★第68話 エロティカ・セブン
二日酔いで部屋に帰ったあと、俺は久々にセックスしたからか、すごく気持ち良かったのだけ覚えていて、まいってしまった。
大学2年の時に同じサークルで知り合った子とつきあって、束縛と焼きもちがすごい子すぎて、ついていけなくて別れてからは、誰ともつき合わなかった。
金曜日、残業で栗原真央と二人っきりになってしまった。セックスしたからって、意識しすぎなのはわかってるけど、俺は時間がたつにつれて消えていくと思っていたそわそわしてしまう感覚が、昼間とはちがって他の社員がいない夜になると、逆に栗原真央との一夜の快感のイメージとしてふくらんでいく。
(もし、本当にあんな気持ち良かったとしたら、もう一度、してみたい……って、相手は生意気な栗原だぞ。しっかりしろ、俺!)
タクシーに一緒に乗って、くたびれて寝ている栗原真央の唇や痩せているわりにはある胸のふくらみをチラチラ見てしまっているうちに、童貞のガキみたいに勃ってしまっているのが情けない。
こんな下心があって自分の部屋に誘ったと栗原が知ったら、軽蔑される気がした。
(あー、くそっ、もう、どうにでもなれ!)
栗原真央の手は、俺の手よりもすごく
エレベーターを降りる時に、同じ6階の住人の大学生が入れ違いでエレベーターに乗ってきた。夜中に、近所のコンビニにでも行くところなのかもしれない。軽く
エレベーターの前に人がいるとわかると、栗原はパッと手を離して、とても恥ずかしそうにうつむいていた。
それを見て、俺は栗原のことをとても可愛いと思ってしまった。
「ふあっ……ん……ちょっと、がっつきすぎだよ……もぅ……んんっ!」
つい玄関で靴を脱ぐ前に、抱き寄せてキスしてしまった。
密着する体。華奢で頼りない寄りかかってくる体とふくよかな胸のふくらみ。柔らかい唇。
がっつきすぎと言われても、我慢できずにキスをすると、俺の心臓は破裂するんじゃないかってぐらいドキドキしてしまって、返事のかわりにもう一度キスをした。
栗原真央は、ありあわせの豚こま肉とキャベツをざっくりと炒めただけの
すでに食べながら三回以上、おいしいと言ってくれて、ぱくぱくと頬ばっているので、冷凍の餃子も焼こうかと言うと、そんなに入らないと言われてしまった。
これだけおいしそうに食べるってことは、かなり空腹だったんだろうと思った。
「なあ、お前ってなんかすごく痩せてるよな。あのさ、普段、何を食ってるんだ?」
「……お菓子とか、ケーキ。たまにラーメンか、スパゲッティーとか」
「えっ、米は?」
「コンビニのおにぎりは、たまに食べるけど」
炊飯器はあるが、米を炊くと食べ過ぎてしまいそうになるから、自粛しているらしい。
酔っぱらっていたからとか、あと、久しぶりのセックスだったから、すごく気持ち良いと思ったわけじゃなかった。
食べ終わって、使った食器を俺が洗って拭いていると、栗原真央が背後から抱きついてきた。
俺は拭いていた大皿をキッチンに落としそうになった。
「お、おいっ……あっ……」
俺の股間のものは、ズボンの上から軽く撫でられただけで、あっさりと反応してしまう。
「……倉橋、私、人からお前って呼ばれるのは、あまり好きじゃない」
「じゃあ、なんて呼ばれたいんだよ。あと、びっくりして皿を落としそうになったじゃんか」
「ねぇ、私の名字じゃなくて、名前、知ってる?」
「……まひろ」
話しながら、栗原真央の手はずっと俺の股間を
名前を呼ぶと、あっさりと抱きついて背中に頬までつけていたのと、撫で回すのを止めて、栗原真央はリビングに戻って行った。
食器を片づけて、リビングにいる栗原真央に「なあ、栗原、先にシャワー浴びるか?」と声をかけた。しかし、返事がない。
「まひろって呼ばれないと返事しない気か?」
「正解。でも会社じゃ、栗原でいいから。でも、まひろって会社で呼んだりしないでね」
栗原真央は、父親から名前じゃなく「お前」と呼ばれて説教されたり、時にはひどく叩かれたこともあったらしい。
だから大人になった今でも、誰かに「お前」と呼ばれると、叱られて、すごく嫌だった気分を思い出すらしい。
二人で順番にシャワーを浴びることにした。栗原……まひろは全裸で俺のベッドのふとんに寝そべり、恥ずかしいのか、かけふとんを頭まですっぽりかぶっていた。
俺がゆっくりとふとんの中にもぐり込むと、まひろが抱きついて俺の唇を奪い、舌を入れて濃厚なディープキスをしてくる。
ちゅぷ、ぬちゅ、れろっ……舌を絡ませ合うときの小さな湿った音や、息づかいが恥ずかしさより興奮を高めていく。
「ねぇ、濡れてるから、平気……いいよ……んっ……あっ……」
両手を広げられて、俺は淫らに股を開いたまひろの上に、肌を重ねていく。
(くっ、なんかすごく中のものまで、ぎゅっと抱きしめられて包まれてるみたいだ!)
「えっ、しながら、好きだって言うなんて……んっ、ずるいっ……んあっ、ひあっ……あぁっ、すごく激しいっ、んっ、ああっ、はうぅぅっ、んあっ、くぅぅっ……あっ、私、もぅ、んあああぁっ!」
俺が、少し休まないともう出ないと言って、俺と同じように汗だくになったみひろの隣に身を投げ出した。俺はこんなに興奮して、連続てしたことはなかった。
激しくやりまくったあとで、みひろと名前を呼んで、そっと髪を撫でていると、俺は急に恥ずかしくなった。
「……好きだってたくさん言ってくれたよね?」
「あ、うん……なんか、あとから確認されると、恥ずかしいぞ」
「……私で良ければ、その、つ、つきあってあげてもいいよ」
「つきあってあげてもなのか、さっきまでいっぱい
「あー、そういうこと、今、言っちゃうわけ?」
「んー、照れながら怒った顔も、かわいい」
「なっ、ちょっと……んんっ」
キスしていちゃいちゃしているうちに、また情けないことに、俺の股間のものが硬くなってきて、まひろにたっぷりかわいがられてしまった。
(うわっ、やられた。忙しくなりそうだ!)
二人の企画を合わせて、ブランド品を一般向けに月額制でレンタルする会社の社長にインタビューする記事と、「運気が上がる大人のカジュアルコーディネート」という特集記事にすると、水原先輩から企画会議で指示されて、俺とみひろは、思わず顔を見合せた。
「しょうがない、がんばろうね」
廊下で肩をぽんと笑顔のみひろから叩かれ、小声で囁かれた。
俺はみひろが無理をしすぎないか、ちょっと心配になる。
休みはちゃんとした俺の手料理を、一緒にしっかり食べてもらうことにしよう。
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