第74話 キューティハニー
VTuberたちから「さやママ」とイラストレーターの水原紗夜は呼ばれるようになる。
イラストレーターの水原紗夜はスタジオまかろんで、個人VTuberのアバターの修正や調整などの注文を、格安で引き受けていた。
VTuberブームの前にYouTubeなどで動画を配信するYouTuberブームがあった。
その時は、スマートフォンで手軽に遊べるオンラインゲームのブームが類似したゲームが多くなって差がわかりにくいものが飽きられ始めた時期だった。
老舗AV映像制作会社が法改正によって、撮影が難航したあとの経営難の応急処置として、スマートフォン向け18禁オンラインゲームに、一時的に参入した。
PC用18禁ゲームを制作していたゲーム制作会社は、家庭用ゲーム機の普及にうまく参入できずに倒産した。その時に制作会社で若手ながらゲーム好きだからゲームを作るという情熱を持っていた人材たちは失業した。
失業後、家庭用ゲームの制作会社に転職した人もいたが、たとえば有名な人気ゲームの設定やアイテムのデザインなどを考えて提出したにも関わらず、ゲームのエンディングに表示されるスタッフ名の中に入れてもらえないなど、利用されたが冷遇されるという立場に耐えていた。
その後の家庭用ゲームのブームが停滞すると、リストラされた。
エニックスの千田幸信プロデューサーが、ドラコンクエストⅢのアイテム全ての設定を作って欲しいと依頼した。大阪美大を出たスタッフの玉谷純という若手の人が考えて、事前の約束ではクレジットもちゃんと出しますと話がついていたにも関わらず、玉谷純の名前が、ドラコンクエストⅢのスタッフとして残ることはなかった。
ゼネラル・プロダクツさんには別の件を回しますから、その話はなかったことにと説明された。
こうしたアイデアの買い叩きのような悪い慣例がゲーム業界にあったのも事実である。
スマートフォン向けの18禁オンラインゲームの制作のために
エロマンガ家のメイプルシロップこと緒川翠と岡田昴は「聖戦シャングリ・ラ」というゲームファンからは名作と言われ続ける18禁オンラインゲームを制作した。
スポンサーの老舗AV制作会社は、プロデューサーの岡田昴に、プレイヤーに課金させるように指示を出し続けたが、これを拒否し続けた。
たとえばイベント用の課金制キャラクターガチャはあったが、一定額まで引き当てられなかったプレイヤーには、新作キャラクターを運営から贈るか、以前のイベントの欲しいキャラクターを贈るなどの処置を行った。
スポンサーの老舗AV制作会社サンダースの社長が、スマートフォン向けオンラインゲームから撤退を公表したことで「聖戦シャングリ・ラ」は配信終了となった。
水原紗夜にも、スマートフォン向けのオンラインゲームのブームで、ゲーム用キャラクターデザインの依頼はあったが、紗夜はこのブームには乗らなかった。
アニメ制作会社からのキャラクターデザインの依頼と、出版社からのライトノベルの書籍の表紙や挿絵の仕事を、元ゲーム制作会社に勤務していたCGデザイナーの近藤喜久を助手にしてコツコツと続けていた。
YouTuberは、初めのうちは、視聴者数集めの人気取りのために変なパフォーマンスをしている芸人のように見られて、非難されたりもしていた。
やがて、YouTuberは稼げるという情報や、地道な努力をする姿もさらけ出して配信することで、エンターテイメントの提供者だけではなく、知識や経験、社会問題などに意見するコメンテーターとしても、人気を獲得していった。
インフルエンサーと呼ばれる人気のYouTuberたちと、それを真似するように自分も動画の視聴だけでなく、配信してみる人が増えていった。
YouTuberに対する世間からの評価が、180度変わった。
新しいもの好きなイラストレーターの水原紗夜も、YouTuberとして、手書きイラストの制作の工程を遊びで配信している。
岡田昴や近藤喜久と同じように元ゲーム制作会社で働いていた人材に、
ボードゲームやカードゲームが神谷透は好きだったからだ。
水原紗夜のキャラクターデザインをしたアニメ作品のカードゲームを、アニメ制作会社と共同制作して販売したこともある。
藤田佳乃は、そのトレーディングカードを、コレクション用ファイルに保存して、さらに別にプレイ用に所持している。
その会社を神谷透は大手の玩具メーカーへ売り払うと、それを元手にして芸能プロダクションのように、個人VTuberをアイドルとして売り出す会社を設立する。
神谷透と岡田昴が、エロマンガ家のメイプルシロップこと緒川翠にVTuber用のキャラクターデザインの仕事をしませんかと誘ってみたが、自分のエロマンガを電子書籍として流通させられないかと彼女は動いていたので忙しく、断られてしまった。
神谷透と岡田昴が水原紗夜の動画配信を見て、仲間の近藤喜久にイラストレーターの水原紗夜に会わせて欲しいと焼き鳥屋に呼び出して頭を下げた。
もわもわと煙が立ち込めるこの焼き鳥屋で、ゲーム制作会社にこの三人は安月給にぼやきながら、それぞれおもしろいことを一緒にやりたいと語りあっていた時期がある。
(ここに呼び出して頼むとか、神谷さんと岡田くん、それはずるいだろう)
「すいません、水原さん、俺の顔を立てるつもりで、俺の親友の二人に会って、話を聞いてあげてもらえませんか?」
水原紗夜は、神谷透のプロダクションに所属するVTuberたちから「さやママ」と呼ばれることになる。
スタジオまかろんと岡田昴が抱えていたゲーム制作会社フェアリードリームが協力して、CGライブを公演する会場を制作した。
さらに、近藤喜久にとって「天使」な後輩たちの
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