第5話 茜色と翠色

僕の人生で初めての0点のテストが返ってきた.わかりきった点数だったので,僕は採点ミスも探さずに,たたんでカバンの中に入れた.数学の先生が軽く問題について解説した後に,授業に入った.この先生はテスト返しの後も,授業をするタイプ人なのか.僕が数学の教科書を用意していると,転校生が困っているように見えた.そういえば彼女は転校してきたばかりで教科書がないと先生が言っていた.隣の人に見せて貰えばいいと思ったが,あいにく,今日は彼女の隣の席の人は休みのようだ.そうなると,と思った.今日の彼女の隣の人は僕ということになるのか.あまり,女子にしかも初対面の女の子に声をかけるのは得意ではないのだが,困ってる人をほっておけるほどの度胸もない.意を決して声をかける.「よかったら,教科書,見る?」彼女は花が咲いたように,顔をパアッと明るくする.首が取れるんじゃないかと思うほど,首を縦に振ってから,彼女は僕の机と自分の机をくっつけた.彼女は教科書をチラリと見てから,ノートに文字を書き始めた.

『ごめんねありがとう!!名前なんて言うの?』首を傾げた,アルパカのような絵を添えて,彼女は僕にノートを向けてきた.意外とグイグイ来るタイプのようだ.『田中 翠』簡潔に書きすぎたかもしれないなと思いなおして,彼女のように,猫の絵を描いてみた.嬉しそうに彼女が僕の書いた字を見ている『翠くん!!私たち,どっちも色の名前が入ってるね!!猫上手!!』喜んでいる,これまたアルパカ?の絵を添えた彼女の文字は嬉しそうだった.

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空の色は何色 せをは @dansera

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