side fiction/ 森山猫劇場 第32話
光崎家の陰陽師、香織さんが持つ異界化の結界の力。
柴崎家のクダ使い、柴崎教授の持つ霊獣召喚と使役の力。
小野家の巫女、花純さんの持つ破魔の力。
「もふ」は、もともと現実の外界と異界を渡る霊獣クダキツネ。
そして、美優の心の失踪。
こうした今回のループでしか知ることのなかった情報や、起きた出来事を聡はどういうことなのか考えていた。
ソロモン王の指輪。
ヤハウェの命を受けた大天使ミカエルよりソロモン王に授けられた指輪。
ソロモンの指輪は真鍮と鉄でできており、様々な天使と悪魔を使役する権威を与える。
ソロモン王は、エルサレムの街や神殿を、天使と悪魔を使役して完成させた。
「霊獣クダキツネの存在は迷信だと思っていました。そして霊障を昔の人は狐憑きと呼んでいたと考えていました」
「
柴崎教授は、明治政府が成立すると神仏分離政策が行われたことで
「キリスト教でいう悪魔を召喚、使役する書物で、レメゲトンから派生して記された書物。しかし、いろいろな祟りの噂があると私は聞いています。もしも父が
「まあ、そうかもしれないな」
霊獣クダキツネに関しては、巫女の花純さんと意見が別れる柴崎教授も、
「どうして、花純さんは依頼を受けてくれたんですか?」
「光崎様への恩返しです」
花純さんは香織さんへの恩返しとしか、聡に説明しなかった。
陰陽師の
安倍晴明は「
花純さんは「もふ」の姿を見てすぐに、これは「葛の葉」だと思ったと聡に教えた。
「それに、私にはわからないことがいろいろあります。それを知るチャンスはめったにありません。だから、私は今回の依頼を受けたと言えば、納得していただけますか?」
聡が考えているのは、世界のループから脱却して無事に9月を迎えられるようにすることだけ。
ただし、行方不明になった美優にどうしても再会したいという思いが強くある。
(この巫女、たしか小野という名字だと言っていた……まさかな)
柴崎教授は、小野篁という平安時代の人物と、篁は昼間は朝廷で官吏を、夜間は冥府において閻魔大王のもとで裁判の補佐をしていたという伝説があったことを思いめぐらせていた。
(そうだとすれば、引きこもりになった令嬢を探し出すには、ちょうどいいかもしれない)
冥府と呼ばれもする祟られた者や呪いを成就した者がゆくところ。
もしも、この巫女が小野篁の伝説のように、冥府へ渡ることができるとすれば……。
陰陽師の香織は、異界で巫女の花純が、不動明王の
高野山から依頼を受けている
花純には、小野篁の力を継いだ子孫という噂もある。
神道系の巫女が修験道ともつながりがあるとはいえ、不動明王の仏敵を滅する力を身につけているのは、地獄の判官という小野篁の伝説を思わせるものがある。
柴崎教授と同じように、陰陽師の香織も、美優が冥府に堕ちたと考えていた。光崎家の一族に伝わる祟りは、実際に自分が身をもって体験している。その祟りで、冥府に堕ちたとするとあり得ない話ではない。
「ああっ、かわいい、私もお耳やしっぽがほしい」
「ひゃぅ!」
「もふ」は花純さんに撫でられ、聡のうしろに逃げてきた。
「あっ、あんまり急にさわられるとくすぐったいみたいで」
「あっ、ごめんね~、ほら、こわくないから、こっちにおいでよ」
花純さんは猫なで声で「もふ」に話しかけ、どことなくあどけない笑顔で手招きをしていた。
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