知れないですよね」

 と、聡子は言った。

「聡子さんは、小説を書くとすれば、どんなジャンルを書いてみたいんですか?」

 と訊かれて、

「そうですね。本当ならライトな感じの恋愛小説なんかいいなと思うんですよ。でも、恋愛小説って結構難しい気がするんです」

 というので、

「それはそうかも知れないですね。僕の印象とすれば、まず恋愛小説というのは、幅が広いと思うんですよ。青春小説や純愛小説のようなものもあれば、逆にドロドロとした、不倫や略奪愛、さらには、犯罪が絡んでくるような猟奇的なものまであるでしょうから、そういう意味で、他のジャンルと被っているところもあると思うんですよ」

 と笠原は答えた。

「でも、そういう意味で言えば、他のジャンルと被っていると思うのは結構あると思うんですよ。ジャンル分けはしてあるけど、この二つはどう違うの? なんていうものもあるんじゃないでしょうか?」

 と、聡子は言った。

「確かにそうだね。でもね、ホラーやオカルト、ミステリーとそれぞれに違いがあるんだよ。ホラーというのは、恐怖を意味するもので、さらにその中で宗教色が絡んできたり、科学では証明できないような話が出てくるものは、オカルトになりますね。そして恐怖に謎が絡んでくると、ミステリーの要素も出てきます。つまりは、それぞれに被るところがあり、細分化するジャンルとして、ミステリーホラーや、ホラーサスペンスであったり、精神異常者が絡むと、サイコホラーなどというものも出てきますよね。大分類があって、中分類があって、小分類があるというようなそんな話もあっていいんじゃないでしょうか?」

 と笠原は言った。

「なるほどそうですね。たまに、そこに宇宙であったり、時間などのものが入ってくると、SF敵要素の出てきますよね。SFとオカルトというのは、どこか似ているような気がするんですが、どうでしょう?」

 と、聡子はいうので、

「SFというのは、どちらかというと、未来予想のような気がするんですよ。ロボット社会であったり、タイムマシンなどが開発されたりですね。でも、その二つは今のところ、まったく開発される気配がないではないですか。何かの結界のようなものがあり、開発してはならない領域があるようで、そんなタブーは、、オカルトなどに出てくるものとは違って、分かりやすいものだと思うんですよ。オカルトのタブーというのは、宗教測豊かなので、宗教そのものを知らないとそのタブーも理解できないはずですよね。でも、SFにおけるタブーは、科学的に何がまずいのかということが立証されていて、ただ、その解決法が見つからないだけなんですお。まあ、解決法が見つからないのだから。必然的に、ゴールが見えないのは同じことなので、結果は変わらないと言えるんでしょうけどね」

 と、笠原は言った。

「おっしゃりたいことは分かる気がします。でも、オカルトであっても、小説の世界では、読んでいるうちにそのタブーが分かっていくんですよ。そうでなければ、最後まで謎のままになってしまって、解決されないミステリーで終わってしまうのと同じですよね。つまり、オカルトというのは、タブーを解明することが謎解きであるという、ミステリーのようなものだと言えるんじゃないでしょか?」

 と聡子は言った。

「ここ最近、奇妙な物語なるドラマがよく放送されているけど、あれはきっとオカルトなんだと僕は思うんですよ」

 と、笠原は言った。

「オカルトというのは、ミステリーと逆のところがあるのかも知れないですね。。ミステリーというのは、謎があって、その謎を解いていくものでしょう? でもオカルトというのは、科学では証明できないことが起こっていて、それを解決するというよりも、さらに深い謎を視聴者や読者に投げかけるようなストーリー展開がオカルトなんだって思います、物語の中で、ミステリーの起承転結の結の部分が、オカルトでは、承であったり、転であったりするんでしょうね。そして実にうまいオカルトだと、転の部分になるんだと私は思いますね」

 と聡子は言った。

 話が次第に白熱していったが、当然のことながら、そんなに簡単に結論が出るわけもない。そもそも結論が出そうにもないようなことを、あれこれと話していて、それも分かっていることなのだから、話をしているということに意義があると言えるのではないだろうか。

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